はじめに
L is Bは、建設現場で使うビジネスチャット「direct」を作っている会社です。チャットと言うとLINEやSlackを思い浮かべますが、この会社が相手にしているのは、オフィスの机ではなく工事現場です。現場監督が職人さんに指示を出す、写真を撮って共有する、作業のやり方を動画で残す。そういう「現場の連絡」を一つのアプリに乗せるサービスで、写真共有の「タグショット」や動画共有の「ナレッジ動画」も同じ束の中にあります。建設業界は人手不足と残業規制で、紙とホワイトボードのままでは回らなくなっている。そこに月額課金で入り込む商売です。売上の95.3%が毎月続くストック型、というのがこの会社の形です。私がこの短信を読んだのは今回が初めてです。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,371 | 1,028 | +33.4% |
| 営業利益 | 151 | 92 | +63.1% |
| 経常利益 | 133 | 82 | +62.3% |
| 純利益 | 112 | 60 | +84.7% |
(単位:百万円)
売上が3割増えて、利益はそれ以上の伸び。1ページ目だけ見れば文句のない中間決算です。ただ、純利益の85%増という数字には、あとで書く事情が乗っています。
最初の表では分からなかったこと
純利益85%増のうち、税金の戻りぶん
損益計算書の下のほうに、法人税等調整額 △21,456千円という行があります。繰延税金資産の計上で税負担が軽くなった、という会計上の処理です。税引前の利益で比べると82,364千円から134,961千円で6割増。純利益の85%増との差は、主にこの税金の欄で生まれています。事業の稼ぐ力を見るなら、営業利益の6割増のほうが実態に近い。85%という数字だけが独り歩きすると、少し景色がずれます。
契約負債が半年で2.4倍になっている
私が引っかかったのはここです。貸借対照表の契約負債が、前期末の48,318千円から118,201千円へ増えています。契約負債というのは、お金は先にもらったが、サービスの提供がまだ済んでいないぶん。つまり前受金です。これが半年で倍以上に積み上がった。
短信は理由を書いていませんが、会社は4月に「direct」の価格改定をしたと説明文で触れています。値上げ後の契約が前払いで入り始めているのだとすれば、これは将来の売上の在庫が膨らんでいる話で、悪い前受けではない。……いや、理由までは短信に無いから、これは私の読みだ。断っておきます。
営業キャッシュ・フローは141,145千円のプラスで、この契約負債の増加69,882千円が押し上げの大きな一部です。現金が先に入る商売の形が、数字にそのまま出ています。
伸びているのはストック売上だけ
セグメントの収益の分解を見ると、ストック売上は848,004千円から1,199,011千円へと4割増。一方でプロフェッショナルサービスその他は180,183千円から172,701千円へと、わずかに減っています。会社の看板であるストック型が伸びているのだから設計どおりとも言えますが、伸びの足は1本です。
借金を返しながらの成長
現金は半年で39,544千円減りましたが、中身を見ると、営業で141,145千円稼ぎ、財務で138,047千円使っている。財務の中身はほぼ借入金の返済です(長期108,012千円、短期30,000千円)。稼いだ現金で借金を返した結果の現金減なので、これは心配する減り方ではないと読みました。自己資本比率も53.9%から57.4%へ上がっています。
ついでに書くと、利益剰余金はまだ△672,877千円。過去の赤字がまだ埋まっていません。配当が0円なのは、この段階の会社としては当然の置き方だと思います。
のれんは「暫定」のまま
前期に子会社化したIU BIM STUDIOの取得原価の配分は、注記に「引き続き暫定的な会計処理」とあります。のれんは459,572千円。のれん償却額は前年同期の5,104千円から27,399千円へ増えていて、この重さを抱えながらの営業利益6割増です。ここは配分が確定するまで、数字が動く余地が残っています。
会社はどう説明しているか
会社は伸びの理由を、directのID数増加、連携サービスのクロスセル、4月の価格改定、そしてIU BIM STUDIOの通期寄与、と自分で並べています。ARRは2,127,808千円、契約社数は711社。建設業界の人手不足と残業規制で現場DXへの関心が高まっている、という背景説明も付いています。
おおむねそのまま受け取ってよい説明だと思います。ただ、価格改定と子会社の寄与がそれぞれ売上をいくら押し上げたのかは書かれていません。33.4%増のうち、自力の成長が何割なのかは、この短信からは切り分けられませんでした。
通期予想に対して、どこまで来ているか
会社は2月に出した通期予想を据え置きました。
| 項目 | 進捗率 |
|---|---|
| 売上高 | 48.6% |
| 営業利益 | 56.8% |
| 純利益 | 62.2% |
売上はちょうど半分。利益は半分を超えています。会社の置き方を逆算すると、残り6ヶ月の純利益は68百万円で、これは前年の下期より1割以上少ない水準です(この残り6ヶ月の数字は、通期予想から引き算したものです)。上期に税金の戻りが乗ったぶん、下期は控えめに見えるのか、それとも費用を厚く見ているのか。据え置きの理由は短信には書かれていません。
私はどう読んだか
私は良いほうに寄せて読んでいます。理由は、契約負債の積み上がり方です。利益の85%増は税効果込みの数字なので割り引きますが、現金が先に入り、その入り方が半年で倍以上になっているのは、月額課金の商売として教科書どおりの育ち方に見えます。借金を返しながら自己資本比率を上げているのも、地味ですが好みです。読み違えかもしれません。契約負債の増加が値上げ前の駆け込みだったら、話は少し変わります。
出典:決算短信(会社発表)

価格改定と子会社の寄与が、それぞれ売上をいくら押し上げたのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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