はじめに
エンバイオ・ホールディングスは、土壌汚染の対策を仕事にしている会社です。工場の跡地には、昔の操業で有害物質が土や地下水に残っていることがあります。そのままではマンションも店舗も建てられない。誰が、どこまで汚れているのかを調べ、浄化する。それがこの会社の柱です。
面白いのは、その専門知識の使い方です。汚染があるせいで買い手のつかない土地を、自分で買ってしまう。浄化して、価値を戻して、デベロッパーなどに売る。汚染はふつう土地の欠点ですが、この会社にとっては仕入れのチャンスになります。ほかに、工場や物流倉庫の屋根に太陽光発電を載せる事業と、電気を貯めておく蓄電所の開発もやっています。
土地を診る会社が、土地を売り買いし、土地の上で発電もしている。3本の柱が、四半期ごとに違う顔を見せる会社です。今回の決算は、その顔の入れ替わりがはっきり出ました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,841 | 2,438 | +16.5% |
| 営業利益 | 407 | 117 | +246.3% |
| 経常利益 | 439 | 31 | — |
| 純利益 | 298 | 9 | — |
(単位:百万円)
売上は2割近く増え、営業利益は前年の3倍を超えました。前年同期がかなり低かったとはいえ、営業利益率は4.8%から14.3%へ跳ねています。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない決算です。
最初の表では分からなかったこと
増益の主役は、柱ではないほうだった
セグメントの表は11ページ目にあります。柱である環境ソリューション事業(土壌汚染対策)の売上は1,122百万円で、前年同期比15.6%の減収でした。土壌汚染対策工事の着工が、顧客の事情や前工程の遅れで後ろ倒しになった案件が複数あった、と会社は書いています。
では何が利益を作ったのか。不動産再生事業です。売上974百万円は前年同期の2倍以上、セグメント利益は253百万円で、前年同期の26百万円から約10倍になりました。この253百万円が、今回の増益の主役です。
ここで引っかかったのは、この数字の性質です。物件の販売は、売れた四半期にまとめて計上されます。今回は大田区の戸建、墨田区の再生案件と、販売が重なった。裏返せば、販売が翌四半期にずれれば、この数字はそのままごっそり動きます。物件商売の四半期利益は、工事の利益と違って、平らにならせません。
経常439百万円の中身
8ページ目の損益計算書に、もう1つの話がありました。営業外収益が前年の33百万円から92百万円に増えています。中身は為替差益34百万円と、貸倒引当金戻入額36百万円。どちらも、来期も続くとは限らない性質の収入です。しかも前年同期には為替差損が63百万円あって、今回は消えている。経常利益の伸び幅のかなりの部分は、この営業外の出入りで説明がついてしまいます。
……いや、営業利益だけ見ても3倍超なのだから、営業外だけの話ではない。売上総利益は619百万円から948百万円へ増えています。環境ソリューションは減収でも増益で、会社が書くとおり原価低減が効いた形です。本業の改善は本物だと思います。ただ、経常439という見た目の派手さには、割り引きが要ります。
キャッシュ・フロー計算書が、無い
10ページ目まで行ったら、キャッシュ・フロー計算書は作成していない、と書いてありました。第1四半期は作らない会社は珍しくないので、これ自体は責める話ではありません。代わりに貸借対照表を見ると、現金及び預金は164百万円減、棚卸資産(この会社の場合、再販用の土地が入ります)は306百万円増、長期借入金は289百万円増。仕入れた物件を借入で抱え、売れたら利益になる。ビジネスモデルどおりの動きですが、現金の出入りの中身は今回は確かめられませんでした。
もう1つ、5人の数字の議論から漏れていたものを拾っておきます。契約負債が301百万円から488百万円に増えています。契約負債は、工事の前受金にあたるものです。着工が後ろ倒しになった工事が控えているという会社の説明と、向きが合っています。遅れた工事は消えたのではなく、後ろに積まれている。そう読める数字です。読み違いかもしれませんが、次の四半期で確かめられます。
会社はどう説明しているか
会社の説明は素直です。環境ソリューションは着工の後ろ倒しで減収、ただし原価低減で増益。不動産再生は販売案件が計画通り進捗。自然エネルギーは発電所の安定稼働と電力供給サービスの堅調。隠している感じはありません。
土壌汚染対策工事の引き合いについては、用地取得費や建築費の上昇の影響で弱含み、上位数社での競争が激しくなっている、とも書いています。柱の事業の需要環境を、会社自身が強気に書いていない。ここは私はそのまま受け取ります。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13,630 | 20.8% |
| 営業利益 | 1,220 | 33.4% |
| 純利益 | 690 | 43.2% |
(単位:百万円。第1四半期経過時点の目安は25%)
営業利益は3分の1、純利益は4割強まで来ています。それでも会社は、通期の営業利益24.7%減という期初の予想を据え置きました。この置き方だと、残り9ヶ月の営業利益は813百万円、前年の同じ9ヶ月から半分近く減る計算になります(この残り9ヶ月の数字は、通期予想から今回の実績を引いたものです)。
Q1がこれだけ良くて、なぜ強気にしないのか。会社は理由を書いていませんが、不動産再生の販売時期が読みにくいこと、柱の工事が後ろ倒しになっていることを考えれば、動かさない判断は不思議ではありません。
私はどう読んだか
私は、この好決算を「前倒しで出た利益」に寄せて読んでいます。理由は、増益の主役が販売時期でいくらでも動く不動産再生の253百万円で、経常には為替差益と引当金の戻入という一時的な70百万円が乗っているからです。会社自身が通期減益の予想を動かしていないことも、同じ向きを指しています。
ただし、環境ソリューションが減収でも増益だったこと、契約負債が積み上がっていることは、悪い話ではありません。上振れより先に下振れを見る私の癖が出ているだけかもしれません。
出典:決算短信(会社発表)
後ろ倒しになった工事の着工が、いつ、どの四半期に来るのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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