佐藤食品工業(2814)2027年3月期 第1四半期決算分析――原価が減った理由が気になる

佐藤食品工業(2814)2027年3月期 第1四半期決算分析――原価が減った理由が気になる 決算を読む

お茶の飲料と、即席の味の裏側にいる会社

佐藤食品工業は、お茶や昆布、椎茸といった天然の素材から、味と香りを取り出す会社です。取り出したものは、エキスや粉末にして売っています。自社の名前を付けた商品を、店に並べているわけではありません。売り先は、飲み物や食品を作るメーカーです。

いちばん大きいのは茶エキスで、緑茶や麦茶、紅茶の味の元になります。ほかにも、昆布や椎茸を粉にした調味料、野菜のエキス、清酒を粉にしたものまで作っています。短信の販売先の欄では、お茶の飲料で知られる伊藤園が一番上にありました。

スーパーの棚でこの社名を見かけることは、まずありません。それでも、ペットボトルのお茶や即席のスープの中身をたどっていくと、この会社に行き着くことがあります。

4月から6月で、上期の予想を越えた

8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。4月から6月の3か月分にあたります。

項目今回前年同期増減率
売上高17億9,700万円16億8,200万円+6.8%
営業利益3億6,300万円2億2,100万円+64.2%
経常利益5億900万円2億8,400万円+78.9%
純利益3億4,700万円2億8,300万円+22.3%

売上の伸びは1割に届かないのに、営業利益は6割以上増えています。純利益の伸びが2割にとどまるのは、前年に固定資産受贈益1億2,380万円という特別な利益があったからです。今年はこれがありません。

売上が増えたのに、原価が減っている

損益計算書まで下りて、売上高の下の行を並べました。

項目前年同期今回
売上高16億8,269万円17億9,787万円
売上原価12億2,578万円12億866万円
売上総利益4億5,690万円5億8,920万円
販売費及び一般管理費2億3,533万円2億2,543万円

売上が1億円あまり増えたのに、売上原価は減っています。……減るのか、ここで。原料の茶葉の価格が上がり続けていると、同じ短信の中で会社自身が書いている四半期です。

販管費も少し減ったので、粗利の増えた分がそのまま営業利益に乗りました。引っかかったのは原価のほうです。

作った量が、売った量を上回った

答えの候補は、短信の最後にある生産と販売の表にありました。

金額前年同期比
生産高19億8,546万円+12.5%
販売高17億9,787万円+6.8%

生産高は販売価格で計った金額です。生産の伸びは、販売の伸びのほぼ倍でした。

作って売れなかった分は在庫になります。貸借対照表では、製品が3月末の7億3,823万円から、6月末には8億6,510万円へ増えていました。仕掛品も5億777万円から5億6,776万円へ増えています。

一方で、減価償却費は前年の6,130万円に対して今回6,090万円と、ほとんど変わりません。同じ工場で多く作れば、製品1つに乗る工場の費用は薄くなります。その費用の一部は、売れ残った製品と一緒に在庫として残り、この3か月の原価には出てきません。

原価が減った理由の一部は、この作りだめにある、と私は読みました。

作りだめそのものは、会社が狙ってやったことです。業績予想の説明の欄に、包装資材の値上がりと供給不安を受けて、主要原料に関連する在庫を積み増したと書いてあります。ただ、原材料の行は4億2,085万円から4億2,658万円へと、ほとんど動いていません。積み増したのは原料よりも、できあがった製品のほうでした。

増えた売上の7割近くは、1社から

販売先の表も並べておきます。

販売先前年同期今回売上に占める割合
伊藤園2億2,093万円3億30万円13.1%から16.7%へ
凰商事1億9,920万円2億5,368万円11.8%から14.1%へ
三菱商事ライフサイエンス1億8,207万円1億6,564万円10.8%から9.2%へ

伊藤園向けの増え方は、3億30万円から2億2,093万円を引いて出します。増えた額は約7,937万円です。売上全体の増加は1億1,500万円なので、その7割近くがこの1社です。

品目で見ると、5つとも前年を上回っていました。ところが売り先で見ると、伸びはかなり偏っています。緑茶エキスと麦茶エキスが増えたという会社の説明とは、つじつまが合います。

経常利益を押し上げた、保険の解約

経常利益の伸びが営業利益より大きいのは、営業外収益が6,537万円から1億4,866万円へ増えたからです。中身は主に2つあります。1つは受取配当金で、5,879万円から7,690万円へ増えました。もう1つは前年には無かった保険解約返戻金で、今回は6,010万円ありました。保険の解約は、毎期起きることではありません。

貸借対照表を見ると、保険積立金が1億3,700万円減り、未収入金が2億300万円増えています。解約した保険のお金が、6月末ではまだ入金前だったのかもしれません。

いつもならここでキャッシュ・フロー計算書を開きます。ところがこの短信には、四半期のキャッシュ・フロー計算書は「作成しておりません」とあります。現金は1億400万円減っていますが、配当の支払いが1億800万円あったので、減り方としては不自然ではありません。

会社はどう説明しているか

営業利益が増えた理由について、会社の説明は「売上高の増加により」の一言です。

業績予想の欄はもう少し長く書いてあります。在庫を積み増して安定供給を保ったことと営業努力で、第1四半期の利益が第2四半期累計の予想をすでに上回った、という説明です。今後は茶葉と昆布の仕入価格、エネルギー費、為替で製造コストが上がり、利益率が下がる見込みだそうです。そのため、5月15日に出した予想を据え置いています。

原料の値段が上がり続けるという部分は、そのまま受け取ります。ただ、売上が1割足らず増えただけでは、原価が減ったことまでは説明できません。原価が減った理由は、決算短信には書かれていません。表紙には、補足説明資料も説明会も「無」とあります。

残り9か月の営業利益は1,000万円

項目通期予想第1四半期残り9か月
売上高67億3,200万円17億9,700万円49億3,500万円
営業利益3億7,300万円3億6,300万円1,000万円
経常利益5億4,500万円5億900万円3,600万円
純利益3億6,800万円3億4,700万円2,100万円

売上は4分の1を少し超えたところで、時期どおりの進み方です。営業利益は、3か月で通期予想のほぼ全部に届きました。

上期で見ると、この置き方の窮屈さがよく分かります。上期累計の営業利益予想は2億1,800万円です。ここから第1四半期の3億6,300万円を引くと、7月から9月は1億4,500万円の赤字という計算になります。会社が本当に赤字を見込んでいるのか、5月の数字に触らなかっただけなのかは、短信からは分かりません。

前年と並べると、差はもっと大きくなります。表紙にある通期予想の減少率は50.8%で、今年の予想は前年の0.492倍ということです。そこで3億7,300万円を0.492で割り戻すと、前年の通期営業利益は約7億5,800万円です。そこから前年の第1四半期2億2,100万円を引くと、前年の残り9か月はおよそ5億3,700万円でした。前年にそれだけ稼いだ9か月を、今年は1,000万円と見積もっていることになります。

私はどう読んだか

予想が5月のまま古くなっているのか。それとも、第1四半期の利益に作りだめの分が乗っているのか。この2つが考えられます。

私は後者の見方をしています。理由は、原価が減った四半期に、生産が販売の倍近い速さで伸びていたからです。積み上がった製品はいずれ売られ、そのとき原価として出てきます。在庫を減らすために生産を絞れば、今度は製品1つに乗る工場の費用が厚くなります。20%を超えた営業利益率を、この会社のいつもの姿だとは考えていません。

とはいえ、9か月で1,000万円はかなり厳しい見積もりに見えます。どこまで本気の数字なのかは分かりません。上がるかは知りません。心配性なので、次の決算でも製品在庫の行から開くつもりです。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806513147.pdf

売上原価が前年より減った理由と、7月から9月を会社が本当に赤字と見込んでいるのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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