日本毛織(3201)2026年11月期 第3四半期決算分析――売上の予想だけが腑に落ちない

日本毛織(3201)2026年11月期 第3四半期決算分析――売上の予想だけが腑に落ちない 決算を読む

制服の生地と、駅前の商業施設が同じ会社にある

日本毛織は、ウールの生地から始まった会社です。いまも中学や高校の制服、警察や消防の制服、会社の作業着に使う生地を織っています。自動車の内装に使う不織布や、エアバッグを縫う糸、ラケットや楽器に使うフェルトも作っています。

もう一つの柱は、自社の土地を使った商売です。ショッピングセンターを運営し、東京のオフィスビルや兵庫の賃貸住宅を貸しています。保育や介護、テニスやゴルフの施設もあります。制服を着る子どもと、ビルに入居する会社と、施設に通う高齢者が、同じ決算書に並んでいます。

売上は横ばい、利益はそれより伸びた

10月9日に出た、2026年11月期の第3四半期決算です。12月から8月までの9か月分です。

今回前年同期増減率
売上高891億8,600万円870億9,200万円+2.4%
営業利益86億7,300万円76億7,000万円+13.1%
経常利益97億3,000万円86億1,400万円+13.0%
純利益70億4,400万円55億5,200万円+26.9%

売上はほとんど横ばいなのに、営業利益は1割強増えています。純利益の伸びだけがほかより一段大きく、ここが最初に引っかかりました。

増益を支えたのは、産業機材と賃貸ビル

事業ごとの数字は、短信のセグメント情報に載っています。

事業売上高前年同期比営業利益前年同期比
衣料繊維204億5,800万円+2.1%4億6,400万円−38.8%
産業機材297億3,500万円+14.2%23億4,100万円+29.2%
人とみらい開発188億8,400万円−5.4%58億9,900万円+12.0%
生活流通166億1,700万円−7.9%9億300万円+0.9%

産業機材は、今期からカコテクノスという会社を連結に加えています。この会社を除いた伸びは短信には載っていないので、元からの事業がどこまで伸びたのかは分かりません。

人とみらい開発事業は、売上が減ったのに利益は1割増えています。2025年に建った八重洲のオフィスビルと西宮の賃貸住宅が、家賃を生み始めました。前年はこのビルの開業経費がかかっていて、今期はそれが無い、とも書いてあります。前年にかかった費用が今期は無いことも、増益の一部です。

純利益の伸びには、持ち株を売った利益が入っている

純利益が3割近く伸びた理由は、損益計算書の下のほうにあります。前年はゼロだった特別利益が、今期は11億6,200万円あります。いちばん大きいのは投資有価証券売却益の7億9,200万円で、持っている株を売って出た利益です。補助金収入と固定資産の売却益がそれに続きます。

経常利益までの伸びは1割強で、営業利益とほぼ同じです。純利益との差は、主にこの一度きりの利益から来ています。

制服の在庫が余り、決算のあとに制服の子会社を一つにまとめる

衣料繊維は、売上が少し増えたのに営業利益が4割近く減りました。理由として会社が挙げているのは、学校制服用の生地の流通在庫が多すぎることです。昨年度から続いている、とあります。

短信の最後の注記に、これに関係する決定が載っていました。9月25日に、制服関係の子会社3社を合併させると決めています。目的は「少子化や需要構造の変化といったユニフォーム市場の環境変化に対応」することです。12月1日に1社にまとまり、ニッケメイトという名前になります。

在庫が多すぎるという説明は短信の前のほうに、制服の子会社を合併させる決定は最後の注記に書かれています。余った在庫が一時的な話なのか、子どもの数という戻らない話なのか。後者まで含めて手を打っている、と私は受け取りました。

この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった

いつもどおり現金の流れを確かめに行くと、注記にこう書いてありました。「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」。第3四半期で作らない会社は珍しくありません。……仕方がない、貸借対照表の差で追います。

貸借対照表2025年11月末2026年8月末
現金及び預金290億2,300万円314億4,500万円
受取手形、売掛金及び契約資産276億3,700万円187億9,000万円
短期借入金116億200万円94億2,900万円
自己株式74億3,000万円113億5,800万円

売掛金が88億4,600万円減り、その分が入金になったと考えるのが自然です。そのお金で短期の借入を返し、自社株を39億5,600万円分取得しています。それでも預金は24億2,200万円増えました。これは314億4,500万円から290億2,300万円を引いた数字です。

棚卸資産も28億800万円増えていますが、どの事業の在庫かは短信では分けて示されていません。8月末に売掛金が少ないのが毎年の季節的な動きなのかも、前年の8月末の貸借対照表が短信に無いので確かめられませんでした。

会社の説明は、事業ごとには細かい

説明文は丁寧です。エアバッグ用の糸は引き合いが増え、工場の自動化設備は顧客が投資を控えて低調だった、と分野ごとに書いてあります。良い話も悪い話も並べていて、ここはそのまま受け取ります。

ただ、通期の予想については「2026年1月15日公表の予想数値より変更ありません」の一文だけでした。表紙には、補足説明資料も説明会も「無」とあります。一方で配当の予想は今回見直していて、期末に記念配当10円を足しました。利益の予想は動かさず、配当だけを動かしたことになります。

残り3か月で、売上だけが急に増える置き方

通期予想第3四半期まで進み具合残り3か月に必要前年の同じ3か月比
売上高1,300億円891億8,600万円68.6%408億1,400万円+26.4%
営業利益130億円86億7,300万円66.7%43億2,700万円+1.9%
経常利益134億円97億3,000万円72.6%36億7,000万円−15.9%
純利益95億円70億4,400万円74.1%24億5,600万円−30.6%

進み具合と右の2列は、私が表紙の予想から引いて割ったものです。

利益の進み方は3分の2から4分の3で、9か月目の目安とほぼ並んでいます。経常利益と純利益は、残り3か月が前年より少なくても届く数字です。

引っかかったのは売上です。直前の四半期と比べると、この予想の大きさがはっきりします。上期までの売上は597億1,000万円でした。891億8,600万円から引くと、6月から8月の3か月は294億7,600万円です。次の9月から11月に要るのは408億1,400万円で、直前の3か月より4割近く多い数字になります。

前年の同じ3か月と比べても、売上は4分の1増、営業利益はほぼ横ばいです。前年と同じ利益を、ずっと多い売上で稼ぐ置き方になっています。……売上の数字だけ、別の年から持ってきたみたいだ。

利益の予想は今の姿に近く、売上は1月のままだと考えます

私は、利益の予想は今の実態に近く、売上の予想は1月に立てたまま直していない数字だと考えています。理由は、利益はここまでの進み方で説明が付き、売上は付かないからです。カコテクノスの連結は第1四半期から入っているので、9か月分の売上にすでに含まれています。

9月から11月に大きな納品や引き渡しを見込んでいるのかもしれません。それが何なのかは、短信からは分かりません。この先どうなるかも知りません。

出典:決算短信(会社発表)

ニッケグループ|IR情報|決算短信
「ウールのニッケ」から“人と地球に「やさしく、あったかい」企業グループ”へ。ニッケグループは共通の経営理念・経営方針で統一された事業複合体です。

残り3か月で売上を4分の1増やす前提が何なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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