はじめに
中北製作所は、配管の中を流れる蒸気や燃料、水の量を加減する弁(バルブ)の会社です。主力の1つめは、圧力や温度を決めた値に保つために、自分で開き具合を変える自動調節弁です。2つめは、管の中の円板を回して大きな流れを開け閉めするバタフライ弁です。3つめは、船の中の離れた場所からそれらの弁をまとめて動かす遠隔操作装置です。
買い手は、船を造る造船所と、発電所などの設備を建てる会社です。船一隻ごと、設備一つごとに仕様が違うので、同じ品物を大量に流す商売ではありません。船が動き続けるかぎり部品の交換も続くので、修理用の注文も入ってきます。
売上は増え、利益は3割減りました
2026年10月6日に出た、6月から8月までの第1四半期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 71億9,900万円 | 70億7,600万円 | +1.7% |
| 営業利益 | 2億5,300万円 | 3億8,600万円 | △34.4% |
| 経常利益 | 4億4,300万円 | 5億8,600万円 | △24.3% |
| 純利益 | 2億8,900万円 | 4億4,000万円 | △34.3% |
売上はわずかに増え、利益はまとまって減っています。この組み合わせがなぜ起きたのかは、この表からは分かりません。
営業利益が減った分は、ほとんどが粗利の目減りです
短信の7ページ目、損益計算書を開くと、減った場所はすぐに見つかります。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 70億7,600万円 | 71億9,900万円 |
| 売上原価 | 58億7,900万円 | 61億2,400万円 |
| 売上総利益 | 11億9,600万円 | 10億7,400万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 8億1,000万円 | 8億2,100万円 |
| 営業利益 | 3億8,600万円 | 2億5,300万円 |
売上は1億2,300万円増えましたが、原価はその倍の2億4,500万円増えています。その結果、粗利は1億2,200万円減りました。販管費の増加は1,100万円にとどまっています。
営業利益の減少は1億3,300万円です。そのほとんどは、粗利が1億2,200万円減ったことで説明が付きます。売上に対する粗利の割合は、前年の約17%から約15%へ下がりました。粗利を売上で割った、私の計算です。
なぜ原価が売上より速く増えたのかは、決算短信には書かれていません。
注文は4分の1増え、受注残は1年で43億円増えました
一方で、短信の最後のページにある「生産、受注及び販売の状況」の表は明るい中身です。3か月の受注高は84億3,100万円で、前年同期より16億6,300万円増えています。3つの品種がそろって増えました。
| 受注残高 | 前年同期末 | 今期の期首 | 今回 |
|---|---|---|---|
| 合計 | 242億7,100万円 | 274億4,300万円 | 286億1,400万円 |
| うちバタフライ弁 | 117億6,000万円 | 148億6,700万円 | 158億2,200万円 |
1年前と比べると、受注残は43億4,300万円増えています。このうち40億6,200万円がバタフライ弁です。これは私の引き算です。いまの受注残は、前の期の年間売上の292億円ほどに近い額です。ほぼ1年分の仕事を抱えていることになります。
貸借対照表を見ると、棚卸資産も期首から3億2,400万円増えています。注文を受けて作り始め、まだ売上になっていないものが増えている形です。
輸出の売上が4億4,300万円減りました
売上の中身にも、1ページ目には出てこない入れ替わりがあります。輸出の売上は10億200万円でした。前年同期は14億4,500万円でしたから、4億4,300万円減ったことになります。売上の2割を占めていた輸出が、1割4分ほどまで下がっています。
国内向けは逆に増えています。今回の売上は71億9,900万円です。そこから輸出の10億200万円を引くと、国内向けは61億9,700万円です。前年も同じように、売上70億7,600万円から輸出14億4,500万円を引きます。国内向けは56億3,100万円でしたから、1年で5億6,600万円の増加です。
輸出と国内とで利幅が違うのかどうかは、短信からは読み取れませんでした。ただ、粗利が細ったのと同じ3か月に、売上の行き先がこれだけ入れ替わったことは事実です。
営業利益の隣に、家賃が1億7,600万円あります
営業外収益の内訳には、不動産賃貸料1億7,600万円が並んでいます。前年同期とほぼ同じ額です。賃貸の費用2,400万円を引いても1億5,200万円が残ります。これは営業利益2億5,300万円の6割ほどにあたります。経常利益が営業利益より2億円近く多いのは、主にこの家賃のおかげです。
借入金も動いています。長期借入金は3か月で8億8,900万円増えました。支払利息も、前年同期の900万円から2,100万円へ増えています。現金と預金も10億4,000万円増えています。借りたお金を何に充てるのかは、短信には書かれていません。第1四半期はキャッシュ・フロー計算書も作られていないので、お金の流れはここでは追えません。
会社は、注文が増えた理由を書いています
4ページ目の説明文では、受注のことが丁寧に書かれています。古い船の建て替えや海上輸送の増加で、新しく造る船の需要が持ち直していること。造船所は手持ちの仕事を積み増していること。陸の側では、データセンター向けの電力需要から、発電所の案件が増えていること。受注の数字は、この説明と合っています。
利益については、3つの利益が「いずれも前年同期を下回りました」と結果を書くだけです。原価がなぜ増えたのかには、短信は触れていません。表紙には、補足説明資料も説明会も「無」とあります。この四半期について会社が出した説明は、この短信だけということになります。
注文の話はそのまま受け取ります。利益の話は、理由が書かれるまで留保します。
通期予想に対して、営業利益は2割に届いていません
| 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 300億円 | 71億9,900万円 | 24.0% |
| 営業利益 | 14億5,000万円 | 2億5,300万円 | 17.4% |
| 経常利益 | 21億円 | 4億4,300万円 | 21.1% |
| 純利益 | 16億円 | 2億8,900万円 | 18.1% |
3か月なら4分の1が目安のところ、売上はほぼ目安どおり、営業利益は2割に届いていません。通期予想の14億5,000万円から、第1四半期の2億5,300万円を引きます。残り9か月で必要な営業利益は、11億9,700万円です。前年の同じ9か月とほぼ同じ水準です。
上期の予想と並べると、会社の見込み方がもう少しはっきりします。
| 営業利益 | 第1四半期 | 9月〜11月 | 上期累計 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 3億8,600万円 | 約4億3,700万円 | 約8億2,300万円 |
| 今年 | 2億5,300万円 | 4億4,700万円 | 7億円(予想) |
約の付いた数字は、上期予想の増減率△14.9%から私が割り戻したものです。△14.9%は、前年の0.851倍という意味です。そこで7億円を0.851で割ると、前年の上期は約8億2,300万円になります。そこから前年の第1四半期を引くと、前年の9月から11月は約4億3,700万円です。今年の同じ3か月は、上期予想の7億円から第1四半期の2億5,300万円を引いて出します。答えは4億4,700万円です。
会社は9月から11月を、前年とほぼ同じ稼ぎと見込んでいます。第1四半期で減った分を取り返すのではなく、そのまま抱えて上期を終える形です。予想は7月14日に出したものから変えていません。
私はどう読んだか
注文がこれだけ入っているのに、儲けが薄い。……ここが引っかかった。
見方は2つあります。輸出が減り、売上の中身が入れ替わった3か月だけの目減りだという見方。そして、増えた注文そのものが利幅の薄い仕事だという見方です。
私は後者の見方をしています。受注の伸びを、まだ利益の伸びとは見なしていません。理由は、注文がいちばん伸びた3か月に粗利が細っていて、その2つの関係を説明するものが短信に無いからです。会社は9月から11月を前年並みと見込んでいます。次の決算でその数字が出れば、前者だったことになります。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
売上原価が売上より速く増えた理由は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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