百貨店でコートを売っている会社です
三陽商会は、百貨店の婦人服や紳士服の売場で見かける服を作り、自分たちで売っている会社です。看板はコートです。『マッキントッシュ ロンドン』や『Paul Stuart』の名前は、聞いたことのある人も多いと思います。
買うのは、季節の変わり目に、少し良いコートやジャケットを一着選びに百貨店へ行く人です。量販店の服とは値段の桁が一つ違い、何年も着るつもりで選ばれます。私は自分で買ったことはありません。ただ、父が冬になると同じトレンチコートを毎年出してきていたのは覚えています。
事業は服の一本だけで、短信もセグメントを分けていません。売上の多くを百貨店に頼っています。百貨店の売場が減れば、そのまま売る場所が減る会社です。
減収のまま、赤字が広がった半期
10月6日に出た中間決算です。3月から8月までの半年分になります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 259億5,300万円 | 270億4,200万円 | △4.0% |
| 営業利益 | △4億9,900万円 | △2億1,300万円 | - |
| 経常利益 | △4億2,100万円 | △1億4,900万円 | - |
| 純利益 | △5億5,500万円 | △2億9,900万円 | - |
売上は4%減り、営業損失は前年の倍以上に広がりました。
損益計算書の下のほうに、小さな引っかかりがあります。税引前で4億2,700万円の赤字なのに、税金が1億2,600万円かかっています。ほとんどが法人税等調整額で、そのぶん純損失が税引前より大きくなっています。
この短信には、キャッシュ・フロー計算書が付いていません
短信の目次には、貸借対照表、損益計算書、包括利益計算書、注記が並んでいます。キャッシュ・フロー計算書はありません。中間期の短信では付けない会社も多く、珍しいことではありません。ただ、私はいつもそこから読み始めるので、手が止まりました。
代わりに、貸借対照表の現金を2月末と比べました。2月末は239億9,200万円、8月末は198億円です。半年で41億9,200万円減っています。
減った先の大きなものは、短信の中で拾えます。注記には、この半年で自己株式を19億1,600万円で取得したとあります。利益剰余金は12億6,900万円減りました。そこから純損失の5億5,500万円を引いた残りの7億1,400万円は、前期末の配当の支払いだと考えています。
半期の締めの日に約定した、45億5,760万円の自社株買い
現金の話には続きがあります。8月末の貸借対照表には、まだ載っていない支払いがあります。
短信の最後の注記、重要な後発事象の欄です。8月31日に約定し、9月2日に受け渡す形で、270万株を45億5,760万円で取得しています。自己株式を除いた発行済株式の9.2%にあたります。受け渡しが9月なので、8月末の現金198億円にはこの支払いが入っていません。
8月末の198億円から、この45億5,760万円を引きます。9月初めの手元は、およそ152億4,000万円です。これは私の引き算で、9月に入ってきた売上の代金などは足していません。
赤字の半期の締めの日に、これをやるのか。
配当も同じ向きです。表紙の注記によると、株式分割前の株数に直した年間配当は169円の予定で、前期の139円より増えます。説明会資料には、自己資本の5%を目安に配当を決める方針が書かれています。利益ではなく純資産から額を決める作りなので、赤字の半期でも配当は減りません。
自己資本比率は68.5%あり、この支払いで会社が困ることはありません。気になるのは別のところで、本業でどれだけ現金が出入りしたのかを、この短信からは追えないことです。
売上が減った半期に、在庫は増えています
商品及び製品は、2月末の92億9,100万円から96億5,000万円へ増えました。2月末と8月末では季節が違うので、前年の同じ時期とも比べます。説明会資料の数字です。前年8月末は88億9,300万円で、そこからも増えています。
説明会資料によると、増えたのは新ブランドや盛夏向けの商品を仕入れた分が中心です。売れ残りの繰越品も1億7,000万円増えていて、理由は値引きを抑えたからだと書かれています。値引きをしなければ、売れなかった服はそのまま棚に残ります。どちらも、下期に売り切る前提の在庫です。
6月の天気と、セールを絞った判断
短信の4ページ目に、会社自身の説明があります。既存のお客さんの売上は前年を上回り、外国からの観光客の売上も戻ってきた。一方で、ふらりと立ち寄るお客さんの売上は低調で、店の数も減った。第2四半期はセールと値引きを抑えたので売上は前年を下回ったが、粗利率は前年を上回った。そういう説明です。
説明会資料には、月ごとの数字がありました。6月は天候不順で売上が前年の9割にとどまり、7月からはセールを適正な規模に抑えたそうです。売上総利益率は7月が前年より2.3ポイント、8月が4.1ポイント良くなっています。
上期全体の売上総利益率は、損益計算書の売上総利益を売上高で割って60.4%です。前年の60.6%とほぼ同じところまで戻っています。
セールを絞って売上を落とし、粗利を取りに行った、という説明は月ごとの数字と合っています。私はここをそのまま受け取ります。ただ、立ち寄り客が戻らないことと店が減っていることは、セールとは別の話です。こちらは下期にも残ります。
下期の営業利益は、前年の下期の1.7倍の置き方です
通期予想は据え置かれました。売上は600億円、営業利益は21億円のままです。純利益も40億2,000万円から変わっていません。上期の営業損失は4億9,900万円でした。通期の21億円に届くには、下期の6か月で25億9,900万円を稼ぐ必要があります。
前年の下期と並べると、この予想がどれだけ重いかがはっきりします。
| 前年の下期 | 今年の下期(会社の予想) | |
|---|---|---|
| 売上高 | 約313億8,100万円 | 約340億4,700万円 |
| 営業利益 | 約15億1,200万円 | 約25億9,900万円 |
約の付いた数字は私の計算です。前年の下期は、まず表紙の通期予想を増減率(売上+2.7%、営業利益+61.7%)で割り戻して、前年の通期を出しました。そこから前年の上期を引いています。今年の下期は、通期予想から今回の上期を引いたものです。
上期に4%減った売上を、下期は前年より1割近く伸ばし、営業利益は前年の下期の1.7倍を見込んでいます。純利益の40億2,000万円は、説明会資料によれば投資有価証券の売却や本社ビルの建て替えなどを含んだ計画です。
据え置いた理由について、短信には「現時点での業績予想の修正はございません」の一行しかありません。理由は説明会資料のほうに書かれていました。9月の店頭販売額が前年比111%(速報値)で、この勢いが続けば上期の遅れを取り返せる、という判断です。
9月の1か月に、重さを掛けすぎた予想だと考えています
受け取り方は2つあります。7月にセールを絞った効果が9月に出始め、下期は利益の厚い売り方で取り返す、という見方。もう一つは、1か月の速報値で下期の6か月を決めるのは重すぎる、という見方です。
私は後者だと考えています。理由は、売上を前年より1割近く伸ばすことと、利益率を大きく上げることの2つを、下期に同時に見込んでいるからです。利益率のほうは、7月と8月の粗利率で裏づけが取れます。売上のほうの裏づけは、9月の1か月しかありません。それも店頭販売額で、損益計算書の売上高とは同じものではありません。
それでも、セールを絞った判断そのものは筋が通っていると思います。心配性なので、在庫が増えたまま冬物の季節に入ることのほうを、頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

――下期の営業利益のうち、9月の売れ行きが続く前提にどれだけ頼っているのかは、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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