朝日インテック(7747)2026年6月期 通期決算分析――増益の4割は前年の減損の消滅と読みました

朝日インテック(7747)2026年6月期 通期決算分析――増益の4割は前年の減損の消滅と読みました 決算を読む

朝日インテックは、心臓の血管が詰まったときの治療で使う、細い針金を作っている会社です。カテーテルを血管の奥へ通すとき、先導役として最初に入るのがガイドワイヤーで、医師が手元で回しながら病変の先まで届かせます。

使うのは循環器内科の医師で、買うのは病院と、そのあいだに立つ代理店です。生産はタイ、ベトナム、フィリピンの工場が中心で、売る相手も海外が中心です。今夜はこの会社の通期決算を、いつもどおり最後のページまで読みました。

売上2割増で、純利益は2.5倍

8月14日に出た2026年6月期の通期決算です。

今回前年増減率
売上高1,454億1,900万円1,200億2,500万円+21.2%
営業利益452億1,800万円300億7,900万円+50.3%
経常利益451億8,500万円295億6,300万円+52.8%
純利益320億7,500万円127億3,700万円+151.8%

経常利益が5割増で、純利益が2.5倍。この2行のあいだで何かが起きています。営業利益より下の段を読まないと分かりません。

純利益が跳ねた分の4割は、前年の減損

税金を払う前の利益で比べます。税金等調整前当期純利益は186億5,500万円から446億9,500万円へ増えました。差は260億4,000万円です。この増え方を、損益計算書の段ごとに分けたのが下の表です。

増えた理由金額
営業利益の増加151億3,900万円
営業外損益の改善約4億8,300万円
特別損益の改善約104億1,700万円
合計260億4,000万円

約の付いた数字は、営業外と特別損益それぞれの前年との差を、私が足し引きしたものです。

特別損益の104億円の中身は、ほぼ減損損失です。前年は92億4,400万円の減損があり、千葉県の子会社1社と米国の子会社3社の、のれんと無形資産をまとめて落としていました。今年の減損は10億6,100万円で、マグネデザイン株式会社との共同開発を見直したものです。純利益の増え方のうち4割は、前年に開いた穴が今年は開かなかった分です。

ここまでは損益計算書の数字です。営業利益の5割増のほうは、売上総利益率が67.7%から70.4%へ上がったことで説明が付きます。こちらは本業で稼いだ分だと受け取りました。ついでに貸借対照表を確かめると、のれんの残高は1億1,000万円からゼロになっています。

利益が260億円増えて、営業キャッシュ・フローは前年並み

キャッシュ・フロー計算書は添付資料の13ページ目です。営業活動で得た資金は400億9,500万円でした。前年の405億4,300万円より4億4,700万円少ない額です。税引き前の利益が260億円増えたのに、こちらは動いていません。……いや、まず税金だ。

法人税等の支払額が62億1,300万円から91億6,800万円へ増えています。差は29億5,500万円です。儲かった年は税金も増えるので当然です。もう一つは前受金で、こちらが本題です。

前受金はお客が品物より先に払うお金で、貸借対照表では契約負債に入っています。前年はこれが16億7,900万円増えて、入金が先に来ていました。今年は逆に51億7,800万円減っています。先にもらっていた分を売上に振り替えるだけなので、その分の入金は今年はありません。

前年の増えた分と今年の減った分を足すと、入金の差は68億5,700万円です。これは私の足し算です。税金の増加と合わせると98億円ほどになり、利益の増加が営業キャッシュ・フローに届かなかった理由の大半は、この2つで説明できます。

契約負債の注記では、期首の91億8,400万円が今年の売上に認識され、期末残高は52億400万円まで減っています。前払いで買う取引そのものが縮んだのか、今年の入金の時期がずれただけなのか。この書類だけで分けるには材料が足りません。私は、取引が縮んだほうを先に疑っています。理由は、期末残高が半分近くまで減っているからです。

なお、資金の残高そのものは532億円から642億6,400万円へ増えています。自社株買いに105億5,300万円、配当に65億3,400万円を使ったうえでの増加なので、財布の心配はしていません。

中国で増えた91億円と、最大顧客の9億円

売上を地域で分けると、中国が379億8,200万円で最大です。メディカル事業の中国だけを見ると、282億8,300万円から374億1,700万円へ増えました。91億3,400万円の増加で、3割増です。

引っかかったのは、主要顧客の注記です。北京嘉事唯衆医療器械有限公司という取引先1社への売上が177億9,300万円で、前年は168億6,500万円でした。9億2,800万円しか増えていません。中国で増えた91億円のうち、この1社の分は9億円。残りの82億円は、この1社以外に売れたことになります。私の引き算です。

連結売上に占めるこの1社の比率は、前年の14%ほどから12%ほどへ下がりました。1社への偏りが薄まったのは良い方向です。ただ、82億円をどの取引先に売ったのかは、決算短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

売上が増えた理由を、添付資料の2ページ目では2つ挙げています。メディカル事業とデバイス事業がともに好調だったこと、そして為替です。ドルは1年で149.72円から154.45円へ動きました。ユーロは162.83円から180.11円です。

為替でどれだけ膨らんだかは、短信には金額がありません。説明会資料には、円安で売上が66億8,900万円増えたとあります。為替を前年と同じ条件にしても、売上は15.6%増、営業利益は37.4%増です。円安だけの5割増ではありません。

営業利益については、米国での販売強化の営業費用と研究開発費が増えたが、増収と生産性改善がそれを上回った、と書いています。米国関税で売上原価が増えたことも短信にあり、金額は説明会資料に11億4,900万円とあります。どの説明も損益計算書の動きと合っています。

来期は売上1割増、営業利益15%増の置き方

6月決算なので今期の進み具合を測る段はなく、代わりに2027年6月期の予想が表紙に出ています。

2026年6月期 実績2027年6月期 予想増減率
売上高1,454億1,900万円1,617億9,400万円+11.3%
営業利益452億1,800万円521億2,700万円+15.3%
経常利益451億8,500万円526億円+16.4%
純利益320億7,500万円378億3,200万円+17.9%

売上をあと163億7,500万円、営業利益をあと69億900万円積む置き方です。為替の前提はドル155円、ユーロ179円で、今期の実績とほぼ同じ水準です。円安の上乗せを見込まず、生産性改善で売上総利益率を70.4%から70.9%へ上げる計画です。費用の側では、2030年稼働を予定する中国・南寧工場の立ち上げ費用と、研究開発費の増額を短信に挙げています。

配当は今期48.24円で、うち6.03円は設立50周年の記念配当です。来期は記念分が外れて49.91円、配当性向35%の方針どおりです。

私はどう読んだか

営業利益の5割増は本業の数字で、純利益の2.5倍はそれより小さく受け取る。これが私の読み方です。理由は、税引き前で増えた260億円のうち104億円が、前年に減損を出したことの裏返しだからです。来年もう一度2.5倍になる種類の増え方ではありません。

営業キャッシュ・フローが前年並みだったことは、税金と前受金で説明が付いたので、心配の側には置いていません。頭に残っているのは、前受金が減った相手先と、中国で増えた82億円の売り先です。どちらも短信の外にある話です。上がるかは知りません。

目が限界なので、今夜はここまでにします。

出典:決算短信(会社発表)

IR資料室 | IR情報 | 朝日インテック株式会社
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前受金51億7,800万円が減った相手先は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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