銀色の小さな粒、仁丹の会社です。ただ、いまの森下仁丹が稼いでいるのは、あの粒そのものではありません。粒を作る技術、つまり中身を薄い膜で包んで球にする技術のほうです。
この技術で作った乳酸菌のサプリメントが、消費者向けの主力です。お腹の調子を整える目的で、薬局やネットで買う人がいます。短信によれば、香港をはじめとするアジアでよく売れていて、日本に来た旅行客が買っていくぶんも売上を押し上げています。
もう一つの柱が、他社からの受託です。香りや味を閉じ込めた小さな球を作り、それを自社製品に組み込むメーカーに納めます。サプリメントの材料を売る商売もあります。金額でいえば、こちらのほうが本体です。
仁丹と聞くと古い会社に思えますが、決算の中身は、カプセルの受託製造会社として受け取ったほうが分かりやすい。そう思って短信を開きました。
売上が4%増で、利益が2倍
8月6日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億7,600万円 | 33億4,300万円 | +4.0% |
| 営業利益 | 4億1,700万円 | 1億9,300万円 | +115.0% |
| 経常利益 | 4億3,600万円 | 2億900万円 | +108.5% |
| 純利益 | 3億2,400万円 | 1億6,300万円 | +99.1% |
売上が4%しか増えていないのに、営業利益は2倍です。この差がどこから来たのかは、1ページ目には書いてありません。
売上が1億3,300万円増えて、売上原価が200万円減っています
引っかかったのは、損益計算書の2行目です。売上高が1億3,300万円増えているのに、売上原価はほとんど動いていません。売るものが増えれば、作る費用も増えるのが普通です。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 差 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 33億4,300万円 | 34億7,600万円 | 約+1億3,300万円 |
| 売上原価 | 18億300万円 | 18億100万円 | 約△200万円 |
| 売上総利益 | 15億3,900万円 | 16億7,400万円 | 約+1億3,500万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 13億4,500万円 | 12億5,700万円 | 約△8,800万円 |
| 営業利益 | 1億9,300万円 | 4億1,700万円 | 約+2億2,400万円 |
差の列は、損益計算書の前年と今回を私が引き算したものです。
営業利益の増加2億2,400万円の内訳を見ます。売上総利益の増加が1億3,500万円で、販管費の減少が8,800万円です。増益の6割は、粗利の側で起きています。費用を削って利益を出した、という話では半分も説明できていません。ここまでは損益計算書の数字です。
粗利が増えた理由は、短信の説明文には書かれていません。会社が挙げている増益の理由は、あとで書きますが、宣伝販促費と研究開発費の減少です。つまり販管費の側の話だけです。売れたものの中身が変わったのか、値段を上げたのか、工場の稼働が良かったのか。私には読み取れませんでした。
2つの事業が、どちらも利益を出しています
事業ごとの数字に移ります。
| セグメント | 売上高(今回) | 前年比 | 利益(今回) | 利益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|
| コンシューマー事業 | 12億6,000万円 | +6.8% | 1億2,800万円 | △3,100万円 |
| ソリューション事業 | 22億1,400万円 | +2.5% | 2億9,000万円 | 2億2,700万円 |
消費者向けのコンシューマー事業は、前年の赤字から黒字に転じました。ここが営業利益倍増のいちばん大きな部分です。短信は、前年に新製品の発売で使った宣伝販促費が無くなったこと、販促のやり方を効率化したこと、の2つを理由に挙げています。
受託と原料のソリューション事業は、利益が3割近く増えました。前期に研究開発の先行投資をしていて、その費用が減ったのが理由だと書いてあります。
両方に共通しているのは、「去年使った金を、今年は使っていない」という説明です。どちらも販管費の話で、原価の話ではありません。……いや、両方とも売上は増えているのだから、原価が増えていないほうがやはり不思議だ。
新しい製造ラインを、借入で入れています
貸借対照表で目立つ動きが一つあります。機械装置及び運搬具が、3か月で5億2,700万円増えました。短信の説明文によれば、当期から稼働した大阪テクノセンターの新しいカプセル製造ラインです。
資金は借入です。長期借入金が4億6,100万円増え、短期借入金の3億円は返しています。現金及び預金は3億600万円減りました。自己資本比率は69.6%で前期末とほぼ同じですから、財務が傷んだという話ではありません。
ただ、第1四半期はキャッシュ・フロー計算書を作っていない、と短信の9ページ目に書いてあります。営業活動で現金が入ったのか出たのかは、中間決算まで待つことになります。減価償却費は1億4,900万円から1億6,800万円に増えていて、新しいラインの分は、これから原価に乗ってきます。
会社はどう説明しているか
短信の4ページ目の説明は、はっきりしています。コンシューマー事業は、前年同期にあった新製品「タンサ脂肪酸」の宣伝販促費が無くなり、販促を効率化したので大幅増益。ソリューション事業は、エビデンス強化への先行投資の費用負担が減ったので大幅増益。
これはそのまま受け取ります。販管費が8,800万円減っているのは損益計算書の数字で、説明と合っています。同時に、コンシューマー事業について「取り組むべき課題も多く」「収益構造の再構築に注力する」とも書いてあります。黒字になった事業を、手放しで喜んではいません。
留保を付けるのは、粗利の側です。会社の説明が届いているのは販管費の8,800万円まで。残りの1億3,500万円について、短信は何も語っていません。表紙には「決算補足説明資料作成の有無:無」とありますから、短信の外に読みに行く先もありません。
第1四半期だけで、上期の予想を超えています
通期予想は、5月13日に出したものから変えていません。
| 営業利益 | 第1四半期 | 7月〜9月 | 上期累計 | 通期 |
|---|---|---|---|---|
| 今年 実績・会社予想 | 4億1,700万円 | 約△8,700万円 | 3億3,000万円 | 6億5,000万円 |
7月〜9月の欄は、上期予想3億3,000万円から第1四半期の4億1,700万円を引いた私の数字です。予想を字面どおりに置くと、7月から9月の3か月は8,700万円の赤字ということになります。
通期も同じです。6億5,000万円から4億1,700万円を引きます。残り9か月は2億3,300万円で、前年の同じ9か月の半分以下です。第1四半期だけで、通期の6割を超える進み具合になります。
上回っていることは、会社自身が5ページ目に書いています。「各段階利益の実績は、第2四半期(累計)連結業績予想を上回って推移しております」。そのうえで、原材料価格の推移や海外市場の動向を見極める必要があるから据え置く、としています。修正が必要と判断すれば速やかに開示する、とも。
原材料価格を挙げているところが気になります。今回原価が動かなかったのは原材料が安く済んだからで、それが続かないと会社側は見込んでいるのかもしれません。
私はどう読んだか
予想が慎重すぎるだけなのか、7月以降に本当に利益が消える材料があるのか。私は前者だと考えています。理由は、増益の中身が営業外や特別利益ではなく、売上総利益と販管費という本業の2か所から出ているからです。しかも、2つの事業の両方で起きています。1つの事業の1つの費用が消えただけなら3か月で戻りますが、これは形が違います。
それでも心配性なので、原価の側は頭の片隅に置きます。粗利が1億3,500万円増えた理由が短信に無い以上、それが続くかどうかも私には判断できません。上がるかは知りません。予想が動くかどうかは、中間決算で分かります。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260806511705.pdf
売上が増えたのに売上原価が動かなかった理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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