セルシス(3663)2026年12月期 中間決算分析――減った原価の中身が気になる

セルシス(3663)2026年12月期 中間決算分析――減った原価の中身が気になる 決算を読む

セルシスは「CLIP STUDIO PAINT」というアプリを作っている会社です。パソコンやタブレットで、イラストやマンガ、アニメーションを描くための道具です。仕事で描く漫画家やイラストレーターも使いますが、使っている人の大半は趣味で描く人だと会社は説明しています。

売り方は二通りあります。毎月か毎年お金を払って使うサブスクリプションと、一度買えばそのまま使える買い切り版です。会社はサブスクのほうを伸ばそうとしていて、買い切り版は、新しい機能を使うときに追加で払う形に変えています。出荷の大半は海外向けです。

私はこのアプリを触ったことがありません。絵は描けないので、数字だけを読みます。

この決算で何が起きたか

7月31日に出た中間決算です。10日前の7月10日に中間期の予想を上げていて、その修正後の予想もさらに上回りました。

今回前年同期増減率
売上高55億6,300万円47億3,800万円+17.4%
営業利益22億2,100万円15億3,300万円+44.8%
経常利益22億4,100万円15億3,100万円+46.4%
純利益15億300万円8億7,000万円+72.6%

純利益の伸びには、前年の中間期に投資有価証券評価損4億8,030万円を特別損失に計上していた反動が入っています。本業の姿に近いのは、営業利益の伸びのほうです。

売上が増えたのに、売上原価が減っている

損益計算書の2行目で引っかかりました。売上はおよそ8億2,000万円増えたのに、売上原価は減っています。

今回前年同期
売上原価16億9,386万円18億9,071万円
売上総利益38億6,921万円28億4,807万円
販売費及び一般管理費16億4,776万円13億1,423万円

売上総利益は10億2,114万円増え、売上の増え分を上回りました。販管費は3億3,000万円ほど増えているので、締まったのは原価のほうです。

売上総利益を売上高で割った粗利の割合は、前年同期が約60%、今回が約70%です。営業利益率が7.5ポイント上がった理由は、ほぼここにあります。

なぜ原価が減ったのか。決算短信には書かれていません。説明会資料には「外注費等の原価および広告宣伝費等の販管費が計画通りに推移」とあるだけで、前年より減った理由までは踏み込んでいません。

……いや、増収で原価が減るのは、物を売る商売なら変だ。

ただ、売っているのはソフトです。原価は材料代ではなく、開発費の償却や外注費が中心で、売れた本数が増えてもほとんど増えません。粗利の割合が上がること自体は、この商売の形と合っています。ここまでは損益計算書と、会社の書いた説明です。

原価が減った理由の手がかりは、貸借対照表にあると私は読みました。

償却の手前で、開発費が5億円まで積み上がっている

ソフトウエアは9億1,868万円から8億8,016万円へ減りました。一方、ソフトウエア仮勘定は2億7,636万円から5億581万円へ増えています。仮勘定は、まだ完成していないソフトの開発費をいったん置いておく科目です。完成して使い始めるまで、償却は始まりません。

短信の説明文には、クリエイターの活動の場になる新しいサービスを、2026年以降のリリースに向けて開発中だとあります。半年で積み上がった2億2,944万円は、おそらくそれです。

つまり今の売上原価には、この開発費の償却がまだ乗っていません。完成すれば乗ります。粗利の割合が7割という数字は、その手前の姿かもしれません。

これから先の売上のほうも、貸借対照表に載っています。前受金は2億9,538万円増えて16億2,403万円です。サブスクの年額プランで先に受け取り、これから月々の売上に変わっていく分です。

役員退職慰労引当金が、半年でゼロになっている

貸借対照表でもう一つ目についたものがあります。固定負債の役員退職慰労引当金7億7,581万円が、当中間期末には無くなっています。説明会資料によれば、制度を2025年12月末で廃止したためです。

損益計算書に戻し入れの利益は見当たらないので、今回の利益を押し上げた話ではありません。長期未払金が1億5,863万円、未払金が8,397万円増えているので、一部はそこへ移っています。残りの行き先は末尾に書きます。

会社は、3月の大型更新と値上げで説明している

短信の5ページ目に、会社の言葉で理由が並んでいます。3月にアプリを大きく更新してVer.5.0を出し、同時に買い切り版の価格を平均10%引き上げました。それで買い直しが増え、サブスクも買い切りも当初計画を大きく上回った、という筋です。

加えて、新興国向けの販売とAndroid端末のサブスク契約が伸びていると書いてあります。サブスクの年間経常収益は6月に63億円で、前年同月より3割増だそうです。

この説明は、筋が通っています。ただ、買い直しは更新のたびに一度だけ起きる需要です。3月に集中した分が上期に入っていて、同じ勢いが下期に続くとは考えていません。会社側も、そうは見込んでいません。

下期は、利益率が下がる計算になっている

同じ7月31日に、通期予想も上方修正されました。上期を終えた時点の進み具合は、売上が半分を少し超え、営業利益は5割5分です。

通期予想上期実績下期に必要な額前年の下期との比
売上高108億1,000万円55億6,300万円約52億4,700万円約+10.8%
営業利益40億円22億2,100万円約17億7,900万円約+24.1%
純利益26億7,000万円15億300万円約11億6,700万円約+44.0%

約の付いた数字は、通期予想から上期の実績を私が引き、前年の同じ期間と比べたものです。

下期の営業利益の伸びは、上期の4割半増と比べるとだいぶ低い数字です。下期の営業利益17億7,900万円を、売上高52億4,700万円で割ります。すると下期の営業利益率は約34%になります。上期の39.9%から6ポイントほど下がる計算で、これは私の割り算です。

理由として考えられるのは3つです。買い直しが一巡すること、広告宣伝費を下期に寄せること、開発費の償却が始まること。私は最初と最後の2つが大きいと考えています。短信にはどれとも書かれていません。説明会資料には「例年通り、若干の上期偏重傾向」とあるだけです。

私はどう読んだか

良い決算です。本業の粗利が10億円増え、前受金と現金が積み上がり、通期予想も年間配当も上がりました。

そのうえで、営業利益率39.9%は一時的に高めに出ている、という見方をしています。理由は、次の3つが同じ方向を向いているからです。買い直しが一度きりであること。開発中の資産の償却がこれから始まること。会社自身が通期の営業利益率を37.0%と、上期より低く見込んでいること。

減った原価が、どの費目でいくら減ったのか。それが分かれば、7割の粗利がどこまで続くか見当が付きます。上がるかは知りません。私が次に開くのは、第3四半期の損益計算書の2行目です。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260723598294.pdf

役員退職慰労引当金7億7,581万円のうち、長期未払金と未払金の増加分を差し引いた5億3,000万円あまりの行き先は、キャッシュ・フロー計算書の無いこの短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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