はじめに
Laboro.AIは、注文服のようにAIを作る会社です。既製品のソフトを売るのではなく、顧客企業ごとの課題を聞いて、その会社専用のAIを設計して納める。工場の検品、需要の予測、書類の処理。「AIを入れたいが、何をどう入れればいいか分からない」という企業に、コンサルティングから開発までまとめて入るのが仕事です。だから顧客は個人ではなく、各業界の大きめの企業になります。
売っているものが人の技術そのものなので、この会社の原価はほとんど人件費です。エンジニアとプロジェクト推進役の稼働が売上で、その人たちの給料と採用費がコスト。ここを頭に置いておくと、今回の決算の妙な面白さが見えてきます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,911 | 1,376 | +38.8% |
| 営業利益 | 245 | 132 | +85.7% |
| 経常利益 | 249 | 128 | +93.8% |
| 純利益 | 176 | 70 | +150.0% |
(百万円)
売上が4割近く伸びて、利益はその倍以上のペースで増えました。同じ日に通期予想の上方修正も出ています。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない形です。
最初の表では分からなかったこと
利益が増えた理由が、売上の伸びではなかった
引っかかったのは5ページ目、業績予想の修正理由のところです。会社はこう説明しています。売上は昨年11月の予想を4%上回る見込み。ところが営業利益は29%上回る見込み。この差はどこから来たのか。
会社の答えは「積極的な生成AI活用等を通じ、フロントメンバーの業務生産性向上が見られた。期初想定していた採用・体制拡大の必要性よりも少ない人員数でも同様の売上達成が見込まれる」。つまり、人を雇う予定を減らせたから、です。
顧客にAIを売る会社が、自分の社内で生成AIを使ったら、雇うはずだった人を雇わずに済んだ。この会社が顧客に売っている話を、自分の損益計算書で先にやって見せた格好です。……これは商品説明としては最強の営業資料じゃないか。
ただし裏返すと、今回の増益の一部は「使わなかった採用費」でできています。売上の実力が29%上がったわけではない。ここは分けて読んだほうがいいと思います。
いつも読みに行くものが、無かった
私はキャッシュ・フロー計算書まで読みに行く習慣なのですが、この短信には「作成しておりません」とありました。第3四半期では作成しないことを選べるので、手抜きではありません。代わりに貸借対照表を見ると、現金及び預金は2,048百万円から2,321百万円へ増えています。差し引き約272百万円の増加――これは私が引き算した数字です。売掛金も減っていて、売上が現金にならないまま溜まっている気配はありません。
稼ぎ頭は、ほぼ一本
セグメントを見ると、カスタムAI事業の売上1,884,667千円に対し、システム開発事業は58,768千円で営業損失。買収でぶら下げた二本目の柱は、まだ柱になっていません。ただ前年同期は51,581千円の損失だったものが3,966千円まで縮んでおり、悪い方向ではない。
会社はどう説明しているか
第3四半期単独の売上が第2四半期よりやや軟調だった点について、会社は「顧客に3月決算企業が多く、4月の体制変更・人事異動でプロジェクトの立ち上がりに時間を要した。5月の大型連休で稼働が限定的だった。期初計画の通りの着地」と書いています。顧客都合の季節性であって、需要が細ったのではない、という説明です。
新規顧客が3Q累計で12社獲得できていること、その足で通期を上方修正していることを考えると、この説明は素直に受け取ってよさそうです。需要が細っている会社は、同じ日に予想を引き上げません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 進捗率 | 残り3ヶ月に必要な額 |
|---|---|---|
| 売上高 | 74.1% | 667百万円 |
| 営業利益 | 64.5% | 135百万円 |
売上は4分の3近くまで来ていて順当。営業利益は目安の75%に届いていませんが、注意がいるのはこの分母が今日引き上げた後の予想だということです。残り3ヶ月の営業利益135百万円は、前年の同じ3ヶ月の2倍以上を積む置き方になります。自分でハードルを上げた直後なので、未達なら格好がつかない。会社はそれを分かって上げているはずです。
私はどう読んだか
私は良いほうに寄せて読んでいます。理由は、増益の中身が「値引きを我慢した」でも「一時的な収入」でもなく、コスト構造そのものの話であること。そして現金と売掛金の動きに、利益の質を疑う材料が見当たらなかったことです。
ただし「少ない人員で同じ売上」は、今期は利益で返ってきますが、来期以降の成長は人を増やさないと頭打ちになる商売でもあります。生産性向上がどこまで人員増の代わりになるのかは、この短信からは分かりません。私の読み違いかもしれませんが、そこが次の期に見るべき場所だと思っています。
出典:決算短信(会社発表)
営業活動で実際にいくら現金が入ったのかは、キャッシュ・フロー計算書が未作成のため読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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