トランスジェニックグループ(2342)2027年3月期 第1四半期決算分析――借入の増え方が気になる

トランスジェニックグループ(2342)2027年3月期 第1四半期決算分析――借入の増え方が気になる 決算を読む

トランスジェニックグループは、二つの顔を持つ会社です。一つは創薬支援です。製薬会社や研究機関が新しい薬の候補を試すとき、人の遺伝子を組み込んだマウスを使って、効き目や毒性を人に投与する前に確かめます。そのマウスを作り、動物での試験を請け負い、臨床試験まで引き受ける仕事です。薬を作る側が自前で動物施設と技術者を抱えずに済むように、その受け皿になっています。

もう一つは投資・コンサルティング事業です。買収した子会社が、ネット通販、卸売、製造をそれぞれ営んでいます。売上の大半はこちらから来ます。マウスの会社と卸売の会社が同じ屋根の下にある、というのがこの会社の見た目で、決算もその二つを分けて追わないと分かりません。

表紙の数字はよく見えます。私が引っかかったのは、貸借対照表の借入の行でした。

営業利益が前年同期の4,500万円から1億6,300万円へ

8月12日に出た第1四半期決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高36億5,900万円31億9,700万円+14.4%
営業利益1億6,300万円4,500万円+261.2%
経常利益1億5,600万円6,100万円+154.3%
純利益1億3,600万円2,600万円+404.6%

売上が1割半増えて、営業利益が3倍以上になっています。売上に対する営業利益の割合は前年同期の1.4%から4.5%へ上がりました。ここまでは表紙で分かることです。

稼いだのは5月の一つの案件でした

セグメントの内訳は短信の9ページにあります。二つの事業で、向きが逆でした。

セグメント売上高(今回)売上高(前年同期)利益(今回)利益(前年同期)
創薬支援事業4億3,564万円5億6,487万円△1,482万円△2,387万円
投資・コンサルティング事業32億2,497万円26億3,458万円2億2,050万円1億1,755万円

創薬支援は売上が2割以上減り、損失は縮みました。投資・コンサルティングは売上が2割増え、利益はほぼ倍です。全社の増益は、大半を後者が作っています。

その後者の中身を、短信は「卸売販売等の商社事業において大型受注案件が完了した」とだけ書いています。大きさは短信に載っていません。決算説明会資料のほうには、商社事業の売上が4億2,900万円増え、5月に納品が集中したと書かれています。投資・コンサルティング全体の増収が5億9,000万円ですから、その7割ほどが商社の一つの月に集まっていた計算になります。これは私の割り算です。

純利益5倍の半分は、前年の穴の反動です

純利益の増減率が+404.6%と目立ちますが、前年同期の損益計算書には一時の項目が並んでいました。

項目今回前年同期
為替差益(営業外収益)103万円2,658万円
特別利益82万円3,742万円
特別損失53万円5,985万円
過年度法人税等1,026万円
非支配株主に帰属する損失331万円1,820万円

前年の特別損失は事業再編損と特別調査費用でした。前年の税引前利益が3,906万円まで削られたのは、この二つの分です。今年はどちらもほぼゼロで、税引前利益は1億5,667万円です。営業利益の増えた分1億1,800万円は本業から出ていますが、純利益の倍率は前年の穴が埋まった分を含んでいます。倍率で驚く場所ではありません。

現金は増えました。借りて増やしました

ここが引っかかった行です。貸借対照表は短信の4ページと5ページにあります。

項目3月末6月末
現金及び預金21億3,496万円22億5,904万円
短期借入金5億6,500万円12億500万円
前受金14億573万円10億1,669万円
前渡金7億6,402万円4億6,157万円
電子記録債権5,211万円3億6,101万円

現金は3か月で1億2,407万円増えました。同じ3か月で短期借入金は6億4,000万円増え、長期借入金は返済で1億1,170万円減っています。6億4,000万円借りて、手元が1億2,407万円しか増えていない。引き算すると5億1,593万円は、借りたそばからどこかへ出ています。……儲かった四半期に、借入が倍になっている。順序が逆じゃないか。

出た先は、同じ表の中に形が残っています。前受金が3億8,904万円減りました。電子記録債権は3億890万円増えています。前渡金も3億244万円減っていました。ここまでは貸借対照表の数字です。大型案件の代金の一部は前もって受け取ってあり、納品で売上に変わりました。残りの代金は電子記録債権で受け取って、まだ現金になっていません。仕入先には先に払っていました。一つの大きな納品が通り過ぎた跡の形、と私は読みました。

順序を確かめる書類が、この四半期にはありません。短信の8ページに、第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していないと書かれています。支払利息は前年同期の1,289万円から1,567万円へ増えました。借りた6億4,000万円を何に使ったかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

創薬支援は、減収のまま損失が縮みました

もう一つの事業は、静かな四半期でした。短信の2ページに、受注高は前年同期比で増えたが完了した試験が少なく減収になった、とあります。試験の請負は完了した時点で売上になるので、受注と売上の間に時差が出ます。決算説明会資料では、期末の受注残が前年同期より1億8,300万円多いと書かれています。

同じ2ページに、神戸研究所の閉鎖を見据えて遺伝子改変マウス事業と大動物薬理事業の機能を移す準備を進めた、ともあります。研究所を一つ閉じる話が、費用の減り方として先に表に出ている形です。貸借対照表では受注損失引当金が1億939万円から7,293万円へ減りました。損失が見込まれていた試験が片付いた分だと受け取っています。

会社はどう説明しているか

短信の2ページで会社が挙げている理由は三つです。創薬支援は完了試験が少なく減収だが、事業運営の合理化で費用が減った。投資・コンサルティングは、ネット通販の市場環境が好転し、商社の大型受注案件が完了した。製造は価格転嫁が進んだ。各事業でコストと在庫の管理に努めた。

これはそのまま受け取ります。損益計算書の売上原価と販管費の動きと合っています。留保を付けるのは一点です。短信は大型案件を「完了した」と書くだけで、次があるかどうかに触れていません。説明会資料も、第2四半期以降の需要動向を慎重に見極めると書くにとどめています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

会社は5月13日に出した通期予想を据え置いています。

項目通期予想第1四半期進み具合残り9か月に必要な額
売上高140億円36億5,900万円26.1%103億4,100万円
営業利益2億6,000万円1億6,300万円62.7%9,700万円
経常利益2億円1億5,600万円78.0%4,400万円
純利益1億5,000万円1億3,600万円90.7%1,400万円

右の2列は私の引き算です。売上は4分の1で教科書どおりですが、営業利益は6割を超え、純利益は9割まで来ています。残りの9か月で、営業利益はあと9,700万円、純利益はあと1,400万円稼げば予想に届きます。前年の同じ9か月と比べると、営業利益はほぼ横ばい、経常利益は2割以上減る置き方です。

説明会資料には事業ごとの内訳も載っていて、創薬支援は通期で売上22億5,000万円・営業損益ゼロ、投資・コンサルティングは営業利益4億8,000万円と置かれています。据え置いた理由として会社が書いているのは、第2四半期以降の需要動向と事業環境の変化を慎重に見極めるため、の一文です。

私はどう読んだか

見方は二つあります。一つは、年の何か月分かの利益が5月に固まって入ったので、残りは薄くて当然だというもの。もう一つは、予想が控えめで残りの9か月も普通に稼ぐという見方です。

私は前者だと考えています。理由は、前受金と前渡金と電子記録債権の動きが、一つの大きな納品が通り過ぎた跡の形をしているからです。同じ形の案件が続くかどうかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。会社が据え置いたのは、そこを自分でも決めきれていないからだと受け取っています。

一方で、創薬支援の原価率と販管費の減り方は、3か月で消える種類のものではありません。研究所を閉じて費用を落とす話は、次の四半期にも残ります。それでも私は心配性なので、短期借入金の行を頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260723598045.pdf

短期借入金を6億4,000万円増やした先が何だったのかは、キャッシュ・フロー計算書の無い今回の短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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