日東製網(3524)2027年4月期 第1四半期決算分析――営業外が増益を消したのが気になる

日東製網(3524)2027年4月期 第1四半期決算分析――営業外が増益を消したのが気になる 決算を読む

日東製網は、漁網を作っている会社です。糸を結び目なしで編み上げる「無結節網」を得意にしていて、この方式の網では国内でいちばん大きい作り手です。

その網を誰が買うのか。定置網や旋網を使う漁業者です。定置網は沿岸に網を張って回遊する魚を待つ漁法、旋網は船で群れを囲い込む漁法です。どちらも漁業者にとっては数年に一度の大きな買い物です。巻き上げ機のような漁労機器も扱っています。

陸の上にも売り先があります。畑の防虫網、鹿や猪を畑から遠ざける獣害防止ネット、その施工工事です。農家と自治体が客になります。本社は広島県の福山で、短信に載っている電話番号の市外局番が、それを教えてくれます。

この決算で何が起きたか

2026年9月11日に出た第1四半期の短信です。5月から7月までの3か月分です。

項目今回前年同期増減率
売上高51億5,900万円50億3,600万円+2.5%
営業利益1億9,500万円1億2,900万円+51.1%
経常利益1億3,700万円1億5,800万円−13.4%
純利益4,000万円6,300万円−35.9%

上から下へ目を下ろすと、経常利益で符号が変わります。この段差が何なのかを探しに、先へ進みました。

売上原価が、5万円しか動いていません

損益計算書で最初に引っかかったのは、売上原価です。前年同期が40億6,592万円、今回が40億6,597万円。売上が1億2,300万円増えたのに、原価はほとんど据え置きです。

会社は4ページ目で「価格適正化の取り組みが段階的に浸透」と書いています。原価が動かずに売上だけ増えるのは、値上げが通ったときの形そのものです。粗利は1億2,350万円増えました。販管費の増加は5,724万円です。差し引きは6,626万円で、営業利益の増加とぴったり合います。ここまでは損益計算書の数字です。

営業外で、増えた分が消えました

営業外の項目前年同期今回
持分法による投資損益利益 1,754万円損失 4,162万円
支払利息4,256万円6,417万円
為替差損益差益 1,360万円差損 1,632万円
受取損害賠償金2,115万円
保証債務費用戻入額2,246万円
営業外収益の合計8,808万円7,316万円
営業外費用の合計5,949万円1億3,206万円

営業外費用が、前年の2倍を超えました。いちばん大きいのは持分法による投資損失で、前年の利益から損失へ、5,900万円の振れです。

次が支払利息です。「市場金利の上昇に伴い」と会社側は説明しています。借入金は短期と長期を足して179億4,300万円あり、総資産328億2,700万円の半分を超えています。これは私の足し算です。金利が上がった状態が続けば、利息は四半期ごとに乗ってきます。

受取損害賠償金と保証債務費用戻入額は、どちらも一度きりの性格の科目です。来年の同じ表に並ぶとは考えていません。

陸上関連の利益が、5分の1になりました

漁業関連事業のセグメント利益は7,076万円から1億8,454万円へ増えました。陸上関連事業は5,897万円から1,134万円へ減っています。減った理由として短信は、大型案件の減少と、経費が全般的に増えたことを挙げています。

漁業側が陸上側の落ち込みを吸収して、なお余った形です。その増益の中身は、あとで書く駆け込み需要の話につながります。

在庫と短期借入が、同じ向きに増えています

貸借対照表の項目4月末7月末
現金及び預金13億9,667万円16億4,842万円
受取手形及び売掛金77億6,681万円74億6,649万円
商品及び製品63億8,040万円67億9,074万円
原材料及び貯蔵品15億1,002万円17億8,587万円
電子記録債務19億9,315万円24億4,557万円
短期借入金115億6,359万円120億7,240万円

商品及び製品が3か月で4億1,000万円増え、原材料も2億7,500万円増えました。売掛金は3億円減っています。売って回収したお金が、次の製品と材料に姿を変えて、それでも足りずに短期借入金が5億800万円増えた、という順番です。

第1四半期はキャッシュ・フロー計算書を作成していない、と注記にあります。在庫が積み上がった理由も短信に説明は無く、秋冬の漁期に向けた仕込みかもしれません。……ただ、駆け込み需要を取り込んだと書いた四半期に製品在庫まで増えているのは、素直には並びにくい。

貸借対照表でもう一つ。建設仮勘定が6億913万円から2億3,538万円へ減っています。同じ期間に、建物及び構築物は3億1,200万円増えました。何かが完成して、資産に振り替わったのでしょう。減価償却費も2億4,594万円から2億7,896万円へ増え、この増加はこれから毎四半期続きます。

税金が、税引前利益の3分の2を持っていきました

純利益が4,000万円まで細った最後の理由は税金です。税引前利益1億3,704万円に対して、法人税等の合計は8,974万円でした。持分法の損失には税金の減りが付いてきませんから、損失が出た四半期に税負担が重く見えるのは不思議ではありません。

会社はどう説明しているか

4ページ目の説明文で、売上増の理由は「定置網部門や国内向けの旋網部門等で価格改定前の駆け込み需要を取り込んだ」と書かれています。利益増の理由は「価格適正化の取り組みが段階的に浸透」です。

この2つを続けて読むと、少し座りが悪く感じます。値上げ前に駆け込んだ受注なら、古い価格で受けた分が混ざるはずです。それでも粗利が増えているのは、それより前に通った値上げが効いているからだと受け取りました。駆け込みの分は次の四半期には無い、という留保は付けます。

もう一つ、漁業者の様子です。魚価は上がっているものの、燃料費と人件費で「具体的な投資決定については慎重な姿勢をとる漁業者も多くなってきて」いると、会社側は書いています。客が財布の紐を締め始めていると、自分の口で言っているわけです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目通期予想第1四半期進捗率残り9か月に必要な額残り9か月の前年比
売上高225億円51億5,900万円22.9%173億4,100万円+1.6%
営業利益5億円1億9,500万円39.0%3億500万円−28.3%
経常利益4億5,000万円1億3,700万円30.4%3億1,300万円−61.1%
純利益3億円4,000万円13.3%2億6,000万円−57.9%

進捗率と残りの額は、表紙の予想から私が引いた数字です。

6月12日に出した予想を、会社はこの短信で据え置きました。営業利益は3か月で4割まで来ていて、残り9か月は前年より3割近く少ない置き方です。駆け込みの反動を、自分で織り込んでいると受け取れます。

引っかかったのは経常利益の側です。通期予想の営業利益は5億円、経常利益は4億5,000万円です。引き算すると、営業外の差し引きは1年で5,000万円のマイナスと置かれています。第1四半期の営業外は、収益7,316万円に対して費用1億3,206万円でした。差し引き5,890万円のマイナスです。3か月で、1年分の枠を使い切っています。

残り9か月を同じ引き算で出します。残りの経常利益3億1,300万円に対して、営業利益は3億500万円です。引き算すると、営業外は800万円のプラスになります。つまり営業外が黒字にならないと届かない計算です。支払利息だけで、四半期に6,400万円出ている会社です。……これは合わない。持分法の損失が利益に戻るか、何かの営業外収益を見込んでいるのだと思いますが、それが何かは短信からは分かりません。

私はどう読んだか

営業利益の増加そのものは、本物だと考えています。理由は、原価が動かずに粗利が増えたという、本業の数字だからです。値上げは、3か月で消える種類のものではありません。

それでも私は、この決算を慎重なほうの見方で受け取っています。理由は、受注増を駆け込みだと会社側が自分で書いているからです。もう一つは、支払利息と持分法の損失が毎四半期乗ってくるのに、予想の置き方がそれと合っていないことです。

在庫と短期借入が同じ向きに増えて、それを確かめる計算書が無いことも、心配性の私には重く見えます。上がるかは知りません。ただ、営業利益+51.1%という見出しだけを持ち帰るのは、この短信の読み方としては半分です。

出典:決算短信(会社発表)

https://nittoseimo.co.jp/wp-content/uploads/2026/09/tanshin_20260911.pdf

持分法による投資損失4,162万円を出した関連会社がどこの何で、なぜ前年の利益から損失に転じたのかは、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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