はじめに
日本マイクロニクスは、プローブカードという検査用の器具を作っている会社です。半導体のチップは、ウエハーという円盤の上に何百個も並んだ状態で作られます。その一つひとつが正しく動くかを、切り出す前に電気を流して確かめる。そのとき、髪の毛より細い針を無数に立てて、チップの端子に同時に触れさせる板がプローブカードです。半導体を作る会社が、出荷前の検品のために買うものです。
つまりこの会社の売上は、半導体メーカーが「どれだけたくさん検査するか」で決まります。いま検査の量を押し上げているのが、生成AI向けのメモリ、HBMと呼ばれる高性能品です。会社自身も短信の中で、HBM需要の継続がメモリ向けプローブカードを押し上げたと書いています。
その中間決算が8月12日に出ました。1ページ目は文句のつけようがない数字です。ただ、最後まで読むと、1ページ目には出てこない大きな動きが1つありました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 49,206 | 33,120 | +48.6% |
| 営業利益 | 15,557 | 7,569 | +105.5% |
| 経常利益 | 16,260 | 7,394 | +119.9% |
| 純利益 | 11,461 | 4,774 | +140.0% |
(単位:百万円)
売上が5割増え、営業利益は倍になりました。営業利益率は22.9%から31.6%へ。売れた量だけでなく、売り物の中身が変わっています。
最初の表では分からなかったこと
純資産の増え方が、利益の増え方より大きい
引っかかったのはここです。総資産は前期末から39,776百万円増えて138,802百万円。4割増です。半年でです。
ところが、この半年の純利益は11,461百万円しかありません。資産の増加分の大半は、稼いだ現金ではない。5ページ目に内訳が書いてあります。投資有価証券が25,738百万円増えている。貸借対照表で見ると、10,658百万円だったものが36,397百万円になっています。3倍以上です。
そしてキャッシュ・フロー計算書を見ると、この半年で投資有価証券の取得による支出はゼロです。買い増していないのに、3倍になった。つまりこれは、もともと持っていた株や証券の値段が上がっただけです。裏付けとして、純資産の側では「その他有価証券評価差額金」が17,666百万円増えています。
だから包括利益は28,872百万円と、純利益の2倍以上になっている。1ページ目の注記に(561.7%)という異様な伸び率が印字されていたのは、これが理由でした。……持っているだけで純利益より大きい含み益が乗る。事業の話ではないが、規模としては無視できない。
経常と純利益の伸び率には、上乗せがある
営業利益+105.5%に対して、経常が+119.9%、純利益が+140.0%と、下に行くほど伸び率が上がっています。損益計算書を見ると理由が書いてあります。
- 為替差益 693百万円(前年同期は差損64百万円)
- 特別利益に補助金収入 1,000百万円
営業利益の伸びは本業ですが、そこから下の伸び率は、この2つで水増しされて見えています。来期も続く性質のものではありません。
TE事業は赤字が広がった
セグメントは2つです。稼ぎ頭のプローブカード事業は売上48,542百万円で5割増、セグメント利益は94.1%増の18,290百万円。一方、テストソケットなどのTE事業は売上664百万円で3割近い減収、損失は268百万円から785百万円へ広がりました。会社は「売上高が採算確保に必要な水準に届きませんでした」と書いています。率直な書き方だと思いますが、全社に対する規模は小さく、決算全体の色を変えるほどではありません。
現金の入り方は健全です
営業キャッシュ・フローは12,165百万円で、前年同期の2.7倍。売掛金が4,407百万円、棚卸資産が2,475百万円それぞれ増えて現金を食っていますが、売上が5割増えている局面での増加としては説明がつく範囲に見えます。利益だけ立って現金が来ない、というパターンではありません。ここは私が2015年以来いちばん先に見る場所で、今回は問題を見つけられませんでした。
会社はどう説明しているか
会社の説明はこうです。生成AIとデータセンター投資でHBMの需要が続き、主要メーカーが生産能力をHBMなど高付加価値品に優先配分した結果、汎用DRAMの需給も引き締まった。自社については、生産能力の増強とDRAM向け高付加価値品の構成比上昇で、売上と収益性の両方が上がった、と。
利益率が22.9%から31.6%へ動いた事実と、この説明は噛み合っています。私はこの部分はそのまま受け取りました。ただし、AI関連と従来用途(車載・産業機器・民生)の二極化が続いているとも会社は書いています。伸びているのは市場全体ではなく、その一部だということです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
今回、会社は通期予想を新たに開示し、配当予想を前期の95円から178円へ引き上げました。
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 103,800 | 47.4% |
| 営業利益 | 31,400 | 49.5% |
| 純利益 | 23,000 | 49.8% |
(単位:百万円)
中間時点でほぼ半分。予想と実績が整合しています。裏返すと、この予想は下期に上期と同じくらいの利益を、もう一度出す置き方です。残り6ヶ月の営業利益は前年比で8割近い増加が必要な計算ですが、上期が倍になった流れの延長線上にはあります。会社が配当を倍近くに引き上げたことも、下期を弱く見ていない証拠として読めます。
私はどう読んだか
私は良い決算のほうに寄せて読んでいます。理由は、営業利益の倍増が為替でも補助金でもなく、プローブカード事業そのものの利益率の変化で説明でき、営業キャッシュ・フローがそれについて来ているからです。
ただし、この会社の貸借対照表は、いま事業とは別の理由で膨らんでいます。総資産の増加39,776百万円のうち25,738百万円は投資有価証券の評価差額によるもので、この部分は事業の中身とは関係なく増えも減りもします。次の決算で純資産が減っていても、事業が悪くなったとは限らない。逆に増えていても、事業が良くなったとは限らない。この会社は当面、純資産の増減と本業の調子を分けて見る必要があります。読み違えかもしれませんが、そういう構造の貸借対照表になったと私は理解しました。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260812517771.pdf
投資有価証券36,397百万円の中身がどこの株なのかは、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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