ANAホールディングス(9202)2027年3月期 第1四半期決算分析――現金の中身が気になる

ANAホールディングス(9202)第1四半期決算分析――国際線貨物の収入は37.9%増、運んだ重さは1.2%増 日本株

ANAホールディングスは、飛行機で人と荷物を運ぶ会社です。私は実家の静岡へは新幹線で帰りますが、妻の実家が九州なので、年に一度は羽田から乗ります。出張で乗る人、連休に沖縄へ行く家族、成田に降りてくる海外からの旅行者。

人だけではありません。機体の床下には貨物が積まれていて、半導体の部品のような、軽くて高くて急ぐ荷物が海を渡ります。傘下には格安のピーチと貨物専門の航空会社があり、空港の免税店や他社の機内食の受託まで手がけています。

売上は2割増、営業利益は4割減

2026年7月29日に出た第1四半期決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高6,727億2,900万円5,487億100万円+22.6%
営業利益207億8,200万円367億8,600万円−43.5%
経常利益225億1,300万円359億1,900万円−37.3%
純利益194億1,100万円229億5,300万円−15.4%

売上が増えて利益が減る形は、燃料代が上がった年の航空会社によくあります。ただ、この短信は読み進めると、増収の中身と純利益の減りの浅さに、それぞれ別の理由が入っていました。

増収1,240億円のうち、579億円は前年に無かった会社の分

短信の5ページ目に、前年に連結子会社になったNCAの収入が加わった、と書いてあります。6ページ目の表では、NCAの貨物収入が504億円、その他収入が75億円で、前年同期の欄はどちらも「-」です。2025年7月1日からの実績なので、前年の4月から6月には一円も入っていません。

増収の1,240億2,800万円から、NCAの579億円を引きます。残りは約661億円です。増収の半分近くが、去年は数えていなかった会社を数えるようになった分ということになります。

残りの661億円は本物です。国際線の旅客収入は2,476億円で2割増え、利用率は85.1%まで上がっています。座席キロは4%しか増えていないのに、旅客キロは1割以上伸びています。同じ飛行機により多くの人が、より高い運賃で乗ったことになります。ここは文句のつけようがありません。

売上より速く、原価が増えた

損益計算書は12ページ目にあります。売上原価は5,901億1,000万円で、前年同期は4,569億1,500万円でした。増え幅は1,331億9,500万円です。売上の増え幅1,240億2,800万円を上回っています。売上総利益は917億8,600万円から826億1,900万円へ減りました。減り幅は91億6,700万円です。

会社は燃油費の増加と説明しています。ただ、NCAが加わればその分の原価も乗るので、燃油だけでいくら増えたのかは短信には書かれていません。

純利益の減りが浅いのは、税金と売却益

営業利益が4割減なのに、純利益は15%減で済んでいます。差を埋めたのは2つです。特別利益に投資有価証券売却益が20億5,100万円あります。もう一つは法人税等で、前年同期の122億7,500万円から47億8,100万円へ減りました。

法人税等を税金等調整前の利益で割ると、前年は34%、今年は19%です。ここまでは損益計算書の数字と、それを使った私の割り算です。この四半期の実力は営業利益で見るほうが近い、と考えています。

会社の言う「フリー・キャッシュ・フロー2,643億円」の中身

ここが一番引っかかった場所です。9ページ目に要約のキャッシュ・フロー計算書があります。営業活動の収入は892億3,500万円で、前年同期の944億100万円をやや下回りました。

投資活動は前年が477億5,300万円の支出だったのに、今年は1,750億6,700万円の収入です。会社はこの2つを足して、フリー・キャッシュ・フローは2,643億円の収入、と書いています。収入になった理由は、有価証券の償還です。短期で運用していたお金を現金に戻しただけです。……いや、それを本業で稼いだ現金と同じ袋に入れるのは違う。

設備投資は768億3,300万円で、前年同期の427億6,700万円から8割ほど増えています。営業活動の892億3,500万円から、この768億3,300万円を引きます。残りは約124億円です。飛行機を買いながら手元に残った現金は、この124億円であって、2,643億円ではありません。

同じ四半期に自己株式も1,015億6,400万円から1,517億4,100万円へ増えています。増えた分は約500億円です。飛行機と自社株を買いながら現金が期首から2,028億円増えたのは、そういう組み立てです。

会社は燃油費と書き、統合の費用には触れていない

4ページ目の説明文は短いです。国際線旅客と国際線貨物が好調で、NCAの収入が加わって増収になったが、燃油費の増加等で減益になった。それだけです。中東情勢への注視が必要、とも書いています。

ただ「等」の中身までは分かりません。たとえばNCAの分の原価や、減価償却費が387億7,600万円から445億9,000万円へ増えたことがどれだけ効いたのかは、短信の説明文からは読み取れません。

貨物には気になる一行がありました。6ページ目に、ANA Cargo、NCA、NCA Japanの3社を2027年4月1日に統合する予定とあります。貨物専用機の会社を買って1年で、営業から上屋の運営まで一つにするという話です。統合の費用がいつ、いくら乗るかは、短信には書かれていません。

通期の営業利益1,500億円に対して、出だしは前年より遅い

通期の営業利益予想は1,500億円で、前期比31.0%減のまま、4月30日から変えていません。第1四半期の207億8,200万円を1,500億円で割ります。約14%です。航空会社は夏休みのある第2四半期が稼ぎどきなので、3か月で4分の1という目安はそもそも当てはまりません。

それでも前年と並べると、今年の出だしが遅いことは分かります。

営業利益第1四半期通期進み具合
前年 実績367億8,600万円約2,174億円約17%
今年 会社予想207億8,200万円1,500億円約14%

約の付いた数字は、表紙の通期予想の増減率△31.0%から前年の通期を割り戻したものと、それを使った私の割り算です。

1,500億円から207億8,200万円を引きます。残り9か月で約1,292億円を積む必要があります。予想を動かさなかった理由は、短信には書かれていません。表紙に決算補足説明資料は「有」とあるので、そちらに燃油の前提があるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。

私はどう読んだか

需要が強いのか、費用が重いのか。この短信はどちらとも受け取れます。私は費用が重いほうだと考えています。理由は、国際線の利用率85.1%は前年から5.7ポイント上がっていて、ここから先の伸びしろは運賃を上げる以外に多くないからです。売り物はもうかなり売れていて、それでも原価が追い越してきた、と私は読みました。

もう一つ、包括利益がマイナス119億7,700万円だったことを頭の片隅に残しています。繰延ヘッジ損益が895億7,800万円から581億9,200万円へ減った影響です。燃油や為替の先の値段に備えて組んでいた取引の評価が下がったということで、これ自体は損益計算書には出ません。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260729/140120260729501430.pdf

法人税等が前年同期の4割ほどに減った理由は、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました