はじめに
SRAホールディングスは、独立系のシステム開発会社です。銀行や証券、製造業といったお客さんから注文を受けて、業務システムを設計し、作り、納めたあとの運用まで面倒を見ます。特定のメーカーの系列に属していないので、オープンソースの技術を組み合わせて作るのが得意です。
短信を読むと、事業は3つに分かれています。システムを作る「開発事業」、作ったものを動かし続ける「運用・構築事業」、そして機器やソフトを仕入れて売る「販売事業」。作る・回す・売る、の3本柱です。傘下にAITという販売の子会社を持っていて、今回の決算はこの子会社の話が主役の一つになります。
売上が2桁減った四半期です。ただ、1ページ目の表だけ見て「悪い決算」と受け取ると、たぶん読み違えます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,455 | 14,308 | -13.0% |
| 営業利益 | 1,725 | 1,848 | -6.7% |
| 経常利益 | 2,016 | 1,717 | +17.4% |
| 純利益 | 1,221 | 1,135 | +7.6% |
(単位:百万円)
売上は1割強の減収、営業利益も減っているのに、経常から下は増益。この形は、途中で何かが挟まっています。
最初の表では分からなかったこと
減収の正体は、前年の大型案件
4ページ目に理由がそのまま書いてあります。販売事業で、前年の同じ時期に27億円超の大型販売案件があり、その反動で今回の販売事業は3分の1以上減る形になった、と。一方で主力の開発事業は1割強伸びています。
| 事業 | 今回の売上 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 開発事業 | 6,331 | +11.2% |
| 運用・構築事業 | 1,625 | +2.4% |
| 販売事業 | 4,498 | -36.0% |
(単位:百万円)
減ったのは仕入れて売る事業で、伸びたのは自分で作る事業です。売上総利益率は22.5%から25.1%へ、営業利益率も12.9%から13.9%へ上がっています。売る量が減って、中身が濃くなった。減収の見た目より、ずっとまともな四半期です。
経常が2割近く増えた理由は、為替
ここが今回いちばん引っかかったところです。経常利益は前年同期比298百万円の増加ですが、7ページ目の損益計算書を見ると、当期に為替差益174百万円が営業外収益に入っていて、前年同期には逆に為替差損250百万円が営業外費用に立っていました。損が消えて益に変わった。この振れだけで、経常の増益はほぼ説明がついてしまいます。会社自身も4ページ目でそう書いています。
つまり、営業利益が減って経常が増えたのは、本業が後半で盛り返したからではありません。円の側の話です。純利益の増益も、この延長にあります。
補足情報の受注が、下を向いている
利益率の話だけで閉じられないのが、補足情報の受注状況です。
| 事業 | 受注高の前年同期比 | 受注残高の前年同期比 |
|---|---|---|
| 開発事業 | -2.0% | -1.4% |
| 運用・構築事業 | +2.1% | -4.8% |
| 販売事業 | -0.8% | -8.3% |
全社の受注残高は14,554百万円で、前年同期から5%ほど減っています。今回1割強伸びた開発事業も、新しく取ってきた注文は前年を下回っている。売った分だけ、先の在庫が薄くなっている形です。……この表、1ページ目からは想像がつかない。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
私はいつも添付資料のキャッシュ・フロー計算書まで読みに行くのですが、この会社の10ページ目には「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では作らない会社は珍しくないので、これ自体は責めるところではありません。
代わりに貸借対照表を見ると、4ページ目に会社の説明があります。売上債権の回収が進んで受取手形・売掛金等が1,944百万円減り、現金及び預金は629百万円増えて21,566百万円。前受金も799百万円増えています。売った分の現金は入ってきているようです。計算書が無いなりに、悪い形には見えませんでした。
後発事象に、自己株式の取得
同じ10ページ目に、7月17日の取締役会で自己株式取得を決めたとあります。上限960,000株・総額43億円、期間は来年3月まで。うち7月21日に300,000株を13.56億円で取得済みです。発行済株式が15,240,000株の会社ですから、上限まで行けば軽くない規模です。
会社はどう説明しているか
会社の説明は一貫していて、「販売事業の反動減で売上は落ちたが、利益率の高い開発事業と運用・構築事業を伸ばし、採算を重視した結果、利益率は改善した」というものです。
利益率の改善は、セグメント利益の数字でも裏が取れるので、そのまま受け取ります。一方で、経常の増益については会社自身が為替の話として書いているので、「増益」の字面だけを持ち帰らないほうがいい。そこは会社も隠していません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55,500 | 22.4% |
| 営業利益 | 8,600 | 20.1% |
| 経常利益 | 9,000 | 22.4% |
| 純利益 | 5,500 | 22.2% |
(単位:百万円。予想は期初のまま修正なし)
3ヶ月分の目安である4分の1に、どの段も少し届いていません。残り9ヶ月で見ると、営業利益は前年の同じ期間より7.5%多く稼ぐ必要があります(これは渡された計算をそのまま使っています)。届かない距離ではありませんが、受注残が減っている中でこの上積みを取りに行く、という順番になります。配当は年220円の予想で、配当性向は半分ほど。
私はどう読んだか
読み方は2つあると思います。反動減を除けば本業は伸びていて利益率も上がった、という読み方と、経常増益は為替で、先行きを示す受注残は減っている、という読み方。
私は後者に寄せて読んでいます。理由は、今回の増益の段が全部、為替という自分で制御できないものの上に載っているからです。営業利益は減っていて、進捗も目安に届いていない。利益率の改善は本物だと思いますが、それが受注の細りを埋め切れるかは、この短信だけでは判断がつきませんでした。読み違いかもしれません。次の四半期の受注の行を見れば分かることです。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260812518207.pdf
貸借対照表の長期貸付金7,826百万円に対して貸倒引当金が5,600百万円積まれている経緯は、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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