内外テックは、半導体を作る装置に組み込む部品を集めて、装置メーカーに届ける会社です。もう一つ、装置の組立や保守点検を丸ごと引き受ける受託製造の事業を宮城県で営んでいます。
部品の行き先は、データセンターに入るメモリや、先端のロジック半導体を作る工場です。生成AI向けの半導体の需要が伸びれば、装置の注文が増え、部品の注文が増える。この会社は、その流れの一番手前で商売をしています。
半導体装置の景気は波が大きく、前年の同じ時期は売上も利益も減っていました。今回は、その谷から出てきた四半期の短信です。8月7日に出て、同じ日に上期と通期の予想を引き上げ、配当予想も増やしました。
この決算で何が起きたか
売上が6割増え、営業利益は7倍を超えました。前年同期の営業利益が小さかったので、倍率だけ眺めると大げさに映ります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 115億3,600万円 | 72億1,200万円 | +59.9% |
| 営業利益 | 5億9,000万円 | 8,200万円 | +612.5% |
| 経常利益 | 5億9,700万円 | 8,300万円 | +612.9% |
| 純利益 | 3億6,300万円 | 4,600万円 | +673.4% |
営業利益率は1.1%から5.1%へ上がりました。売上総利益は6億2,700万円増え、販売費及び一般管理費の増え方は1億1,900万円で済んでいます。差の5億800万円が、営業利益の増えた分とほぼ一致します。増えた粗利が、そのまま利益に落ちた四半期です。
現金が16億円増え、この短信にキャッシュ・フロー計算書は無い
現金及び預金は、3月末の90億5,900万円から6月末の107億2,100万円へ増えました。増えた額は16億6,200万円です。3か月の純利益は3億6,300万円ですから、稼いだ分の4倍以上です。
どこから来たのか。いつもならキャッシュ・フロー計算書を開くところですが、この短信の8ページには「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では珍しくないので、貸借対照表の増減で追います。
会社の説明文(4ページ)から、大きい増減を拾いました。
| 3月末から6月末への増減 | 金額 |
|---|---|
| 現金及び預金 | +16億6,200万円 |
| 受取手形及び売掛金 | +5億5,600万円 |
| 商品及び製品 | +7億7,600万円 |
| 投資有価証券 | +5億9,500万円 |
| 支払手形及び買掛金 | +8億9,700万円 |
| 電子記録債務 | +19億5,500万円 |
仕入先に払う前のお金が28億5,200万円
買掛金は8億9,700万円増え、電子記録債務は19億5,500万円増えました。足すと28億5,200万円で、現金の増加16億6,200万円より大きい。仕入れた部品の代金のうち、6月末にまだ払っていない分がこれだけ膨らんだわけです。売上が6割増えれば仕入も未払いも増えます。商社としては当たり前の動きです。
引っかかったのは、増え方の内訳です。買掛金は2割半ほどの増加ですが、電子記録債務は32億2,100万円から51億7,600万円へ、6割増えています。電子記録債務は手形の電子版で、買掛金より支払いまでの期間が長いのが普通です。支払いの重心が、後ろへ動いています。……いや、取引先が増えただけかもしれない。
だから、増えた16億円を「稼いだ現金」とは受け取れません。仕入先へ払う前に手元にあるだけの部分が大半です。自己資本比率が50.9%から46.5%へ下がったのも、この未払いの分だけ負債が膨らんだからです。
在庫も、商品及び製品が14億600万円から21億8,300万円へ、5割以上増えました。半導体装置の部品は、需要が落ちると在庫調整で一気に動かなくなります。ただ次の節の受注残があるので、売り先の決まった在庫だと私は読みました。
受注高が売上を上回り、受注残は1四半期分に
補足情報(8ページ)の受注実績では、第1四半期の受注高は141億8,400万円でした。同じ期間の売上高115億3,600万円を26億4,800万円上回ります。売った以上に注文が入り、受注残が積み上がっています。
| 受注 | 販売事業 | 受託製造事業 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 3月末の受注残 | 90億2,500万円 | 2億7,600万円 | 93億100万円 |
| 第1四半期の受注高 | 126億8,700万円 | 14億9,700万円 | 141億8,400万円 |
| 6月末の受注残 | 115億6,100万円 | 3億8,700万円 | 119億4,900万円 |
6月末の受注残119億4,900万円は、この四半期の売上とほぼ同じ大きさです。次の3か月分の注文はすでに手元にあることになります。上期の予想を引き上げた根拠はこれだと考えています。逆に言えば、手元にあるのは1四半期分で、そのあとの半年はこれから入る注文の話です。
純資産を増やしたのは、利益より有価証券の評価
もう一つ、稼ぎとは別のところで純資産が増えています。純利益3億6,300万円は、6月に払った配当3億6,700万円とほぼ同じです。利益剰余金は400万円ほど減りました。
それでも純資産は4億400万円増えました。理由は、その他有価証券評価差額金が4億700万円増えたからです。投資有価証券の増加5億9,500万円も、大半は買い増しではなく評価が上がった分だと受け取りました。包括利益7億7,200万円の半分以上がこれです。本業とは関係のない増え方なので、頭の中では別の箱に入れています。
会社はどう説明しているか
会社の言葉では、売上が増えたのは「取引先の在庫調整が一巡し、受注が拡大した」ことによります。生成AIの需要でメモリや先端ロジックへの投資が続き、国内では国産化の政策支援がある、と4ページにあります。ここは市場全体の話です。
5月に仙台第二工場を新設して生産エリアを2倍にし、宮城物流センターを移して1.5倍に広げました。8月1日付で、半導体製造工程の設備の保守メンテナンスを手掛ける株式会社OMTの株式も取得しています。受託製造のうち保守の部分を厚くする方向です。取得の金額と業績への影響は、決算短信には書かれていません。
説明はそのまま受け取ります。理由は、受注の数字が説明と食い違っていないからです。ただ、電子記録債務が6割増えたことには、決算短信の説明文は触れていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
引き上げた後の通期予想は、売上高509億円、営業利益25億6,000万円です。第1四半期の進み具合は売上が22.7%、営業利益が23.0%で、4分の1には少し足りません。これは私の割り算です。
引き上げた上期の予想を分解すると、会社の置き方が分かります。上期の売上は245億円です。そこから第1四半期の115億3,600万円を引くと、7月から9月は129億6,400万円になります。営業利益は上期予想が11億8,500万円です。第1四半期の5億9,000万円を引くと5億9,500万円で、第1四半期とほぼ横並びです。
| 売上高 | 営業利益 | |
|---|---|---|
| 第1四半期 実績 | 115億3,600万円 | 5億9,000万円 |
| 7〜9月 会社予想 | 約129億6,400万円 | 約5億9,500万円 |
| 上期 会社予想 | 245億円 | 11億8,500万円 |
| 通期 会社予想 | 509億円 | 25億6,000万円 |
約の付いた数字は、上期予想から第1四半期実績を私が引いたものです。
売上は増えるが利益は増えない、という置き方です。何か費用の増加を見込んでいるはずで、新しい工場と物流センターの分かもしれません。修正前の予想は、決算短信には載っていません。同日に出た「業績予想の修正および配当予想の修正に関するお知らせ」は、私は読んでいません。
通期予想から第1四半期の実績を引くと、残り9か月に必要なのは売上393億6,400万円と営業利益19億7,000万円です。前年の同じ9か月より、売上で55%、営業利益で5割ほど多い数字です。配当予想は105円から144円へ引き上げられました。1株利益の予想479円71銭に対して3割ほどです。
私はどう読んだか
良い決算だと思っています。それでも、読み方は2つあります。増えた現金と受注残を回復の入口と受け取るか、仕入の未払いと在庫の積み上がりを、谷が来たときに重くなる荷物と受け取るか。私は前者の見方をしています。理由は、受注残がそのまま次の四半期を埋める大きさだからです。売り先の決まった在庫と仕入なら、支払いは売上で回ります。
ただ、現金が16億円増えたという数字だけを持ち帰るのはやめました。稼いだ現金がいくらだったかは、中間期のキャッシュ・フロー計算書が出るまで分からない。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806511943.pdf
電子記録債務が6割増えた理由――支払条件を変えたのか、取引先が増えただけなのか――は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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