セイコーグループ(8050)第1四半期決算分析――営業利益88.8%増の裏で、ドルの換算レートが15円動いていた

セイコーグループ(8050)第1四半期決算分析――営業利益88.8%増の裏で、ドルの換算レートが15円動いていた 決算を読む

はじめに

セイコーグループは腕時計の会社です。グランドセイコーやプロスペックスといったブランドの時計を作って、国内の店頭でも海外でも売っています。銀座の和光もこのグループです。ただ、時計だけの会社ではありません。時計の心臓部にあたるムーブメントを作ってきた技術の延長で、水晶発振器やICといった電子部品を作っていて、これはAIサーバやデータセンタ、光通信の機器の中に入ります。時計を買う人と、データセンタを建てる会社。客層のまったく違う2つの商売が、同じ短信の中に並んでいる会社です。ほかに、外食チェーンの注文システムのようなITの事業もあります。

8月7日に出た2027年3月期の第1四半期決算を読みました。1ページ目は文句のつけようがない数字です。ただ、4ページ目に小さな表があって、そこで少し立ち止まりました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高99,08977,114+28.5%
営業利益15,4408,176+88.8%
経常利益16,4918,488+94.3%
純利益11,1976,352+76.3%

(単位:百万円)

売上が3割近く増えて、営業利益はほぼ倍。同じ日に、通期予想の上方修正と増配の発表も出ています。第1四半期としては、これ以上を望みにくい形です。

最初の表では分からなかったこと

換算レートの表

4ページ目の会社の説明文の中に、換算レートの表が印字されています。今回の平均レートは1米ドル159.6円。前年同期は144.6円でした。ドルで15円、円安に振れています。ユーロも163.8円から185.4円へ。

そして同じページに、海外売上高割合は50.0%とあります。売上の半分が海外です。海外の売上を円に直すとき、去年より15円高いレートで直している。つまり、+28.5%という増収率のいくらかは、商売の実力ではなく換算の結果です。いくらかが具体的にいくらなのかは、短信には書かれていません。

前年に561百万円の特別利益があった

10ページ目の損益計算書を見ると、前年同期には固定資産売却益561百万円が特別利益に立っていました。今回はゼロです。純利益の+76.3%は、この一時的な利益を跨いでの数字なので、見た目より中身は良い、ということになります。ここは今回に有利な話です。

逆に営業外では、持分法による投資利益が185百万円から770百万円へ増えています。経常利益の増加率が営業利益の増加率より高いのは、主にこれです。持分法の利益は相手先の業績次第なので、続くかどうかは分かりません。

増えた利益72億円のうち、62億円は時計側

セグメント情報を13ページまで読むと、営業利益の増加72億円のうち、時計と和光を含むEVS事業が62億円を占めています。AIサーバ向けの水晶発振器が伸びたというDS事業も利益は倍増していますが、金額では23億円で、増加分は12億円。話題性はDS、金額はEVSです。この会社の利益は、今のところ時計が稼いでいます。

現金は増えたが、短期借入金はもっと増えた

第1四半期なのでキャッシュ・フロー計算書は作成されていません(12ページの注記にそう書いてあります)。私が普段見に行くページが、今回はありませんでした。

代わりに貸借対照表を見ると、5ページ目の会社の説明にもあるとおり、現金及び預金は49億円増えています。ただ、短期借入金は93億円増えています。……現金が増えたというより、借りて厚くした、と読むほうが素直かもしれない。売掛金も60億円増えていて、売上が急に伸びた四半期の運転資金は膨らみます。異常ではありませんが、次の四半期も借入金の行は見ておきます。

会社はどう説明しているか

会社の説明は率直です。国内は内需もインバウンドも好調、海外も米州・欧州・アジアで伸びた。広告宣伝販促費と人件費は増えたが、それを増収が吸収した。DS事業は医療向けの小型電池と、AIサーバやデータセンタ向けの水晶発振器用ICが伸びた。SS事業は41四半期連続の増収増益──10年以上、四半期単位で崩れていないということです。

このうち時計が売れているという説明は、そのまま受け取っていいと思います。ただし、為替の追い風が乗った上での数字だという留保は付けます。会社自身も換算レートの表をわざわざ説明文の中に置いているので、隠しているわけではありません。1ページ目には出てこない、というだけです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

同じ日に通期予想が修正されました。営業利益は335億円から410億円へ、2割強の引き上げです。配当も年間90円の予想から105円へ増額されています。

項目通期予想進捗率
売上高375,00026.4%
営業利益41,00037.7%
純利益28,00040.0%

(単位:百万円。この時期の目安は25%)

引き上げた後の予想に対して、営業利益はすでに4割近く。渡された計算では、残り9ヶ月に必要な経常利益は前年同期比で+1.5%しかありません。第1四半期に94.3%増だったものを、残りはほぼ横ばいで置いている。上方修正した直後の予想としては、ずいぶん腰の低い置き方です。為替の追い風が続く前提を取っていないのか、別の心配があるのか、短信の文章からは読み取れませんでした。

私はどう読んだか

読み方は2つあります。為替で膨らんだ決算と見るか、実力の増益に為替が上乗せされた決算と見るか。私は後者に寄せて読んでいます。理由は、前年の特別利益を跨いでなお純利益が大きく増えていることと、時計・電子部品・ITの全部が増収で、どこか1つの偶然に頼った形ではないことです。読み違えかもしれません。それでも、ドル159.6円という換算レートは、この決算のいちばん下に敷いてある数字だと思います。ここが動けば、上の数字は全部動きます。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806513129.pdf

営業利益の増加72億円のうち、為替の押し上げがいくらだったのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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