はじめに
栄電子は、電子部品の商社です。自分で部品を作るのではなく、部品メーカーと、部品を使う会社の間に立つ仕事です。主力は半導体製造装置向け。半導体を作る装置の中には大量の電子部品が入っていて、装置メーカーは一つひとつを部品メーカーから直接集めるのではなく、こういう商社を通して調達します。秋葉原に本拠を置く独立系で、最近は台湾に現地法人を立ち上げています。
半導体製造装置の市況がそのまま業績に流れ込んでくる会社です。装置が売れれば部品が動き、装置が止まれば部品も止まる。今回の短信は、その市況が戻ってきた側の決算でした。8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期です。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,781 | 1,754 | +58.6% |
| 営業利益 | 139 | 17 | +705.0% |
| 経常利益 | 154 | 29 | +431.7% |
| 純利益 | 98 | 18 | +442.7% |
(単位:百万円)
売上が6割近く増えて、営業利益は前年の8倍です。営業利益率でいうと、前年同期の1.0%が今回5.0%まで上がっています。量が増えただけなら利益率は動きません。売るものの中身が変わったか、固定費の上に増収が乗ったか、どちらかです。同じ日に、会社は中間期と通期の業績予想も上方修正しています。
1ページ目だけ見れば、文句のない決算です。
最初の表では分からなかったこと
キャッシュ・フロー計算書が、無い
私はいつも添付資料のキャッシュ・フロー計算書まで読みます。今回もページをめくっていって、9ページ目でこの一文に当たりました。
当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません。
第1四半期のCF計算書は作成が任意なので、無いこと自体はルール違反でも何でもありません。ただ、この四半期に限っては、いちばん見たいものが無かった。理由は次の節です。
売った分の現金が、まだ入ってきていない
貸借対照表を見ます。会社自身が4ページ目で内訳を書いてくれています。3ヶ月でこう動きました。
| 項目 | 前期末から今回への動き |
|---|---|
| 売掛金 | 364百万円の増加 |
| 商品 | 198百万円の増加 |
| 現金及び預金 | 111百万円の減少 |
売上が6割近く増えた四半期に、売掛金と在庫が積み上がって、手元の現金は減っています。売った分がまだ回収されておらず、次に売る分の仕入れも先に出ている、という形です。
……売上が急に増えれば、売掛金と在庫が先に膨らむのは商社なら当たり前ではある。支払手形及び買掛金も225百万円、電子記録債務も160百万円増えているので、仕入れ側の支払いも同じように後ろへ延びています。回収と支払いの時間差の話で片付く可能性は十分あります。
ただ、それを確かめる書類が、今回は付いていない。営業キャッシュ・フローがどうだったのかは、この短信からは分かりません。
純資産の増え方は、本業の増え方ではない
純資産は3ヶ月で375百万円増えました。景気のいい数字ですが、6ページ目の内訳を見ると、増加の大半はその他有価証券評価差額金の332百万円です。持っている株の値打ちが上がった分で、資産の部でも投資有価証券が485百万円増えています。本業の利益から積み上がった利益剰余金の増加は42百万円。自己資本比率はむしろ65.5%から62.4%へ下がっています。純資産の増加を、稼ぐ力が付いた話として読むと間違えます。
記念配当が2円入っている
1ページ目の配当の注記に、小さく書いてあります。今期の期末配当予想13円には、第60期の記念配当2円が含まれています。前期の11円から見れば増配です。ただ、そのうち2円は今期限りの上乗せです。
会社はどう説明しているか
会社は4ページ目で、生成AI関連の需要が引き続き堅調だったことと、顧客の在庫調整が進んで需要が回復基調になったことを挙げています。加えて、台湾現地法人の本格稼働と、高付加価値商材の販売比率を上げる取り組みを書いています。
利益率が1.0%から5.0%へ上がった説明として、高付加価値商材の比率向上というのは筋が通ります。市況の回復だけなら売上は増えても率はここまで動きにくい。ここは会社の説明を受け取ってよいと思っています。ただし、どの商材がどれだけ寄与したのかの内訳は、単一セグメントの会社なので短信には出てきません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,071 | 27.6% |
| 営業利益 | 333 | 41.7% |
| 純利益 | 203 | 48.3% |
(単位:百万円。予想は8月7日に上方修正されたあとの数字です)
営業利益は3ヶ月で4割強、純利益にいたっては半分近くまで来ています。上方修正した直後の予想に対してこの進み方です。機械が引き算した数字で断っておくと、残り9ヶ月に会社が見込む純利益は105百万円で、これは前年の同じ9ヶ月からほぼ横ばいの置き方です。第1四半期の勢いが続かない前提で予想が組まれている、と読めます。慎重に置いたのか、下期に費用を見込んでいるのかは、短信には書かれていませんでした。
私はどう読んだか
回復は本物のほう、つまり利益率の改善は商材の中身が変わった結果だという読みに寄せています。理由は、売上の増え方に対して販管費の増え方が緩やかで、増収が素直に利益に落ちる形になっているからです。
そのうえで、留保を1つ。現金の動きだけは、この短信では確かめようがありませんでした。売掛金と在庫の膨張が回収の時間差で解消するのか、次の四半期の貸借対照表で確認するつもりです。私の読み違いかもしれませんが、確かめる書類が無い以上、ここは保留のまま持っておきます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807515828.pdf
現金及び預金が減った111百万円が、営業・投資・財務のどこで出ていったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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