ニコン(7731)2027年3月期 中間決算分析――黒字の中身に引っかかりました

ニコン(7731)2027年3月期 中間決算分析――黒字の中身に引っかかりました 日本株

はじめに

カメラの会社として覚えている人が多いと思います。レンズ交換式のカメラと交換レンズは今でも大きな柱です。

ただ、中身はそれだけではありません。半導体やディスプレイの工場に露光装置を売り、研究室には顕微鏡、眼科には目の奥を撮る検査機器を納めています。金属の粉を溶かして部品を作る3Dプリンターもあって、こちらの買い手は防衛と宇宙です。

写真を撮る人に売る商売と、工場や研究室に売る商売が、同じ会社の中に並んでいます。儲かり方も、景気の波が来る時期も違います。

営業損益が、半年で赤字から黒字へ

11月5日に出た中間決算です。IFRS基準なので経常利益の区分はありません。代わりに税引前利益を並べます。

今回(上期)前年同期増減率
売上収益3,346億5,800万円3,129億1,500万円+6.9%
営業利益89億400万円△48億2,900万円—
税引前利益126億8,500万円△52億6,500万円—
親会社帰属の中間利益106億5,800万円53億5,600万円+99.0%

表紙を見るかぎり、文句のつけようがない半年です。

短信の説明の欄に、黒字の理由が書かれていない

添付資料の2ページ目の「当中間決算に関する定性的情報」は、普通ならなぜそうなったのかの説明文が並ぶ欄です。ニコンのこの欄は案内だけで終わっています。10月30日に出した業績予想の修正のお知らせと、同じ日の説明会資料を見てほしい、と書いてあります。

営業損益がなぜ反転したのかは、短信の中には書かれていません。

説明会資料を開くと、理由の一つに米国関税の還付が挙がっていました。上期で64億円です。上期の営業利益89億400万円で割ると、7割強になります。

還付は映像事業とヘルスケア事業の両方に効いています。ヘルスケアには、英国で作っているアイケア製品が米国の追加関税の適用除外になった、と注が付いています。カメラ側の還付がどういう扱いで戻ってきたのかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

+99.0%という伸びは、前年の税金が作ったもの

最終利益が倍になった、という数字がいちばん目を引きます。ただ、損益計算書(短信7ページ目)では前年同期の税引前利益が52億6,500万円の赤字でした。それなのに最終利益は53億5,600万円の黒字です。……いや、これは比べる相手が歪んでいる。

からくりは法人所得税費用の行で、前年同期はここが106億4,700万円のプラスでした。税金が利益を押し上げていたわけです。今期は逆に20億1,400万円のマイナス。前年に海外子会社の解散と清算を決めたことによる減税効果の反動だ、と説明会資料に書かれています。

だから見るべきは+99.0%ではなく、税引前利益の行です。52億6,500万円の赤字から126億8,500万円の黒字へ変わりました。差は179億5,000万円です。こちらが実際の振れ幅です。

在庫が243億円増え、前受金も69億円増えた

営業活動によるキャッシュ・フローは138億6,800万円の収入です。前年同期は54億1,600万円の支出でしたから、ここも反転しました。ただ同じ計算書で、棚卸資産が281億4,300万円の増加として引かれています。貸借対照表でも、半年で243億7,300万円増えました。

投資活動は257億400万円の支出です。内訳は建物や機械に164億8,400万円、無形資産に104億2,600万円です。この支出を営業の138億6,800万円から引くと、118億3,600万円のマイナスです。

現金は122億300万円減って1,458億3,200万円。短期の借入を234億9,100万円返して、長期で495億2,000万円借りています。借金の期限を先に延ばした半年です。

在庫の増え方そのものは、売れ残りではないと私は読みました。理由は、同じ貸借対照表で前受金が69億3,800万円増えているからです。露光装置のように納めるまで時間のかかる機械は、注文と前金を受けてから作ります。

カメラの台数が、1年で4分の1減った

セグメントの表(短信13ページ目)を前年と並べると、5つの事業のうち映像事業だけが利益を落としています。セグメント利益は154億2,900万円から82億5,200万円へ、ほぼ半分です。

台数は説明会資料にあります。レンズ交換式デジタルカメラが48万台から36万台、交換レンズが67万本から53万本。4分の1減ったのに、売上の減りは1割で止まっています。差を埋めたのは円安と、1台あたりの金額の上昇だと考えています。

会社は中国での需要減退を理由に挙げ、通期のカメラ市場の規模見通しそのものを引き下げました(説明会資料)。下期の販売計画を下げて、通期の売上予想を100億円下方修正しています。

会社が並べた理由と、私が留保したところ

黒字の理由として会社が挙げているのは、増収、為替、金属3Dプリンター事業での無形資産の償却費の減少、前期の構造改革の効果、そして米国関税の還付です。精機事業では、装置の保守や部品のサービス売上の上振れ、棚卸資産の評価損の戻入れの前倒しも挙げています。

精機事業の外部顧客への売上が698億8,600万円から906億3,500万円へ伸びたことは短信のセグメントの表で確かめられるので、ここは疑っていません。

留保するのは関税の還付と、評価損の戻入れ、それに経費の繰延です。「経費の削減・繰延」と会社自身が書いている以上、繰り延べたぶんは下期に出てきます。

下期は、売上が増えて利益が減る見込み

表紙には「業績予想の修正の有無:無」とありますが、これは10月30日に別で修正を出しているからです。

上期実績通期予想残り半年
売上収益3,346億5,800万円7,220億円約3,873億円
営業利益89億400万円165億円約76億円
親会社帰属の利益106億5,800万円160億円約53億円

※「約」の数字は、通期予想から上期実績を引いた私の計算です。

進捗率は売上が約46%です。営業利益は約54%、親会社帰属の利益は約67%。半分の時点としては、利益のほうが先に進んでいます。

引っかかるのは残り半年の形です。売上は上期より増えるのに、営業利益も最終利益も減ります。繰り延べた経費と、メモリーなど部材の価格の高さが下期に乗ってくるからだと考えています。

配当は中間10円、年間の予想が20円です。前期は年間40円で、しかも通期で最終赤字でした(説明会資料)。赤字の年に40円払い、黒字予想の年に20円へ減らしたことになります。理由は、短信にも説明会資料にも書かれていません。

私はどう読んだか

黒字転換そのものは受け取ります。ただ、この89億400万円を来期以降も続く利益としては受け取っていません。理由は、64億円の関税の還付です。どういう経緯で戻ってきたのか、いつまで戻ってくるのかが、短信からも説明会資料からも分かりません。

在庫の積み上がりは、悪い材料だとは考えていません。前受金が増えているので、注文を受けて作っている途中のものが多いはずです。

気になっているのはカメラです。台数が1年で4分の1減り、会社は市場の規模見通しまで下げました。露光装置と金属3Dプリンターが伸びた半年に、看板の事業が縮んでいます。心配性なので、下期はこの関税とカメラの2つを先に見ます。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.jp.nikon.com/content/dam/web-assets/nikoncom/company/local/jp/ja/ir/ir_library/result/pdf/2027/27_2qf_c_j.pdf

棚卸資産が243億7,300万円増えた中身が、どの事業のどの段階のものなのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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