はじめに
トヨタ自動車は、自動車を作って世界中で売っている会社です。家族で乗るミニバン、通勤に使うセダン、荷物を運ぶバン、現場や配送で使うトラック。街で走っている車のうち、かなりの割合がこの会社のものです。傘下にダイハツがあり、ほかの自動車メーカーとも提携しています。
もう一つ、押さえておきたい商売があります。車を売るための金融です。車を現金で一括で買う人ばかりではありません。ローンを組む人、リースで借りる人がいます。その貸付をして金利を受け取る会社が、トヨタの中にあります。だからこの決算書には、工場を回して車を作る商売と、お金を貸す商売が、同じ表の中に並んで入っています。
11月5日に出た、4月から9月までの半年
2026年11月5日に、2027年3月期の中間決算が出ました。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 26兆9,624億6,200万円 | 24兆6,307億5,300万円 | +9.5% |
| 営業利益 | 2兆1,911億2,400万円 | 2兆56億9,200万円 | +9.2% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益(親会社の所有者に帰属) | 2兆2,364億4,600万円 | 1兆7,734億2,600万円 | +26.1% |
営業収益と営業利益は、どちらも1割弱増えました。純利益だけが26.1%増えています。IFRSで決算を作っている会社なので、経常利益という段はありません。
増益1,854億円に対して、為替が6,850億円
短信の4ページ目に、会社が営業利益の増減要因を自分で5行に分けて書いています。今回いちばん引っかかったのは、ここでした。
| 増減要因 | 金額 |
|---|---|
| 営業面の努力 | 1,650億円 |
| 為替変動の影響 | 6,850億円 |
| 原価改善の努力 | △3,400億円 |
| 諸経費の増減・低減努力 | △200億円 |
| その他 | △3,046億円 |
| 合計(増益額) | 1,854億円 |
為替変動の影響だけで6,850億円、営業面の努力が1,650億円。上向きの2行で8,500億円の上積みがあったことになります。それが1,854億円まで縮んだのは、下向きの3行が並んでいるからです。
……いや、原価改善の「努力」がマイナス3,400億円というのは変だ。
名前のとおりに読めば、原価を改善する努力が利益を3,400億円押し下げたことになります。なぜマイナスなのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに説明があるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。
利益の厚みも見ておきます。営業利益率は8.1%で、前年同期と同じ数字です。連結の販売台数は475万8千台で0.5%減りました。日本国内は102万4千台で5.6%増えた一方、海外が373万4千台で2.1%減っています。売る量は増えておらず、1台から取る利益の厚みも変わっていません。
純利益の伸びは、営業利益の下の段で付いた
営業利益が+9.2%、純利益が+26.1%。この差はどこで付いたのか。損益計算書(9ページ目)を見ると、営業利益のすぐ下に、大きく振れた行が並んでいました。
| 項目 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 持分法による投資損益 | 3,583億6,200万円 | 2,726億2,400万円 |
| その他の金融収益 | 1兆78億6,100万円 | 2,927億4,600万円 |
| その他の金融費用 | △4,924億5,700万円 | △250億1,000万円 |
| 為替差損益(純額) | △1,453億8,400万円 | △527億8,700万円 |
その他の金融収益が7,151億円ふくらんでいます。1兆78億6,100万円から2,927億4,600万円を引いた、私の引き算です。営業利益の増益1,854億円より、はるかに大きい額が、営業利益の下で動いていたわけです。
手がかりは注記にありました。15ページ目に書いてあります。日野自動車が連結の子会社から外れ、支配を失ったことで954億4,500万円の損失を「その他の金融費用」に計上した、とあります。同じ節に、保有していた豊田自動織機の株式の売却が完了した、とも書いてあります。ただし、その売却でいくらの収益を計上したのかは、決算短信には書かれていません。
税引前中間利益は+19.2%です。純利益の26.1%増は、車を作って売る商売が1年で26%強くなったという話ではありません。
1年で10億株減った、分母のほう
1株当たりの中間利益は、136円07銭から185円97銭へ増えました。利益の伸びが26.1%ですから、1株当たりの伸びのほうが大きい。分母が減っているからです。
| 項目 | 今回 | 前年同期・前期末 |
|---|---|---|
| 期中平均株式数 | 120億2,579万株 | 130億3,316万株 |
| 発行済株式数(期末) | 145億9,498万株 | 157億9,498万株 |
| 自己株式の取得額(半年) | 3兆8,518億9,000万円 | 399億5,900万円 |
半年で自己株式の取得に3兆8,518億9,000万円を使っています。前年同期は399億5,900万円でした。現金及び現金同等物は12兆6,596億2,200万円から9兆4,844億8,400万円へ減りました。減少率は25.1%です。さらに11月5日の取締役会で、12億株を消却する決議も出ています(16ページ目の後発事象)。
営業活動によるキャッシュ・フローも、2兆9,446億900万円から1兆6,039億2,400万円へ減っています。内訳を追うと、法人所得税の支払額が5,980億3,500万円から1兆1,349億5,900万円へ増えていました。「資産及び負債の増減ほか」も△2,322億5,500万円から△1兆6,125億5,300万円へ振れています。後者の中身は、決算短信には書かれていません。
会社の説明は素直で、短い
営業利益が増えた理由を、会社は「為替変動の影響など」と書いています。自動車事業も、所在地別の日本も、同じ言葉です。北米は前年同期の営業損失678億円から1,661億円の営業利益へ転じていて、こちらの理由は「諸経費の減少・低減努力など」。アジアは減益で、理由は「諸経費の増加など」と書いています。
増減要因の5行と突き合わせると、説明は食い違っていません。為替で6,850億円という大きさを「など」で隠さず先頭に置いているので、そこは信用します。ただ、原価改善の努力が下向きである理由が短信に無いので、増益の中身は自分で確かめきれていません。
下期に落ちると見込んでいるのは、営業利益の外側
通期予想は修正されています。表紙の修正の有無が「有」です。中身を並べます。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 53兆5,000億円 | +5.6% |
| 営業利益 | 3兆9,000億円 | +3.6% |
| 税引前利益 | 4兆9,600億円 | △3.7% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 3兆5,700億円 | △7.2% |
中間期が+26.1%で、通期は減益の予想です。
前期と並べます。
| 中間期 | 下期 | 通期 | |
|---|---|---|---|
| 営業利益・前期実績 | 2兆56億円 | 約1兆7,606億円 | 3兆7,662億円 |
| 営業利益・今期 | 2兆1,911億円 | 約1兆7,089億円 | 3兆9,000億円(会社予想) |
| 純利益・前期実績 | 1兆7,734億円 | 約2兆746億円 | 3兆8,480億円 |
| 純利益・今期 | 2兆2,364億円 | 約1兆3,336億円 | 3兆5,700億円(会社予想) |
約の付いた数字は、通期から中間期を引いた私の引き算です。前期の通期と中間期の金額は、短信の補足資料に載っているものです。
純利益で見ると、前期の下期に2兆746億円を稼いだところを、今期は1兆3,336億円と見込んでいることになります。一方で営業利益の下期は約1兆7,089億円、前期下期の約1兆7,606億円とほぼ同じ水準です。落ちると見込んでいるのは、営業利益の下の段だと分かります。
為替の前提も見ておきます。通期予想は1米ドル157円、1ユーロ182円を見込んでいます。中間期の実績は159円と184円でした。下期は少し円高に振れる前提です。
私はどう読んだか
私は、この半年を「本業の稼ぐ力は前年と同じまま、為替と営業外の収益と株数の減少で、1株当たりの数字が良く見えた半年」だと考えています。理由は、営業利益率が8.1%で前年同期と並び、販売台数は減っているからです。
下期の純利益を前期から大きく下げて見込んでいるのは、上期に乗った営業外の収益が下期には無い前提だから、と私は読みました。短信にそう書いてあるわけではありません。
心配性なので、現金が25.1%減ったところが先に目に入ります。ただ、半年で3兆8,518億9,000万円を自己株式の取得に使い、そのうえで下期の営業利益を前期並みと見込んでいる会社です。資金が詰まる話ではありません。私が気にしているのは別のところです。1株当たりの利益の伸びのうち、どこまでが商売の分で、どこまでが株数の分なのか、という切り分けです。
出典:決算短信(会社発表)

その他の金融収益が7,151億円ふくらんだ中身は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント