車のミラーや窓を動かす、手のひらほどのモーター
マブチモーターは、小さなモーターを作っている会社です。車のドアミラーを畳む。窓ガラスを上げ下げする。シートを前後に動かす。ドアの鍵をかける。運転席でスイッチを押すだけで済んでいる動きの多くは、手のひらに載るほどのモーターが代わりにやっています。この会社の主力はそこです。
車のほかには、健康・医療機器や理美容の道具、電動工具にも入っています。工場はすべて海外にあり、中国とベトナムが中心です。今年に入ってからは、精密なモーターの会社と、食品工場で使う機械の会社を買いました。モーターの外へも手を伸ばしているところです。
1〜9月は、そろって増収増益
11月2日に出た、2026年12月期の第3四半期決算です。1月から9月までの9か月分になります。
| 今回(1〜9月) | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,679億4,900万円 | 1,470億2,500万円 | +14.2% |
| 営業利益 | 216億3,100万円 | 195億5,600万円 | +10.6% |
| 経常利益 | 264億8,900万円 | 234億4,100万円 | +13.0% |
| 純利益 | 185億4,500万円 | 180億9,700万円 | +2.5% |
この表だけなら、きれいな増収増益です。純利益だけ伸びが小さい理由は、後で触れます。
営業利益は増えたのに、日本の利益は3割減っていた
短信の11ページ目と12ページ目に、地域ごとの売上と利益の表があります。前年と今年を並べると、こうなります。
| セグメント利益 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 日本 | 77億6,200万円 | 52億7,900万円 |
| アジア | 111億700万円 | 133億9,000万円 |
| アメリカ | 7億2,600万円 | 6億7,000万円 |
| ヨーロッパ | △2億8,500万円 | 9億500万円 |
| 設備・部品等事業 | 2億7,600万円 | 10億700万円 |
前年同期は、新しい区分に組み替えて短信に載っている数字です。
引っかかったのは日本です。全体の営業利益が1割増えた中で、日本は24億8,300万円減り、3割ほど小さくなっています。1ページ目の業績表からは見えない動きです。
しかも日本の外部向け売上は、173億2,300万円から226億4,000万円へ増えています。増えたのは主にライフ・インダストリー機器の分です。第1四半期に買った精密モーターの会社も、この区分に入っています。その会社ののれん9億4,400万円が「日本」セグメントで発生した、と注記にあるからです。
売上が増えて、利益が減っている。……買った会社の費用が先に乗っているのか。
全体で見ると、販売費及び一般管理費は252億3,900万円から304億100万円へ増えました。のれんの償却額も2億9,400万円から5億8,000万円へと、倍になっています。買収にかかった費用と、買った会社の固定費が日本の区分に重なった、と私は受け取りました。
310億円減った現金と、この短信に無いキャッシュ・フロー計算書
次は、9か月で現金がどこへ動いたかです。短信2ページ目の財政状態の説明から、大きく動いた科目を抜き出します。
| 科目 | 前期末からの増減 |
|---|---|
| 現金及び預金 | △310億3,900万円 |
| 自己株式(純資産のマイナス項目) | +187億4,500万円 |
| 棚卸資産 | +121億7,200万円 |
| 無形固定資産 | +80億6,300万円 |
| 有形固定資産 | +75億3,800万円 |
| 短期借入金 | +54億1,300万円 |
自己株式の取得額は189億9,900万円です。これを減った現金310億3,900万円で割ると6割ほどになり、大半はここで説明が付きます。
残りは買収とみられます。のれんは38億6,700万円から120億5,300万円に増えました。そのうち食品機械の会社の分だけで79億9,500万円です。ただ、いくら払ったのかは決算短信には書かれていません。第3四半期はキャッシュ・フロー計算書を作成していない、と10ページ目の注記にあるからです。私がいつも最後に見に行く表が、今回はありません。
もう一つ、借入の動きです。この会社は手元に1,100億円を超える現金を持っています。それでも短期借入金が2,000万円から54億3,300万円になり、前期末にゼロだった社債も載りました。買った会社がもともと抱えていた借入が連結に入ってきた形だと私は考えています。誰が借りたのかまでは、短信からは分かりません。
経常利益を押し上げた、スクラップの売却
営業外収益に「スクラップ材料売却収入」という科目があります。14億6,300万円から21億8,200万円へ増えました。増えた額は7億1,900万円です。経常利益の増加額30億4,800万円の4分の1近くになります。
モーターは銅線を巻いて作る製品です。短信の見通しの節も、業績を動かす要因に銅・鋼材・レアアースの価格の動きを挙げています。量が増えたのか単価が上がったのかは、短信には書かれていません。
会社の説明は、売価と円安
会社は4ページ目で、営業利益の増加を「売価・プロダクトミックスの改善」と前期より円安だったことで説明しています。それがコストアップを上回った、という書き方です。自動車向けでは、パワーシート、パワーウインドウ、バルブ用が受注拡大で大幅に増えたとあります。
純利益の伸びが小さい理由は、損益計算書から分かります。法人税等が56億3,500万円から77億9,300万円に増えました。加えて、前年にあった負ののれん発生益7億8,100万円が今年はありません。
全体の説明は、そのまま受け取ります。ただ、日本の区分で利益が減った理由は、そこには出てきません。説明文が地域ではなく市場ごとに書かれているからです。
見通しの節には、家電・工具・住設・理美容用は「採算性重視の方針により」低調になる見込み、ともあります。採算の合わない注文は追わない、と会社自身が書いています。
10〜12月の営業利益は、直前の3か月の6割に満たない予想
| 通期予想 | 1〜9月 | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,250億円 | 1,679億4,900万円 | 約74.6% |
| 営業利益 | 265億円 | 216億3,100万円 | 約81.6% |
| 経常利益 | 313億円 | 264億8,900万円 | 約84.6% |
| 純利益 | 222億円 | 185億4,500万円 | 約83.5% |
進捗率は、1〜9月の実績を表紙の通期予想で割って、私が出した数字です。9か月を終えた目安の75%を、利益はどれも上回っています。会社は予想を変えていません。
3か月ごとに切り分けると、この予想の形がはっきりします。
| 営業利益 | 金額 |
|---|---|
| 今年 7〜9月(実績) | 約84億8,400万円 |
| 今年 10〜12月(予想どおりなら) | 約48億6,900万円 |
| 前年 10〜12月 | 約59億円 |
7〜9月は、1〜9月の216億3,100万円から、8月の第2四半期短信にあった1〜6月の131億4,700万円を引いたものです。10〜12月は、通期予想265億円から1〜9月を引きました。前年10〜12月は、まず前期の通期の営業利益を出しています。通期予想265億円は、前期比の伸びで1.041倍です。これで割り戻すと、前期は約254億6,000万円です。そこから前年1〜9月の195億5,600万円を引きました。
予想どおりなら、直前の3か月の6割に満たない営業利益で年を終えることになります。前年の同じ3か月と比べても、2割近く少ない額です。
私は、予想が控えめなほうだと考えています
10〜12月に本当に落ちるのか、予想が古いまま据え置かれているのか。私は後者の見方をしています。理由は、見通しの節に並ぶ悪い材料が、米国と欧州の自動車生産の伸び悩みや中国の補助金縮小といった、1〜9月にもすでにあった話だからです。7〜9月に84億円を稼いだ事業が、次の3か月で4割落ちる理由としては弱く見えます。
一方で、心配性なので日本の区分は気にしています。買った会社の費用が続くなら、10〜12月も日本は重いままかもしれません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

日本セグメントの利益が24億8,300万円減った理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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