はじめに
カバーは、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営している会社です。VTuberというのは、生身の姿ではなくアニメ調のキャラクターの姿で配信をするタレントのことで、ファンは配信を観て、ライブに行って、グッズを買います。この会社の収益は、その一連の流れ全部から生まれます。配信そのもの、ライブやイベント、グッズ販売、それから企業とのコラボやライセンス。タレントが人気になるほど、周辺の全部が売上になる構造です。
私はこの会社の短信を読むのは今回が初めてです。エンタメの会社の決算は、工場を持つ会社と数字の出方が違うので、先入観を持たずに最後のページまで読みました。読んでみると、1ページ目の減収減益よりも、4ページ目に会社が自分の言葉で書いた減収の理由のほうに引っかかりました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,825 | 9,629 | -8.3% |
| 営業利益 | 651 | 972 | -33.0% |
| 経常利益 | 598 | 932 | -35.8% |
| 純利益 | 415 | 693 | -40.1% |
(単位:百万円)
売上が1割弱減って、利益は3分の2になりました。前年同期は売上が5割増えていた四半期なので、比べる相手が高かったという面はあります。それでも減収は減収です。
最初の表では分からなかったこと
減収の主因はグッズ。そして理由の中に「欠品」がある
4ページ目の分野別の数字を並べます。
| 分野 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 配信/コンテンツ | 2,092 | -3.8% |
| ライブ/イベント | 908 | +109.6% |
| マーチャンダイジング | 4,546 | -22.1% |
| ライセンス/タイアップ | 1,279 | +8.2% |
(単位:百万円)
いちばん大きいマーチャンダイジング(グッズ)が2割強減っています。ここが減収の主因です。会社が挙げた理由は、トレーディングカードの新商品の販売スケジュールと商品構成の差、卒業したタレントの関連商品売上の剥落、そして「EC商品の製造・販売オペレーションの移行過程において商品の欠品や品揃え不足による機会損失が生じた」こと。
最後のが引っかかりました。需要が落ちたのではなく、売る物が棚に無かった、と会社自身が書いています。……売れなかったのと、売れる物を用意できなかったのは、ずいぶん違う話だ。前者なら心配ですが、後者ならオペレーションが直れば戻る種類のものです。ただし、いつ直るのかは短信のどこにも書いてありません。
一方でライブ/イベントは倍増しています。オフラインライブの複数開催と、過去のライブの映像商品の販売が伸びたと説明されています。ライセンスも海外クライアントとの取引拡大で増えている。柱のグッズが凹んで、脇のライブとライセンスが伸びた四半期でした。
30億円の自己株買いが、貸借対照表を動かしていた
1ページ目で自己資本比率が57.2%から61.9%に上がっているのを見て、利益を積んだのかと思ったら違いました。総資産のほうが6,819百万円縮んでいます。
9ページ目の注記に、公開買付けで自己株式を1,879,700株・2,999百万円取得したとあります。配当は0円の会社ですが、株主への還元を自社株買いの形でやった、ということです。現金及び預金は4,129百万円減っていますが、その大部分がこれで説明がつきます。
もう1つ、未払法人税等が1,357百万円から2百万円へほぼ消えています。前期分の税金を払った期だということです。現金の減少は、事業が現金を失ったというより、自社株買いと納税という2つの支払いが重なった結果に見えます。……ただし、この期のキャッシュ・フロー計算書は「作成しておりません」と注記にあります。営業活動でいくら現金が入ったのかは、この短信からは分かりません。私としては、いちばん見たいページが無い短信でした。
営業外に「和解金」が両側にある
損益計算書の営業外に、受取和解金9百万円と支払和解金53百万円が並んでいます。何の和解かは書かれていません。金額は小さいものの、受け取る側と払う側の両方に立った四半期だったことだけは印字されています。前年同期に41百万円あった為替差損は、今回は差益9百万円に変わっています。
投資は続いている
無形固定資産のソフトウエア仮勘定が968百万円から1,446百万円に増えています。作りかけのソフトウェアです。減収の四半期でも、開発への支出は止めていない。会社の言う「投資期」は、この行に表れています。
会社はどう説明しているか
会社は今を「持続的な成長に向けた基盤強化を進める投資期」と位置づけ、固定費が先行して増えたことで営業利益率が下がった、と説明しています。実際、営業利益率は10.1%から7.4%に下がりました。
投資期という説明は、ソフトウエア仮勘定の増加や次世代タレント育成プロジェクトの始動を見る限り、言葉だけではなさそうです。ただ、ECの欠品は投資の話ではなく、オペレーションの移行でつまずいた話です。この2つを同じ「投資期」の文脈に置いて読むと、見誤る気がします。私は分けて読みました。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は5月14日発表から据え置きです。
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 51,350 | 17.2% |
| 営業利益 | 7,000 | 9.3% |
| 純利益 | 4,900 | 8.5% |
(単位:百万円。目安は25%)
営業利益の進捗は1割弱。残り9ヶ月で6,349百万円を積む必要があり、これは前年の同じ9ヶ月より4.3%多い水準です。純利益に至っては、残り9ヶ月で前年比93.0%増のペースが要ります。ただし純利益のほうは、今回の損益計算書を見ると税金費用の出方が前年とかなり違うので、利益率の話とは切り離して見たほうがよさそうです。
私はどう読んだか
慎重側に寄せて読んでいます。理由は、営業利益の進捗が1割弱しかないのに予想が据え置かれていて、その差を埋める道筋——欠品がいつ解消するのか、下期に何が控えているのか——が短信の中に書かれていないからです。トレカの販売スケジュールの差というのは裏を返せば下期に寄るという意味かもしれませんが、それは私の推測であって、短信の文章はそこまで言っていません。読み違いかもしれません。ライブが倍増し、海外ライセンスが伸びている事実は、慎重に読んだうえでも残ります。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260812518254.pdf
ECの製造・販売オペレーションの移行がいつ完了し、欠品がいつ解消するのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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