半導体は、作ったままでは出荷できません。チップの一つ一つに電気を通し、設計どおりに動くかを確かめる工程が最後にあります。アドバンテストは、その検査に使う装置(テスタ)を作っている会社です。
買うのは半導体メーカーと、製造を請け負う工場です。AI向けの高性能チップや高速のメモリは、回路が複雑になるほど検査に時間がかかり、装置の台数も増えます。売り先はほとんどが海外です。
1ページ目は文句のつけようがない決算でした。それでも引っかかった行があったので、そこに紙面を割いて書きます。
この決算で何が起きたか
2026年7月29日に発表された、2026年4月から6月までの3か月分です。IFRSなので経常利益の行はなく、代わりに税引前利益を置きます。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,674億7,300万円 | 2,637億7,600万円 | +39.3% |
| 営業利益 | 1,899億9,000万円 | 1,239億5,200万円 | +53.3% |
| 税引前利益 | 2,340億8,200万円 | 1,213億5,700万円 | +92.9% |
| 純利益 | 1,747億8,000万円 | 901億8,000万円 | +93.8% |
4つとも四半期として過去最高だと、4ページ目に会社自身が書いています。営業利益率も47.0%から51.7%へ上がりました。ただ、営業利益が5割増なのに純利益が9割増なのはなぜか。答えは表の外にありました。
営業利益と税引前利益の間に挟まった447億円
7ページ目の損益計算書で、営業利益の下に金融収益が446億8,000万円あります。前年同期は6億9,300万円でした。この1行で、営業利益と純利益の伸びの差がほぼ埋まります。
中身は11ページ目の注記にある「戦略投資に関連する金融商品の評価益」410億7,500万円です。値上がり分を損益に載せたもので、売って現金にしたわけではありません。
戦略投資が何を指すのかは、決算短信には書かれていません。表紙に決算補足説明資料は「有」とありますが、私はまだ読んでいません。
損益計算書に載らなかった評価益が、もう1,202億円
ここが今回いちばん引っかかった場所です。損益計算書のすぐ下の包括利益計算書に、「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の純変動」が1,202億2,900万円あります。前年同期は58億3,600万円でした。
値上がりのうち、損益を通さず資本へ直接載せる種類のものです。純利益には入らず、その代わり四半期包括利益は3,018億2,200万円と、四半期利益の1.7倍ほどになっています。
貸借対照表では、投資有価証券が679億2,700万円から3,577億3,700万円へ膨らみました。増え方を分けてみます。
| 投資有価証券の増え方 | 金額 |
|---|---|
| 前期末からの増加(会社の数字) | 2,898億1,000万円 |
| うち損益計算書に載った評価益 | 410億7,500万円 |
| うち損益を通さず資本に載った評価益 | 1,202億2,900万円 |
| 買い足した分の差し引き | 約917億円 |
| 上のどれでもない残り | 約368億円 |
約の付いた数字は私の計算です。買い足しは、キャッシュ・フロー計算書の負債性金融商品の取得878億1,700万円と資本性金融商品の取得260億5,300万円を足しました。そこから売却221億3,300万円を引いています。増加額から評価益2つと買い足しを引いた残りが、約368億円です。これが何かは、短信からは読み取れませんでした。
……評価益を2つ足せば1,600億円。テスタの会社の貸借対照表に、3か月でそれだけ値動きする資産が育っている。これは頭に入れておかないといけない。
上がった値段は、下がれば同じ道を戻ります。自己資本比率68.8%は、この含み益込みの数字です。
手元に4,131億円あって、1,000億円を借りている
9ページ目のキャッシュ・フロー計算書です。営業活動によるキャッシュ・フローは1,371億5,500万円の収入で、前年同期の3倍近くです。法人所得税1,011億1,500万円を払ったうえでの額です。
財務活動の欄に、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,000億円があります。同じ3か月で、自己株式の取得に422億1,100万円、配当に214億2,600万円を使っています。
期末の現金は4,131億2,400万円です。これだけ持っていて、なぜ借りるのか。借りた1,000億円と買った負債性金融商品878億円が、額も時期も近いのが気になります。発行の理由は決算短信には書かれていません。
売上が4割増えて、売掛金が減っている
こちらは良いほうの発見です。営業債権及びその他の債権が2,287億3,100万円から1,784億9,700万円へ減りました。減った額は502億円です。売上が4割増えた四半期に売掛金が減るのは、普通ではありません。
前受金の増加も369億8,400万円あり、前年同期は13億7,700万円でした。ここまでは短信の数字です。顧客が先に代金を入れて装置を待っている、と私は受け取りました。棚卸資産が413億4,600万円増えたのも、生産能力の増強を前倒しするという説明と合います。
会社はどう説明しているか
4ページ目と5ページ目に、会社自身の説明があります。AI向けの先端半導体が数を増やし、検査の需要が伸びたというのが売上の理由です。特に推論用AI半導体向けの需要が、4月時点の想定を大きく上回る見込みだとしています。為替も効いていて、当四半期の平均は米ドル159円、前年同期は146円でした。
心配事も書いてあります。中東情勢は物流コストなど一部の増加を見込むものの、直接の影響は限定的、としています。もう一つは、メモリ半導体などの主要部品の需要が供給を上回っている、という一文です。テスタにもメモリは載ります。メモリを売る側には需要が増える話ですが、買う側には調達の心配になります。
売上と営業利益の説明は、そのまま受け取ります。ただ評価益410億円は、決算短信の本業の説明には出てきません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は、この短信で上方修正されました。売上高は1兆4,200億円から1兆7,140億円へ引き上げられました。営業利益は6,275億円から8,460億円へです。当期利益は4,655億円から6,600億円へです。修正後の予想に対する進みを並べます。
| 第1四半期 実績 | 通期予想(修正後) | 進み | 残り9か月 | 1四半期あたり | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,675億円 | 1兆7,140億円 | 約21% | 約1兆3,465億円 | 約4,488億円 |
| 営業利益 | 1,900億円 | 8,460億円 | 約22% | 約6,560億円 | 約2,187億円 |
| 純利益 | 1,748億円 | 6,600億円 | 約26% | 約4,852億円 | 約1,617億円 |
約の付いた数字は、実績を通期予想で割り、予想から実績を引いた残りを3で割った私の計算です。
売上と営業利益の進みは2割ほどで、4分の1に届いていません。残りは毎四半期が今回を2割ほど上回る必要があります。上方修正した会社が、この先はもっと大きいと置いているわけです。
純利益だけ進みが良く見えますが、410億円の評価益が入っています。それを引くと約1,337億円で、残りの四半期に必要な額とほぼ同じです。評価益は税引前の額なので、税金分を考えれば残る利益はもう少し多いはずですが、様子は変わりません。
為替の前提は、第2四半期以降が米ドル150円です。今回の実績159円より9円の円高側で、予想の土台は固めに置いたと受け取れます。
配当は、前期が年59円でした。今期の予想は表紙が空欄のままで、決算短信にその理由は書かれていません。
私はどう読んだか
営業利益が5割増えたのは本物だと考えています。理由は、売掛金が減って前受金が増えるという、注文が先に積み上がる形が現金の動きに出ているからです。
純利益が9割増えたほうは、割り引いて受け取っています。410億円は本業ではなく、持っている金融商品の値段です。損益の外にもう1,202億円が資本に載り、投資有価証券は総資産の4分の1近くになりました。心配性なので、この資産が下を向いた四半期を先に考えてしまいます。
上がるかは知りません。私が次に見るのは、投資有価証券の行と、金融収益の行です。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.advantest.com/document/ja/investors/ir-library/result/J_FR_FY2026_1Q.pdf
戦略投資に関連する金融商品が何なのか、また現金が4,000億円ある中で転換社債を1,000億円発行した理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント