積水化学工業(4204)2027年3月期 中間決算分析――客先の在庫積み増しが気になりました

積水化学工業(4204)2027年3月期 中間決算分析――客先の在庫積み増しが気になりました 日本株

家と、管と、フロントガラスの膜

積水化学工業は、ひとことで言える会社ではありません。工場で家を建てて売り、建てたあとのリフォームや賃貸の管理まで引き受けています。その家の床下や道路の下を通る、樹脂の管も作っています。

もう一つの柱は、目立たない素材です。車のフロントガラスの2枚のガラスに挟む膜、液晶画面や半導体の製造に使う材料、航空機の部品などがあります。どれも完成品の名前の裏に隠れていて、買う人が意識することはまずありません。病院で使う検査薬も扱っています。

住宅と素材では、景気の効き方がまるで違います。新しい家が建たなくても、半導体の工場が忙しければ利益は出ます。その組み合わせを、一冊の短信で追うことになります。

4つの利益がそろって増えた上期

2026年10月30日に出た中間決算です。4月から9月までの半年分にあたります。

今回前年同期増減率
売上高7,017億600万円6,297億9,700万円+11.4%
営業利益604億3,900万円454億4,700万円+33.0%
経常利益614億1,800万円489億5,100万円+25.5%
純利益347億9,100万円317億2,200万円+9.7%

営業利益が3割増え、通期の売上高・営業利益・経常利益の予想も引き上げています。1ページ目だけなら、文句の付けようがない決算です。純利益の伸びだけが1割にとどまっていて、その理由はあとで出てきます。

利益が増えた半年に、営業キャッシュ・フローは減った

短信の11ページ目に、キャッシュ・フロー計算書があります。営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の498億3,300万円から351億2,600万円へ減っていました。利益が3割増えた半年に、本業で入ってきた現金は減っています。

引っかかったのは、その差を生んだ一行です。棚卸資産の増加で、344億3,000万円の現金が出ていっています。前年同期は168億6,900万円でしたから、倍ほどに膨らんだことになります。

貸借対照表で中身を分けると、偏りはありませんでした。

棚卸資産2026年3月末2026年9月末
商品及び製品1,249億7,000万円1,406億2,500万円
仕掛品752億9,400万円842億4,800万円
原材料及び貯蔵品675億800万円733億8,700万円
分譲土地861億4,400万円891億500万円

原料も、作りかけも、できあがった製品も、そろって増えています。製品だけが積み上がっているなら売れ残りを疑いますが、この形はそうではありません。

短信の4ページ目には、中東情勢の悪化で原料・部材の調達に制約が出て、それに対処したと書かれています。手に入るうちに原料を押さえ、作れるうちに作っておいた、ということでしょう。自社の在庫が膨らんだことには、それで説明が付きます。

売った先でも、在庫が積まれていた

同じ4ページ目に、もう一つ気になる言葉がありました。「製品の供給不安に起因する市中在庫積み増しの動き」に対応した、という一文です。

買う側も在庫を積んでいた、ということです。また手に入らなくなるのを恐れて、いつもより多めに買った客先がいたことになります。環境・ライフラインの説明には、国内住宅向けの管材で「市中在庫積み増しの動きにより出荷が増加」とはっきり書かれています。

セグメント利益前年同期今回
住宅163億400万円167億9,100万円
環境・ライフライン80億5,900万円131億5,700万円
高機能プラスチックス283億5,100万円383億1,300万円
メディカル45億700万円49億3,600万円

短信13〜14ページ目のセグメント情報から取りました。

環境・ライフラインの利益は6割増えています。同じ説明文には、住宅市況の低迷が続いているともあります。その中での6割増です。……先に買った分は、あとでは買われない。

高機能プラスチックスは事情が違います。挙がっている理由は、半導体向けの材料、ヘッドアップディスプレイ用の中間膜、航空機の需要です。短信の説明では、こちらは客先の在庫の積み増しではなく、使い道が広がったことが増益の理由になっています。ただ、インダストリアル分野の説明にだけは「前倒し需要の一部取り込み」とありました。

蓄電池の交換費用は、まだほとんど払われていない

純利益の伸びが小さかったのは、特別損失のためです。前年同期には無かった科目が2つ並んでいます。特定製品交換費用51億4,300万円と、事業構造改善費用26億400万円です。

注記によると、前者は過去に売った蓄電池の不具合で、交換が見込まれる分の費用です。後者は定置用蓄電池事業から撤退する費用で、主な中身は棚卸資産の評価損だとあります。

ここで、キャッシュ・フロー計算書に戻ります。特定製品保証引当金の増加として、50億6,800万円が足し戻されていました。損益には費用として計上したものの、現金はほとんど出ていっていない、ということです。交換が進めば、その分はこれから出ていきます。

会社はどう説明しているか

短信の説明は、原料・部材の値上がりに速やかに販売価格を合わせたこと、高付加価値品の拡販が進んだことで増益になった、というものです。

決算説明会資料には、営業利益の増減を要因ごとに分けた図があります。ここからは説明会資料の数字です。上期は、原料の値上がりで143億円のマイナスでした。一方で、販売価格の改善で213億円のプラス、数量・構成で87億円のプラスです。値上がり分を上回って、価格を上げられています。

同じ資料には、第2四半期に見込んでいた需要の調整が「想定ほど発現せず」と書かれています。インダストリアル分野では、反動減を「下期に繰り越し」とあります。反動は消えたのではなく後ろにずれた、と会社自身が考えています。

この説明には納得しています。ただ、数量の伸びのうちどれだけが客先の積み増しだったのかは、短信にも説明会資料にも数字としては出ていません。そこには留保を付けます。

下期の経常利益は、前年より低く見込んでいる

通期予想上期実績進捗率
売上高1兆4,910億円7,017億600万円47.1%
営業利益1,230億円604億3,900万円49.1%
経常利益1,220億円614億1,800万円50.3%
純利益760億円347億9,100万円45.8%

進捗率は、上期実績を通期予想で割った私の割り算です。半年を終えて、どの利益もほぼ半分まで来ています。

前年と比べると、下期の見込みの慎重さが分かります。経常利益の通期予想は1,220億円です。そこから上期の614億1,800万円を引くと、下期は605億8,200万円になります。前年の下期より1割ほど少ない見込みで、これは私の引き算です。営業利益の下期は625億6,100万円で、前年の下期とほぼ変わりません。

営業利益の予想は80億円引き上げましたが、純利益の予想760億円は4月から動かしていません。説明会資料は、特別損失の計上と、政策保有株式の売却益が減ることを理由に挙げています。

借入も増えています。有形固定資産の取得は532億400万円で、前年同期の倍近くになりました。長期借入金は半年で411億7,900万円から869億4,400万円へ増え、支払利息も倍になっています。

私はどう読んだか

自社の在庫は調達難への備えで、客先の在庫は需要の前借りです。私は、上期の増益の中心は前借りではなく、原料の値上がりを上回る値上げにある、という見方をしています。理由は、値上げで稼いだ分が、数量の伸びと同じくらいの大きさだからです。説明会資料の要因の図で、販売価格の改善213億円から原料の値上がり143億円を引いた分を比べました。比べた相手は、数量・構成の87億円です。下期の経常利益が前年を下回る予想も、繰り越された反動を織り込んだ結果だと考えています。

心配性なので、現金のほうは追いかけます。積んだ在庫が売れて現金に戻るのか、蓄電池の交換費用がいつ出ていくのか。確かめられるのは、通期決算のキャッシュ・フロー計算書です。上がるかは知りません。

出典

出典:決算短信(会社発表)

決算短信・有価証券報告書 | 積水化学工業株式会社
積水化学工業株式会社のIRライブラリです。株主・投資家情報では決算説明会の情報や経営計画や財務情報、非財務情報、株式関連情報など株主・投資家の皆さま向けの情報をご紹介します。

環境・ライフラインの増益のうち、客先の在庫積み増しがどれだけを占めたのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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