証券会社や銀行の裏側で、システムを動かし続ける会社
野村総合研究所は、システムを作るだけでなく、作ったあとも動かし続ける会社です。お客さんの中心は証券会社、保険会社、銀行です。いくつもの証券会社が一つの仕組みを共同で使う形のサービスも持っています。証券口座で注文を出したとき、その後ろではこうしたシステムが動いています。
金融のほかに、流通業や製造業のシステム、データセンターの運営、情報セキュリティの仕事もあります。いちばん上流にはコンサルティングがあります。何を作るかをお客さんと一緒に考える段階から入れるのが、この会社の形です。
4月から9月の半年は、増収増益
10月29日に出た、2027年3月期の中間決算です。4月から9月までの半年を、前年同期と比べます。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,299億600万円 | 3,970億6,500万円 | +8.3% |
| 営業利益 | 882億7,200万円 | 787億9,900万円 | +12.0% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益 | 600億1,400万円 | 535億6,500万円 | +12.0% |
IFRSの会社なので、経常利益の欄はありません。いちばん近いのは税引前中間利益で、897億300万円でした。営業利益が売上より速く伸び、営業利益率は前年同期より0.7ポイント改善しています。
通期の営業利益「約3倍」は、前の期の損失の裏返し
表紙の通期予想には、営業利益が前期の約3倍、純利益が約8倍と載っています。最初に引っかかったのはここでした。上期の伸びが1割前後の会社に、3倍は合いません。
手がかりは、添付資料8ページの予想の表の右端にある「前年度実績」でした。前の期の営業利益は582億7,300万円です。前の期は上期だけで787億9,900万円を稼いでいました。通期の582億7,300万円から、上期の787億9,900万円を引きます。すると、前の期の下期は205億2,600万円の営業損失だったことになります。
その下期に何があったのかは、この短信には書かれていません。説明会資料は、前の期の営業利益を「減損損失等を含まない参考値」として1,566億円と出していて、それと比べた通期予想の伸びは14.9%です。どちらも説明会資料の数字です。3倍は成長の大きさではなく、前の期の損失の大きさを映しています。
7月から9月の3か月のほうが、利益率は高かった
7月30日に出た第1四半期の数字があるので、上期から引いて7月から9月だけを取り出しました。
| 4月〜6月 | 7月〜9月 | 上期累計 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,104億5,500万円 | 約2,194億5,100万円 | 4,299億600万円 |
| 営業利益 | 417億1,100万円 | 約465億6,100万円 | 882億7,200万円 |
| 営業利益率 | 約19.8% | 約21.2% | 20.5% |
約の付いた数字は、上期累計から第1四半期を私が引いたものと、それを売上で割ったものです。
後ろの3か月のほうが、売上も利益率も高くなっています。半年の伸びは、前半の貯金で作ったものではありません。
コンサルティングだけが、減益で予想も減額
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| コンサルティング | 331億9,200万円 | +4.7% | 77億8,400万円 | △6.8% |
| 金融ITソリューション | 2,445億3,900万円 | +8.8% | 423億1,700万円 | +17.7% |
| 産業ITソリューション | 1,183億1,000万円 | +5.1% | 149億2,400万円 | +0.5% |
| IT基盤サービス | 1,191億9,800万円 | +11.8% | 227億1,200万円 | +17.8% |
4つの事業のうち、営業利益が前年同期を割ったのはコンサルティングだけです。短信の5ページ目には、売上はAIコンサルティングの受注増で伸び、営業利益は「一部の案件縮小に伴う稼働率の低下」で減った、と書いてあります。
通期の見通しにも同じ傾きが出ています。添付資料8ページのセグメント別売上予想で、全体は8,500億円から8,700億円へ増額されました。その中で、コンサルティングだけが700億円から660億円に減らされています。
……AIの相談は増えているのに、相談を受ける部門の予想が減っている。
説明会資料には、AXコンサルの売上が前期比で約2倍とあります。部門全体の売上の伸びは5%に満たないので、AI以外のコンサルティングが縮んだ、と私は受け取りました。縮んだのは大型顧客向けの案件だと、説明会資料は書いています。
稼いだ現金より多くを、株主に戻した半年
キャッシュ・フロー計算書まで進むと、この半年の現金の使い道が分かります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 945億3,400万円 |
| 定期預金の払戻による収入 | 488億8,600万円 |
| 長期借入れによる収入 | 240億円 |
| 自己株式の取得による支出 | △950億4,300万円 |
| 配当金の支払額 | △241億2,200万円 |
本業で生んだ現金は、前年同期の736億6,800万円から2割以上増えました。ただ、自己株式の取得と配当を足すと、その額を超えます。差を埋めたのは定期預金の払戻と、社員持株会向けの信託を再設定するための借入れです。
結果として、親会社所有者帰属持分比率は45.2%から41.0%に低下しました。利益を出しながら自己資本を減らすのは、会社が選んだ資本の使い方です。営業債権が減って契約資産が増えた動きも、年度末に終わる案件が多いための毎年の形だと、短信の6ページ目に書いてあります。
短信は「案件と運用の増加」、AIの話は説明会資料の側に
短信は、利益率の改善を「国内事業のシステム開発案件や運用サービスの増加」で説明しています。AIについては、IT基盤サービスの節で「開発プロセスへのAI活用などによる抜本的な生産革新に取り組んでいます」とあるだけです。短信には、AIが増益に効いたとまでは書かれていません。説明会資料は、表紙の次のページで「AIを活用した生産革新が増益に寄与」と言い切っています。
この説明には、少し留保をつけています。理由は、売上総利益率の動きが小さいからです。売上総利益は1,613億9,600万円で、売上で割ると37.5%です。前年同期は37.3%だったので、改善は0.2ポイントにとどまります。開発の手間がAIで大きく減ったなら、まず原価に出るはずです。今回は、販管費の伸びが6.5%に収まった効き目のほうが大きいと考えています。
通期予想の半分近くまで来ている
| 上期実績 | 通期予想(10月29日修正後) | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,299億600万円 | 8,700億円 | 約49.4% |
| 営業利益 | 882億7,200万円 | 1,800億円 | 約49.0% |
| 純利益 | 600億1,400万円 | 1,230億円 | 約48.8% |
進捗率は、上期実績を修正後の通期予想で割ったものです。
通期予想の8,700億円から、上期の4,299億600万円を引きます。下期に要る売上は4,400億9,400万円です。営業利益も同じ計算で、1,800億円から882億7,200万円を差し引きます。残りは917億2,800万円です。どちらも上期より大きい額です。営業利益なら、7月から9月の約465億円のペースが2回続けば届きます。前の期の下期は損失だったので、前年と比べる物差しは使えません。
説明会資料の数字ですが、9月末の受注残高のうち今期の売上になる分は2,942億8,800万円あります。
強さは本物で、コンサルの縮みは大型案件一つの影響だと考えています
私は、この上期の強さは本物だという見方をしています。理由は、利益の伸びに営業キャッシュ・フローの増加が伴っていて、しかも7月から9月の3か月のほうが利益率が高いからです。営業外の一時的な収入で作った利益でもありません。
コンサルティングの減益は、大型顧客の案件が縮んだ影響だと考えています。説明会資料では、コンサルティングの受注残高が前年同期より1割増えています。ただ、半年の受注高は前年同期をわずかに割っています。心配性なので、次の決算ではまずこの部門の受注高を確かめます。この先どうなるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
コンサルティングで縮小した「一部の案件」がどんな案件で、来期まで影響が続くのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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