はじめに
札幌を本拠に、注文住宅を建てている会社です。売上が立つのは鍵を渡した日で、契約した日ではありません。だから、この種の会社の決算は、引渡しがどこに寄るかで形が決まります。
寄るのは春です。進学や転勤に合わせて、引渡しは三月から五月に集まる。決算期が五月なのも、そこに合わせたものでしょう。北海道を地盤に、名古屋、四日市、岐阜県大垣と東海へ店を広げ、神奈川の湘南平塚にも出す計画が出ています。
この決算で何が起きたか
10月15日に出た、2027年5月期の第1四半期決算です。対象は2026年6月1日から8月31日までの3か月で、引渡しの多い時期のちょうど反対側にあたります。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 60億5,800万円 | 72億2,400万円 | 16.1%減 |
| 営業利益 | △10億1,900万円 | △7億1,100万円 | — |
| 経常利益 | △10億6,300万円 | △7億3,800万円 | — |
| 純利益 | △7億3,000万円 | △5億3,100万円 | — |
前年の同じ3か月も営業損失です。この時期に赤字になること自体は毎年のことです。短信の4ページ目にも、引渡しが増える第4四半期に売上が集中する傾向がある、と書いてあります。
前の年の第1四半期は、3か月ぶんではなかった
16.1%の減収には、数え方の話が混ざっています。前年の第1四半期には、決算期の変更で子会社1社の5か月ぶんが乗っていました。今年は3か月に戻ったので、並べると売上が縮んで見えます。これは決算説明会資料にあり、短信には出てきません。
同じ資料では、累計の受注が前年より1割以上増え、名古屋・四日市・大垣の3店舗の受注は社内目標を4割ほど上回ったとしています。売れていないから売上が減った、という話では少なくともありません。
前受金が54億円増えて、現金は22億円減った
この決算でいちばん大きく動いているのは、6ページ目と7ページ目の貸借対照表です。
| 科目 | 2026年5月末 | 2026年8月末 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 91億6,339万円 | 69億4,360万円 |
| 販売用不動産 | 37億3,615万円 | 55億6,834万円 |
| 未成工事支出金 | 12億9,240万円 | 42億5,887万円 |
| 未成工事受入金 | 32億4,860万円 | 86億7,148万円 |
| 工事未払金 | 45億178万円 | 26億6,806万円 |
| 短期借入金 | 22億1,261万円 | 40億4,235万円 |
未成工事受入金は、引渡しの前に施主から受け取った手付と中間金です。これが54億2,288万円増えたのは、着工して引渡しを待っている家がそれだけ増えたということです。裏側で、引渡し前の工事原価である未成工事支出金が29億6,647万円増えました。
一方、工事未払金は18億3,372万円減りました。下請けへの支払いが進んだぶんです。入ってきた金が増え、支払う予定の債務が減ったのに、現金及び預金は22億1,979万円減っています。短期借入金はほぼ倍です。
出ていった先のうち、金額が短信に書いてあるものが一つあります。12ページ目です。子会社の豊栄建設が、札証物産の2社から戸建分譲住宅事業を現金16億円で譲り受け、6月5日に完了しています。受け入れたのは流動資産16億円だけで、負債は対象に入っていません。販売用不動産の18億3,218万円の増加は、ほぼこの16億円です。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
現金が何に使われたのかを、もう一段細かく追おうとして止まりました。10ページ目に一行、四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成していない、と書いてあります。
第1四半期と第3四半期のキャッシュ・フロー計算書は作らなくてよい決まりなので、規則どおりです。ただ、現金が22億円減り、短期借入金が18億円増えた四半期に、その出入りを直接たどれる書類が無いのは不便でした。できるのは、貸借対照表の前後を並べて見当をつけるところまでです。
会社はどう説明しているか
短信の4ページ目は、季節性の話です。期末に完工物件の引渡しが集中する過剰な季節性を是正し、施工を平準化して収益性と生産性を上げる。それが今期の重点施策だと書いてあります。
販売費及び一般管理費は20億6,355万円へ8.3%増えました。新規出店から収益貢献までに時間がかかるため、人件費と広告宣伝費が先に出たとしています。
着工を認める月を3月までから2月までに絞ったため、今期に取り込める着工期間が1か月から1.5か月ほど短くなるそうです。ただしこれは今期だけのものだと、説明会資料にあります。
この説明は、貸借対照表の動きと合っています。工期を長くとれば、引渡し前の仕掛かりと前受金は膨らむ。ここは素直に受け取りました。
残り9か月に、前の年の1.45倍の営業利益が要る
通期予想は売上542億7,300万円、営業利益21億1,300万円で、修正はありません。売上の進み方は、60億5,800万円を542億7,300万円で割って1割強。期間の4分の1が過ぎた時点でこの数字ですが、第4四半期に集中することを会社自身が書いているので、この割合は判断の材料にしていません。
営業利益を見ます。通期の21億1,300万円から第1四半期の△10億1,900万円を差し引きます。赤字のぶんを足すのと同じです。9月から来年5月までの9か月で31億3,200万円を作る置き方になります。前年は通期14億4,900万円で、第1四半期が△7億1,100万円でした。同じ引き算をすると21億6,000万円です。31億3,200万円は、その1.45倍です。
| 営業利益 | 第1四半期 | 9月〜5月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年(実績) | △7億1,100万円 | 約21億6,000万円 | 14億4,900万円 |
| 今年(会社予想) | △10億1,900万円 | 約31億3,200万円 | 21億1,300万円 |
約の付いた2つは、通期から第1四半期を差し引いて私が出した数字です。
このうち3億円から4億円は、札証物産から引き継いだ不動産の売却益で見込んでいる、と説明会資料にあります。第1四半期で建売6棟と土地18区画を売り終えた、ともあります。31億3,200万円から、この4億円を引きます。残りの27億3,200万円は、家を建てて渡す商売で積むことになります。
通期予想の外側にあるかもしれないものが、13ページ目に一つあります。10月1日に、子会社のクラージュホームがアエラホームの注文住宅事業を引き継ぎました。ただ短信には、のれんの金額も取得関連費用も、受け入れる資産と負債の額も確定していないと書いてあります。通期予想は据え置きのままです。
私はどう読んだか
減収と赤字の拡大そのものは、気にしていません。理由は、前年に5か月ぶんが乗っていた反動であり、この時期の赤字は毎年出るものだからです。
引っかかったのは自己資本比率です。17.4%から11.4%へ落ちました。純資産は40億4,400万円から30億6,000万円へ。減ったのは9億8,438万円です。中身は四半期の純損失7億3,000万円と、8月13日に支払った配当2億4,873万円です。
期末配当なので、赤字の四半期に払ったこと自体はおかしくありません。通期では11億6,000万円の純利益を見込み、1株88.75円の配当予想を据えています。ただ、総資産268億1,900万円に対して、自己資本は30億6,000万円です。その状態のまま、残り9か月で前年の1.45倍の営業利益を積むことになります。その引渡しは、最後の3か月に寄ります。
……いや、これは余白のない置き方だ。
この決算を「計画どおりの赤字」としては受け取っていません。気になるのは中身が計画どおりかどうかではなく、その計画が最後の3か月に寄りすぎていることです。3月から5月の引渡しが天候や職人の手配でひと月ずれれば、そのぶんは翌期へ動きます。借入を増やし、自己資本を薄くした状態で、その3か月を待つことになります。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

10月1日に引き継いだ注文住宅事業が、据え置かれた通期予想にどう入っているのかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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