制服の生地と、駅前の商業施設が同じ会社にある
日本毛織は、ウールの生地から始まった会社です。いまも中学や高校の制服、警察や消防の制服、会社の作業着に使う生地を織っています。自動車の内装に使う不織布や、エアバッグを縫う糸、ラケットや楽器に使うフェルトも作っています。
もう一つの柱は、自社の土地を使った商売です。ショッピングセンターを運営し、東京のオフィスビルや兵庫の賃貸住宅を貸しています。保育や介護、テニスやゴルフの施設もあります。制服を着る子どもと、ビルに入居する会社と、施設に通う高齢者が、同じ決算書に並んでいます。
売上は横ばい、利益はそれより伸びた
10月9日に出た、2026年11月期の第3四半期決算です。12月から8月までの9か月分です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 891億8,600万円 | 870億9,200万円 | +2.4% |
| 営業利益 | 86億7,300万円 | 76億7,000万円 | +13.1% |
| 経常利益 | 97億3,000万円 | 86億1,400万円 | +13.0% |
| 純利益 | 70億4,400万円 | 55億5,200万円 | +26.9% |
売上はほとんど横ばいなのに、営業利益は1割強増えています。純利益の伸びだけがほかより一段大きく、ここが最初に引っかかりました。
増益を支えたのは、産業機材と賃貸ビル
事業ごとの数字は、短信のセグメント情報に載っています。
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 衣料繊維 | 204億5,800万円 | +2.1% | 4億6,400万円 | −38.8% |
| 産業機材 | 297億3,500万円 | +14.2% | 23億4,100万円 | +29.2% |
| 人とみらい開発 | 188億8,400万円 | −5.4% | 58億9,900万円 | +12.0% |
| 生活流通 | 166億1,700万円 | −7.9% | 9億300万円 | +0.9% |
産業機材は、今期からカコテクノスという会社を連結に加えています。この会社を除いた伸びは短信には載っていないので、元からの事業がどこまで伸びたのかは分かりません。
人とみらい開発事業は、売上が減ったのに利益は1割増えています。2025年に建った八重洲のオフィスビルと西宮の賃貸住宅が、家賃を生み始めました。前年はこのビルの開業経費がかかっていて、今期はそれが無い、とも書いてあります。前年にかかった費用が今期は無いことも、増益の一部です。
純利益の伸びには、持ち株を売った利益が入っている
純利益が3割近く伸びた理由は、損益計算書の下のほうにあります。前年はゼロだった特別利益が、今期は11億6,200万円あります。いちばん大きいのは投資有価証券売却益の7億9,200万円で、持っている株を売って出た利益です。補助金収入と固定資産の売却益がそれに続きます。
経常利益までの伸びは1割強で、営業利益とほぼ同じです。純利益との差は、主にこの一度きりの利益から来ています。
制服の在庫が余り、決算のあとに制服の子会社を一つにまとめる
衣料繊維は、売上が少し増えたのに営業利益が4割近く減りました。理由として会社が挙げているのは、学校制服用の生地の流通在庫が多すぎることです。昨年度から続いている、とあります。
短信の最後の注記に、これに関係する決定が載っていました。9月25日に、制服関係の子会社3社を合併させると決めています。目的は「少子化や需要構造の変化といったユニフォーム市場の環境変化に対応」することです。12月1日に1社にまとまり、ニッケメイトという名前になります。
在庫が多すぎるという説明は短信の前のほうに、制服の子会社を合併させる決定は最後の注記に書かれています。余った在庫が一時的な話なのか、子どもの数という戻らない話なのか。後者まで含めて手を打っている、と私は受け取りました。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
いつもどおり現金の流れを確かめに行くと、注記にこう書いてありました。「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」。第3四半期で作らない会社は珍しくありません。……仕方がない、貸借対照表の差で追います。
| 貸借対照表 | 2025年11月末 | 2026年8月末 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 290億2,300万円 | 314億4,500万円 |
| 受取手形、売掛金及び契約資産 | 276億3,700万円 | 187億9,000万円 |
| 短期借入金 | 116億200万円 | 94億2,900万円 |
| 自己株式 | 74億3,000万円 | 113億5,800万円 |
売掛金が88億4,600万円減り、その分が入金になったと考えるのが自然です。そのお金で短期の借入を返し、自社株を39億5,600万円分取得しています。それでも預金は24億2,200万円増えました。これは314億4,500万円から290億2,300万円を引いた数字です。
棚卸資産も28億800万円増えていますが、どの事業の在庫かは短信では分けて示されていません。8月末に売掛金が少ないのが毎年の季節的な動きなのかも、前年の8月末の貸借対照表が短信に無いので確かめられませんでした。
会社の説明は、事業ごとには細かい
説明文は丁寧です。エアバッグ用の糸は引き合いが増え、工場の自動化設備は顧客が投資を控えて低調だった、と分野ごとに書いてあります。良い話も悪い話も並べていて、ここはそのまま受け取ります。
ただ、通期の予想については「2026年1月15日公表の予想数値より変更ありません」の一文だけでした。表紙には、補足説明資料も説明会も「無」とあります。一方で配当の予想は今回見直していて、期末に記念配当10円を足しました。利益の予想は動かさず、配当だけを動かしたことになります。
残り3か月で、売上だけが急に増える置き方
| 通期予想 | 第3四半期まで | 進み具合 | 残り3か月に必要 | 前年の同じ3か月比 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,300億円 | 891億8,600万円 | 68.6% | 408億1,400万円 | +26.4% |
| 営業利益 | 130億円 | 86億7,300万円 | 66.7% | 43億2,700万円 | +1.9% |
| 経常利益 | 134億円 | 97億3,000万円 | 72.6% | 36億7,000万円 | −15.9% |
| 純利益 | 95億円 | 70億4,400万円 | 74.1% | 24億5,600万円 | −30.6% |
進み具合と右の2列は、私が表紙の予想から引いて割ったものです。
利益の進み方は3分の2から4分の3で、9か月目の目安とほぼ並んでいます。経常利益と純利益は、残り3か月が前年より少なくても届く数字です。
引っかかったのは売上です。直前の四半期と比べると、この予想の大きさがはっきりします。上期までの売上は597億1,000万円でした。891億8,600万円から引くと、6月から8月の3か月は294億7,600万円です。次の9月から11月に要るのは408億1,400万円で、直前の3か月より4割近く多い数字になります。
前年の同じ3か月と比べても、売上は4分の1増、営業利益はほぼ横ばいです。前年と同じ利益を、ずっと多い売上で稼ぐ置き方になっています。……売上の数字だけ、別の年から持ってきたみたいだ。
利益の予想は今の姿に近く、売上は1月のままだと考えます
私は、利益の予想は今の実態に近く、売上の予想は1月に立てたまま直していない数字だと考えています。理由は、利益はここまでの進み方で説明が付き、売上は付かないからです。カコテクノスの連結は第1四半期から入っているので、9か月分の売上にすでに含まれています。
9月から11月に大きな納品や引き渡しを見込んでいるのかもしれません。それが何なのかは、短信からは分かりません。この先どうなるかも知りません。
出典:決算短信(会社発表)
残り3か月で売上を4分の1増やす前提が何なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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