はじめに
ジンズホールディングスは、眼鏡の店『ジンズ』を国内外で展開している会社です。フレームもレンズも自社で企画し、作らせ、自社の店で売っています。店はショッピングモールや駅ビル、郊外の道沿いにあります。その場で視力を測り、レンズを入れた眼鏡を当日のうちに受け取れるのが特徴です。
客は、一日中画面を見ている会社員、子どもの眼鏡を作り直す親、度が進んで買い替える人です。眼鏡は使う人にとって生活の道具で、度が合わなくなれば買い直します。海外では中国と台湾の店が多く、ベトナムやフィリピンにも広げ始めています。
この決算で何が起きたか
10月9日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,112億2,000万円 | 972億1,500万円 | +14.4% |
| 営業利益 | 114億5,400万円 | 120億9,300万円 | △5.3% |
| 経常利益 | 115億1,000万円 | 121億2,100万円 | △5.0% |
| 純利益 | 77億9,700万円 | 83億3,000万円 | △6.4% |
売上は1割以上増え、利益は4つとも少しずつ減りました。
国内は売上が1割増えて、利益が2割近く減った
短信の5ページ目と17ページ目に、国内と海外に分けた数字があります。
| 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 国内 | 847億700万円 | +10.5% | 92億3,500万円 | △18.6% |
| 海外 | 265億1,200万円 | +29.0% | 22億1,900万円 | +197.8% |
海外は利益が3倍近くになりました。台湾では25店を出し、閉めた店はゼロでした。ベトナムでも4店を新しく開いています。全体の減益は、国内の側で起きています。
国内は55店を出して4店を閉じ、売上は1割増えました。それでも利益は、前年の113億4,800万円から92億3,500万円になりました。減った額は21億1,300万円です。売上が増えて利益が減るなら、どこかに増えた費用があるはずです。
ソフトウエアが3倍余りに膨らんでいた
引っかかったのは、9ページ目の貸借対照表でした。無形固定資産のソフトウエアが、24億1,500万円から81億5,700万円へ増えています。一方で、作りかけのシステムを入れておくソフトウエア仮勘定は、32億6,100万円から21億3,200万円へ減りました。作っていたものが出来上がり、使い始めた形です。
使い始めたソフトウエアは、そこから減価償却が始まります。14ページ目のキャッシュ・フロー計算書で、減価償却費は29億4,600万円から41億4,800万円になりました。差は12億200万円です。この中には、新しい店の建物の分も入っています。
これを営業利益の減り幅と比べます。120億9,300万円から114億5,400万円を引きます。減ったのは6億3,900万円です。償却の増加分は、減益の幅の倍近くあります。……償却の増え方だけで、減益に説明が付いてしまう。
国内に絞っても向きは同じです。国内の減価償却費は21億4,500万円から31億3,400万円になりました。増えたのは9億8,900万円です。国内の減益21億1,300万円の半分近くが、これで埋まります。残りの半分を何が占めるのかは、短信の数字からは分けられませんでした。
システムの代金は、まだ払い終わっていない
現金の動きも追いました。10ページ目の負債の部で、長期未払金が25億5,700万円から70億7,400万円へ増えています。
営業キャッシュ・フローは108億9,800万円で、純利益を上回りました。投資キャッシュ・フローは81億4,500万円の支出で、そのうち無形固定資産の取得が49億700万円です。108億9,800万円から81億4,500万円を引きます。残るのは27億5,300万円です。配当の支払いが25億300万円なので、手元に残る分はほとんどありません。
長期未払金が何の代金なのかは、決算短信には書かれていません。財務キャッシュ・フローに「割賦債務の返済による支出」が10億600万円あります。長期未払金の増え方と合わせて、システムの代金の一部を分割で払う形にした、と私は受け取りました。償却は損益計算書に、残りの支払いは今後の現金の動きに、それぞれ何年か続くことになります。
会社はどう説明しているか
4ページ目では、売上の伸びを「主に国内アイウエア事業の既存店売上高の増加」と説明しています。国内の節には、レンズもフレームも高単価の商品が好調だったと書かれています。銀座の旗艦店は、来店客の約8割が海外からの客だそうです。
国内の利益が減った理由は、決算短信の国内の節には書かれていません。8ページ目の見通しの中に、人件費の上昇や消費財の価格高騰によるコスト増が「顕在化」している、という一文があります。同じ節で、AIやグローバル共通の基幹システムの導入を挙げています。ソフトウエアの増え方と合う話です。
損益計算書では、売上総利益が113億6,800万円増え、販売費及び一般管理費が120億800万円増えました。粗利は売上についてきていて、販売費などの増え方が、粗利の増えた分を少し上回りました。その差が、営業利益の減った分です。売上の説明はそのまま受け取ります。ただ、増えた費用のうちどれが一時的でどれが続くのかを、会社は短信の中で分けていません。
来期の予想は、上期に谷を作っている
表紙に載っている来期の予想は、通期の営業利益が115億円で、今期とほぼ同じです。ところが上期だけを見ると、38億6,000万円で前年より2割以上減る見込みです。
| 営業利益 | 今期 実績 | 来期 会社予想 |
|---|---|---|
| 上期 | 約49億3,000万円 | 38億6,000万円 |
| 下期 | 約65億2,000万円 | 約76億4,000万円 |
| 通期 | 114億5,400万円 | 115億円 |
約の付いた数字は、私の計算です。上期は表紙の増減率△21.7%から割り戻し、下期は通期から上期を引きました。来期の上期は今期より21.7%減って38億6,000万円になる予想です。38億6,000万円を0.783で割ると、今期の上期はおよそ49億3,000万円になります。
上期に10億円以上減らし、下期で取り返して、年間では前年並みに戻す予想です。なぜそう置いたのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、説明会の資料には理由があるのかもしれませんが、私はまだ開いていません。
配当にも似た形があります。年間104円は変わりません。中間は今期の47円から35円に下がります。期末は69円です。上期の利益が薄いことを、配当の割り振りにも反映させたように見えます。
私はどう読んだか
国内の減益をどう受け取るかで、見方は2つに分かれます。国内の店で稼ぐ力そのものが落ちてきたのか。新しいシステムの償却が先に費用として出てきたのか。
私は後者の見方をしています。理由は、国内の売上が1割増え、高単価の商品が売れ、粗利も売上についてきているからです。全体の減益は、償却の増加分だけで説明が付きます。売れなくなった会社の数字とは違います。
ただ、心配性なので気になるところも残ります。償却は数年続き、分割の支払いも残っています。人件費の上昇は、償却と違って期限がありません。来期の上期に谷を作ったのは、償却が通年で効き始めるからだと思いますが、人件費の分がどれだけ混ざっているのかは分かりません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
国内の減益21億1,300万円のうち、償却以外の残り半分が何の費用だったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント