はじめに
スーパードライのアサヒです。ただ、この会社をビールの会社とだけ思っていると、短信を読んだときに戸惑います。売上の3分の2ほどは海外で、欧州ではペローニ、豪州ではグレートノーザンといったブランドを持ち、飲むのはチェコやイタリアやオーストラリアの人たちです。国内では三ツ矢サイダーやウィルキンソン、ミンティアも作っています。酒と飲料と食品を、世界のあちこちで売っている持株会社です。
そしてこの会社は、昨年の秋にサイバー攻撃を受けて国内の受発注が止まり、決算発表の延期にまで追い込まれました。今回の短信は、その詫びの一文から始まっています。詫びから始まる短信は、そう多くありません。
その会社が出してきた中間決算の見出しが「営業利益56%増」でした。……いや、この数字はそのまま受け取れない。読みに行きます。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,463,963 | 1,359,551 | +7.7% |
| 営業利益 | 144,143 | 92,269 | +56.2% |
| 純利益 | 99,148 | 58,725 | +68.8% |
(単位:百万円。IFRSなので経常利益の行はありません)
1ページ目だけ見れば、増収で利益は5割増し。文句のつけようがない表です。ここで閉じると、この決算の話は半分も分かりません。
最初の表では分からなかったこと
会社自身の指標では、ほぼ横ばい
この会社は「事業利益」という独自の指標を出しています。売上から原価と販管費だけを引いた、恒常的な稼ぐ力を測る数字です。これが1,113億5千4百万円で、前年同期比+1.5%。営業利益の+56.2%とは、まるで違う顔をしています。
さらに会社は、為替を前年と同じレートに固定した場合の数字も自分で印字しています。売上収益は△0.6%、事業利益は△8.5%。つまり為替の追い風を外すと、この中間期は減収減益だったと、会社自身が4ページ目に書いています。
差を埋めていたもの
では+1.5%と+56.2%の間には何が挟まっているのか。損益計算書を見ると、「その他の営業収益」が前年の2,143から44,072へ膨らんでいます。そしてキャッシュ・フロー計算書に、固定資産除売却損益が341億3千3百万円の益として顔を出します。
ここに引っかかりました。この341億円は、1ページ目の業績表のどこにも出てきません。損益計算書とキャッシュ・フロー計算書まで来て、初めて姿が見えます。
もう一つ、手がかりがあります。セグメント別の表で、日本・東アジアの事業利益は504億5百万円で△11.2%と減っているのに、同じセグメントの営業利益は802億2千7百万円で+94.9%と、ほぼ倍になっています。この差は約298億円――これは私が引き算した数字です――で、売却益のかなりの部分が国内側に乗っている、という読み方ができます。私の読み違いかもしれませんが、事業の稼ぎが減ったセグメントで、営業利益だけが倍増する理由は、他に見当たりません。
良い話も最初の表には無い
悪い話ばかりではありません。営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期が25億5千4百万円の支出でした。ビールを1兆円以上売る会社の営業CFがマイナスというのは異常な姿で、今回は1,314億8千4百万円の収入に戻っています。運転資本の効率化と、税引前利益の回復が効いたと会社は書いています。現金は期首の1,563億円から2,430億円まで積み上がりました。稼いだ金が現金で入ってくる形は、戻っています。これも1ページ目には書いていない話です。
会社はどう説明しているか
会社の説明は率直です。売上7.7%増・事業利益1.5%増と述べたすぐ後に、「為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比0.6%の減収、事業利益は前年同期比8.5%の減益」と自分で書いています。国内はシステム障害の影響と原材料関連費用の増加で事業利益△11.2%、欧州もアジアパシフィックも、為替を固定すれば事業利益は微減。飾らずに書いてあるので、私はこの説明文はそのまま受け取ります。見かけの数字を大きく見せようとする書き方では、ありませんでした。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は7月8日に公表したものから変更なし。営業利益は通期2,970億円(+59.8%)を置いています。中間で1,441億円ですから、時期の目安である半分のあたりまでは来ています。ただし上で見たとおり、中間の営業利益には一時的な売却益が含まれます。下期に同じものはありません。通期の+59.8%という伸び率が、恒常的な稼ぐ力の伸びとして読める数字でないことは、中間と同じです。
配当は中間26円を払い、期末31円の予想で年57円。前期の52円から積む予想を、据え置いています。
私はどう読んだか
私は慎重なほうに寄せて読んでいます。理由は、会社が自分で印字した為替一定の数字が、事業利益△8.5%だからです。見出しの+56.2%は、為替と資産売却で二重に化粧された数字で、素顔は微減益。サイバー攻撃からの回復途上という事情を差し引いても、稼ぐ力そのものが伸びた決算とは読めませんでした。
ただし、営業CFの回復と現金の積み上がりは化粧ではありません。血の巡りは戻っている。稼ぐ力の回復はこれから、という決算だと読みました。読み違えかもしれません。
出典:決算短信(会社発表)

約341億円の固定資産売却益が、何を売って出たものなのかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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