資生堂(4911)2026年12月期 中間決算分析――現金の減り方が、まだ腑に落ちない

資生堂(4911)2026年12月期 中間決算分析――現金の減り方が、まだ腑に落ちない 決算を読む

百貨店のカウンターから、空港の免税店まで

資生堂は化粧品の会社です。化粧水や美容液のようなスキンケア、ファンデーション、香水を作り、自社のブランドで売っています。お客さんは、百貨店のカウンターで肌の相談をしながら選ぶ人、ドラッグストアで手に取る人、旅行の帰りに空港の免税店に寄る人です。

売り場は国内だけではありません。短信は事業を地域で分けています。日本、中国と世界の免税店、アジア・オセアニア、米州、欧州です。日本の事業には、美容食品や一般用の医薬品も入っています。

ですから、日本の百貨店で売れたかどうかだけでは、この会社の半年は分かりません。どの地域で、どの通貨で稼いだのかが効いてきます。今回もそこでした。

利益は2倍を超えました

8月5日に出た中間決算です。1月から6月までの半年分を並べます。

項目今回前年同期増減率
売上高4,989億6,500万円4,698億3,100万円+6.2%
営業利益419億2,500万円180億8,400万円+131.8%
税引前中間利益442億円192億0,200万円+130.2%
純利益296億9,700万円95億3,500万円+211.4%

IFRSの会社なので経常利益はありません。その行には税引前中間利益を入れています。売上は6%の伸びなのに、純利益は3倍を超えています。

売上の伸びは、為替を外すとほぼ消えます

短信の4ページ目、業績の表の下に、表紙には無い率が2つ載っています。為替の影響を除いた外貨増減率が△0.6%、事業売却の影響も除いた実質増減率が△0.2%です。

円で数えると6%増えた売上が、現地の通貨で数えると横ばいです。……売上そのものは増えていないのか。中国・免税店も円では1割増えていますが、外貨増減率は△0.1%でした。

それでも利益は増えています。損益計算書では、売上原価が1,066億0,800万円から1,060億7,100万円へ動いていました。減った額は5億円ほどです。売上が291億円増えたのに、原価はほぼ動いていません。ここまでは損益計算書の数字です。

利益の増え方は、売れた量ではなく費用の側から来ている、と私は受け取りました。

米州が赤字を抜けたのは、前年の人員削減のあとでした

地域ごとの本業の利益を並べます。会社はコア営業利益と呼んでいて、構造改革などの一時的な損益を除いた数字です。

地域前年上期今年上期
日本195億0,600万円209億1,100万円
中国・免税店388億1,100万円476億3,000万円
アジアパシフィック△1億2,900万円22億2,200万円
米州△58億3,000万円20億1,500万円
欧州△25億5,700万円△33億9,300万円

引っかかったのは米州です。売上は現地通貨でわずかに減っているのに、58億円の赤字が20億円の黒字に変わっています。

手がかりは短信の最後、18ページ目にありました。前年上期の構造改革費用48億1,700万円について、「米州事業の人員削減に係る費用等」と書かれています。前年に人を減らす費用を払い、今年は米州が黒字に戻りました。売上が伸びないまま利益が戻ったことと、辻褄が合います。

同じページには、今期の構造改革費用19億5,200万円に、台湾子会社の新竹工場を閉じる費用が含まれる、とあります。米州の整理のあと、次の整理が工場に向かい始めたことになります。欧州だけは赤字が広がりました。

利益は2倍、入ってきた現金は減りました

キャッシュ・フロー計算書は13ページ目にあります。

項目前年上期今年上期
税引前中間利益192億0,200万円442億円
減価償却費及び償却費354億1,100万円359億1,000万円
営業債務の増減△287億7,100万円△243億2,200万円
その他の流動負債の増減△8億7,200万円△95億4,200万円
その他△18億9,600万円△153億2,500万円
法人所得税の支払額△22億4,600万円△58億1,200万円
営業キャッシュ・フロー378億8,800万円316億4,200万円

利益が倍以上になった半年に、営業で入ってきた現金は62億円減っています。税金の支払いが増えたのは、利益が増えた以上は自然です。

いちばん大きく動いたのは、名前の付いていない「その他」でした。19億円ほどの支出が、153億円になっています。……これは大きい。

15ページ目の注記に、手がかりが1つあります。前年まで別の行だった「構造改革引当金の増減額」が、今期から「その他」にまとめられました。貸借対照表でも、流動負債の引当金が77億3,400万円から40億4,400万円に減っています。引当金として積んでおいた構造改革の費用を、この半年で払った分が入っている、と私は考えました。ただ、引当金の減りは37億円ほどで、153億円には届きません。

利益が増えた理由は、別の資料に回されていました

短信の4ページ目、経営成績の説明は、表のあとに一文があるだけです。経営成績と地域ごとの概況は、同じ日に出した「2026年第2四半期(中間期)決算説明資料」を参照してほしい、とあります。

利益が倍になった理由も、欧州の赤字が広がった理由も、決算短信には書かれていません。説明資料のほうにあるのでしょうが、私はまだ開いていません。

キャッシュ・フローには、6ページ目に会社自身の説明文があります。その説明文は営業債務やその他の流動負債まで挙げていますが、いちばん大きく動いた「その他」には、決算短信の中では触れていません。私は、この「その他」は構造改革の支払いだけでは説明が付かないと見ています。

下期の利益は、上期の半分強と置かれています

項目通期予想上期実績進み具合
売上高9,900億円4,989億6,500万円約50%
コア営業利益690億円444億3,200万円約64%
営業利益590億円419億2,500万円約71%
純利益420億円296億9,700万円約71%

約の付いた数字は、上期実績を通期予想で割った私の計算です。

売上はちょうど半分、利益は半年で7割まで来ました。それでも予想は、2月10日に出したものから変わっていません。

前年と並べると、下期の見込みの控えめさがはっきりします。表紙のコア営業利益の予想690億円は、前期比+55.0%です。690億円を1.55で割ると、前期の通期はおよそ445億円です。そこから前年上期の233億7,200万円を引くと、前年の下期はおよそ211億円になります。今期の下期は、690億円から上期の444億3,200万円を引いて出します。答えは245億6,800万円です。前年の下期より1割半ほど多いだけで、今期の上期の6割に届きません。

新竹工場の閉鎖費用がかさむから、とは言えません。理由は、コア営業利益は構造改革費用を除いた数字だからです。何か悪い材料を見込んでいるはずですが、中身は分かりません。

利益の改善は、費用の側で起きたと考えています

私は、この半年の利益の改善は本物で、売上ではなく費用の側で起きたという見方をしています。理由は、現地通貨で売上が横ばいのまま、米州とアジアパシフィックが黒字に戻ったからです。米州については、前年に人員削減の費用を払ったことが短信に書かれています。

ただ、心配性なので、現金のほうは割り引いて受け取っています。構造改革の支払いならいずれ終わりますが、そうでないなら話が変わります。中間配当は前年の20円から30円に増えました。この先どうなるかは知りません。

出典

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260804508808.pdf

営業キャッシュ・フローの「その他」153億2,500万円のうち、構造改革の支払いを除いた残りが何なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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