百貨店のカウンターから、空港の免税店まで
資生堂は化粧品の会社です。化粧水や美容液のようなスキンケア、ファンデーション、香水を作り、自社のブランドで売っています。お客さんは、百貨店のカウンターで肌の相談をしながら選ぶ人、ドラッグストアで手に取る人、旅行の帰りに空港の免税店に寄る人です。
売り場は国内だけではありません。短信は事業を地域で分けています。日本、中国と世界の免税店、アジア・オセアニア、米州、欧州です。日本の事業には、美容食品や一般用の医薬品も入っています。
ですから、日本の百貨店で売れたかどうかだけでは、この会社の半年は分かりません。どの地域で、どの通貨で稼いだのかが効いてきます。今回もそこでした。
利益は2倍を超えました
8月5日に出た中間決算です。1月から6月までの半年分を並べます。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,989億6,500万円 | 4,698億3,100万円 | +6.2% |
| 営業利益 | 419億2,500万円 | 180億8,400万円 | +131.8% |
| 税引前中間利益 | 442億円 | 192億0,200万円 | +130.2% |
| 純利益 | 296億9,700万円 | 95億3,500万円 | +211.4% |
IFRSの会社なので経常利益はありません。その行には税引前中間利益を入れています。売上は6%の伸びなのに、純利益は3倍を超えています。
売上の伸びは、為替を外すとほぼ消えます
短信の4ページ目、業績の表の下に、表紙には無い率が2つ載っています。為替の影響を除いた外貨増減率が△0.6%、事業売却の影響も除いた実質増減率が△0.2%です。
円で数えると6%増えた売上が、現地の通貨で数えると横ばいです。……売上そのものは増えていないのか。中国・免税店も円では1割増えていますが、外貨増減率は△0.1%でした。
それでも利益は増えています。損益計算書では、売上原価が1,066億0,800万円から1,060億7,100万円へ動いていました。減った額は5億円ほどです。売上が291億円増えたのに、原価はほぼ動いていません。ここまでは損益計算書の数字です。
利益の増え方は、売れた量ではなく費用の側から来ている、と私は受け取りました。
米州が赤字を抜けたのは、前年の人員削減のあとでした
地域ごとの本業の利益を並べます。会社はコア営業利益と呼んでいて、構造改革などの一時的な損益を除いた数字です。
| 地域 | 前年上期 | 今年上期 |
|---|---|---|
| 日本 | 195億0,600万円 | 209億1,100万円 |
| 中国・免税店 | 388億1,100万円 | 476億3,000万円 |
| アジアパシフィック | △1億2,900万円 | 22億2,200万円 |
| 米州 | △58億3,000万円 | 20億1,500万円 |
| 欧州 | △25億5,700万円 | △33億9,300万円 |
引っかかったのは米州です。売上は現地通貨でわずかに減っているのに、58億円の赤字が20億円の黒字に変わっています。
手がかりは短信の最後、18ページ目にありました。前年上期の構造改革費用48億1,700万円について、「米州事業の人員削減に係る費用等」と書かれています。前年に人を減らす費用を払い、今年は米州が黒字に戻りました。売上が伸びないまま利益が戻ったことと、辻褄が合います。
同じページには、今期の構造改革費用19億5,200万円に、台湾子会社の新竹工場を閉じる費用が含まれる、とあります。米州の整理のあと、次の整理が工場に向かい始めたことになります。欧州だけは赤字が広がりました。
利益は2倍、入ってきた現金は減りました
キャッシュ・フロー計算書は13ページ目にあります。
| 項目 | 前年上期 | 今年上期 |
|---|---|---|
| 税引前中間利益 | 192億0,200万円 | 442億円 |
| 減価償却費及び償却費 | 354億1,100万円 | 359億1,000万円 |
| 営業債務の増減 | △287億7,100万円 | △243億2,200万円 |
| その他の流動負債の増減 | △8億7,200万円 | △95億4,200万円 |
| その他 | △18億9,600万円 | △153億2,500万円 |
| 法人所得税の支払額 | △22億4,600万円 | △58億1,200万円 |
| 営業キャッシュ・フロー | 378億8,800万円 | 316億4,200万円 |
利益が倍以上になった半年に、営業で入ってきた現金は62億円減っています。税金の支払いが増えたのは、利益が増えた以上は自然です。
いちばん大きく動いたのは、名前の付いていない「その他」でした。19億円ほどの支出が、153億円になっています。……これは大きい。
15ページ目の注記に、手がかりが1つあります。前年まで別の行だった「構造改革引当金の増減額」が、今期から「その他」にまとめられました。貸借対照表でも、流動負債の引当金が77億3,400万円から40億4,400万円に減っています。引当金として積んでおいた構造改革の費用を、この半年で払った分が入っている、と私は考えました。ただ、引当金の減りは37億円ほどで、153億円には届きません。
利益が増えた理由は、別の資料に回されていました
短信の4ページ目、経営成績の説明は、表のあとに一文があるだけです。経営成績と地域ごとの概況は、同じ日に出した「2026年第2四半期(中間期)決算説明資料」を参照してほしい、とあります。
利益が倍になった理由も、欧州の赤字が広がった理由も、決算短信には書かれていません。説明資料のほうにあるのでしょうが、私はまだ開いていません。
キャッシュ・フローには、6ページ目に会社自身の説明文があります。その説明文は営業債務やその他の流動負債まで挙げていますが、いちばん大きく動いた「その他」には、決算短信の中では触れていません。私は、この「その他」は構造改革の支払いだけでは説明が付かないと見ています。
下期の利益は、上期の半分強と置かれています
| 項目 | 通期予想 | 上期実績 | 進み具合 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,900億円 | 4,989億6,500万円 | 約50% |
| コア営業利益 | 690億円 | 444億3,200万円 | 約64% |
| 営業利益 | 590億円 | 419億2,500万円 | 約71% |
| 純利益 | 420億円 | 296億9,700万円 | 約71% |
約の付いた数字は、上期実績を通期予想で割った私の計算です。
売上はちょうど半分、利益は半年で7割まで来ました。それでも予想は、2月10日に出したものから変わっていません。
前年と並べると、下期の見込みの控えめさがはっきりします。表紙のコア営業利益の予想690億円は、前期比+55.0%です。690億円を1.55で割ると、前期の通期はおよそ445億円です。そこから前年上期の233億7,200万円を引くと、前年の下期はおよそ211億円になります。今期の下期は、690億円から上期の444億3,200万円を引いて出します。答えは245億6,800万円です。前年の下期より1割半ほど多いだけで、今期の上期の6割に届きません。
新竹工場の閉鎖費用がかさむから、とは言えません。理由は、コア営業利益は構造改革費用を除いた数字だからです。何か悪い材料を見込んでいるはずですが、中身は分かりません。
利益の改善は、費用の側で起きたと考えています
私は、この半年の利益の改善は本物で、売上ではなく費用の側で起きたという見方をしています。理由は、現地通貨で売上が横ばいのまま、米州とアジアパシフィックが黒字に戻ったからです。米州については、前年に人員削減の費用を払ったことが短信に書かれています。
ただ、心配性なので、現金のほうは割り引いて受け取っています。構造改革の支払いならいずれ終わりますが、そうでないなら話が変わります。中間配当は前年の20円から30円に増えました。この先どうなるかは知りません。
出典
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260804508808.pdf
営業キャッシュ・フローの「その他」153億2,500万円のうち、構造改革の支払いを除いた残りが何なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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