オハラは、光学ガラスを作っている会社です。レンズになる前のガラスを溶かして固めるところから手がけていて、買い手は交換レンズやミラーレスカメラを作るメーカーです。
もう一つの柱がエレクトロニクス事業で、こちらはカメラとは別の世界です。半導体やディスプレイの露光装置に組み込まれる石英ガラス、AIサーバーのプリント基板に使われる低誘電ガラス、光通信機器に入るガラスがここに入ります。
この会社を「レンズの会社」で止めている人は多いと思います。私もそうでした。今回は、二つ目の柱に紙面の多くを使います。
この決算で何が起きたか
9月11日に出た、2026年10月期の第3四半期決算です。同じ日に通期予想の上方修正も出ています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 242億3,000万円 | 210億6,700万円 | +15.0% |
| 営業利益 | 13億9,500万円 | 15億7,100万円 | △11.2% |
| 経常利益 | 18億800万円 | 19億5,500万円 | △7.5% |
| 純利益 | 11億4,900万円 | 11億3,000万円 | +1.7% |
純利益だけが前年を少し上回っていますが、本業の外で稼いだ分です。持分法による投資利益が、前年の8,572万円から1億4,769万円に増えました。そこに固定資産売却益9,706万円が特別利益として乗りました。営業利益の減りを、この2つで埋めた形です。
売上が15%増えて、粗利は1%も増えていない
損益計算書の2行目で引っかかりました。売上原価です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 242億3,000万円 | 210億6,700万円 |
| 売上原価 | 175億9,600万円 | 144億9,200万円 |
| 売上総利益 | 66億3,300万円 | 65億7,400万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 52億3,700万円 | 50億300万円 |
売上より原価のほうが速く増え、売上総利益はほとんど動いていません。そこに人件費の増えた販管費が乗りました。ここまでは損益計算書の数字です。
会社は4ページ目で、光事業の利益を押し下げたものを3つ挙げています。原材料費の高騰、レアアース調達リスクへの対応、中国における増値税還付の廃止です。3つ目は、中国から輸出するときに戻ってくるはずだった税金が戻らなくなった、という話に読めます。……これは、値上げでは取り返しにくい種類の費用だ。
2つ目の「調達リスク対応」という言い方も、原料の値上がりとは違う話をしています。手に入らなくなる場合に備えて、高くても先に押さえた、と私は受け取りました。会社が何を心配しているかが、この一語に出ています。
光事業は赤字が縮み、エレクトロニクスは利益が2割減った
1ページ目には出てこない、事業ごとの数字です。
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期 |
|---|---|---|---|---|
| 光事業 | 131億2,300万円 | +18.4% | △1億7,800万円 | △4億1,500万円 |
| エレクトロニクス事業 | 111億600万円 | +11.3% | 15億7,400万円 | 19億8,700万円 |
光事業はまだ赤字です。稼いでいるのはエレクトロニクス事業で、売上が伸びたのに利益が2割減っています。伸びたのは特殊ガラスで、71億1,700万円と2割近く増えました。低誘電ガラスと光通信機器向けです。石英ガラスは39億8,900万円で、前年と同じ水準です。
利益が減った理由として会社側が挙げるのは、上期にあった半導体露光装置向け製品の在庫調整です。それで製品の組み合わせが変わった、とあります。稼ぎ頭の製品が一時減り、伸びている製品で売上を埋めた形です。
キャッシュ・フロー計算書はこの短信に無いので、在庫と現金を見た
第3四半期の短信にキャッシュ・フロー計算書を載せない会社は多く、オハラもそうです。注記に「作成しておりません」の一文と、減価償却費だけが載っています。代わりに、貸借対照表の在庫と現金を並べました。
| 項目 | 前期末(2025年10月31日) | 今回(2026年7月31日) |
|---|---|---|
| 商品及び製品 | 33億7,021万円 | 32億3,088万円 |
| 仕掛品 | 83億2,172万円 | 78億4,291万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 43億1,495万円 | 38億475万円 |
| 現金及び預金 | 143億6,172万円 | 151億9,955万円 |
売上が伸びる会社は在庫も膨らみやすいものですが、3つとも減っています。現金は8億3,700万円増えました。この動きだけを取れば、健全です。
腑に落ちないのは、会社が第4四半期に「棚卸資産整理に伴う一時的な費用」を見込んでいることです。理由は「製品に対する顧客要求事項の変化」とあります。顧客の求める仕様が変わって、作ってあった製品が売れないものになった、と私は読みました。金額は決算短信には書かれていません。
もう一つ、小さい数字ですが貸倒引当金が前期末の2,583万円から1億529万円に増えています。売掛金が増えた分より速い増え方で、理由は短信にありません。
会社はどう説明しているか
上方修正の理由は6ページ目にあります。売上は3点です。光事業でデジタルカメラ向けの高単価な製品が想定を上回ったこと、エレクトロニクス事業で半導体露光装置向けの需要回復が進んだこと、データセンター投資で光通信機器向けが増えていることです。
利益の説明はこうです。光事業は、価格改定の効果が浸透する一方で、第4四半期に棚卸資産整理の費用が出るとあります。エレクトロニクス事業のほうは、増収に加えて製品ミックスの改善で収益性が上がる、という説明です。事業ごとの通期予想では、光事業の営業損失を前回予想の4億円から5億円へ広げました。エレクトロニクス事業の営業利益は22億円から26億円へ引き上げています。
棚卸資産整理の費用が、売上の上振れを食っています。ここは、そのまま受け取ります。理由は、会社自身がそう書いているからです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 第3四半期まで | 進み具合 | 残り3か月に必要な額 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 337億円 | 242億3,000万円 | 約72% | 94億7,000万円 |
| 営業利益 | 21億円 | 13億9,500万円 | 約66% | 7億500万円 |
| 経常利益 | 25億円 | 18億800万円 | 約72% | 6億9,200万円 |
| 純利益 | 16億円 | 11億4,900万円 | 約72% | 4億5,100万円 |
進み具合と残りの額は、通期予想と第3四半期までの数字から出した私の計算です。
営業利益だけ、3分の2にとどまっています。残り3か月に7億500万円が要ります。前期実績は17億9,400万円で、前年の第3四半期までは15億7,100万円でした。引き算をすると、前年の同じ3か月は2億2,300万円です。残り3か月に要る7億500万円は、その3倍以上です。これがこの記事でいちばん引っかかった数字です。
事業ごとに分けると、どこで稼ぐ前提なのかが見えます。
| 営業利益 | 第3四半期までの9か月 | 8月から10月の3か月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 光事業(前年) | △4億1,500万円 | 約△3億8,400万円 | △7億9,900万円 |
| 光事業(今年) | △1億7,800万円 | 約△3億2,200万円 | △5億円(会社予想) |
| エレクトロニクス(前年) | 19億8,700万円 | 約6億600万円 | 25億9,300万円 |
| エレクトロニクス(今年) | 15億7,400万円 | 約10億2,600万円 | 26億円(会社予想) |
約の付いた数字は、通期から9か月分を引いて出しました。エレクトロニクス事業は、9か月で15億7,400万円ですから、四半期に直せば5億円強のペースです。それを最後の3か月だけ10億2,600万円としています。前年の同じ3か月の6億600万円と比べても、7割近く多くなります。光事業は赤字が続く前提なので、上方修正した利益は全部エレクトロニクスが担う形です。
通期の純利益予想が前期実績の17億3,000万円を下回っている点も、気になります。営業利益も経常利益も前期を上回る予想なのに、純利益だけ減る理由は決算短信には書かれていません。表紙に補足説明資料が有ると書いてあるので、そちらにあるのかもしれませんが、まだ読んでいません。
私はどう読んだか
上期に在庫調整があり、下期に戻る。会社の筋書きはそれで、説明としては通っています。第3四半期までの数字にも、その方向は出ています。
それでも私は、この決算を弱いほうに読んでいます。目に入るのは光事業の赤字です。理由は、売上が伸びているのに通期の赤字予想を広げてきたからです。顧客の仕様が変わって在庫が売れなくなる、という費用は、一時的と書いてあります。ただ、仕様の変化そのものは戻りません。次の期にも同じことが起きないかを、四半期ごとに確かめるつもりです。
エレクトロニクスの最後の3か月にある10億2,600万円は、会社が「需要回復が進展している」と書いたことに乗っています。その根拠を、私は短信の外で確かめられていません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

第4四半期に見込む棚卸資産整理の費用がいくらで、どの製品のものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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