無印良品の会社です。靴下、ノート、収納ケース、レトルトカレー、ベッド。値札より先に品物の名前が目に入る、あの店です。
中国大陸から欧米まで、買っているのはそれぞれの街で暮らしている普通の人です。週末に足りないものを買い足しに寄る店として使われています。
私がここで買うのは、だいたい靴下と緑茶です。今回は、客としてよく知っている店の短信を、財務の人間として読み直す回になりました。
この決算で何が起きたか
7月10日に出た第3四半期決算です。2025年9月から2026年5月までの9か月分になります。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,907億8,800万円 | 5,910億9,300万円 | +16.9% |
| 営業利益 | 808億2,200万円 | 594億600万円 | +36.0% |
| 経常利益 | 823億9,600万円 | 578億2,600万円 | +42.5% |
| 純利益 | 585億5,300万円 | 435億9,100万円 | +34.3% |
4段とも増えました。売上より利益の伸びが大きいときは、原価か販管費のどちらかで何かが起きています。それを探しに、後ろのページへ行きました。
営業利益率が1.6ポイント上がった中身
損益計算書は8ページ目です。営業原価と販管費を営業収益で割ってみました。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 営業原価率 | 約48.8% | 約47.5% |
| 販管費率 | 約41.2% | 約40.8% |
| 営業利益率 | 10.1% | 11.7% |
上の2行は、損益計算書の各項目を営業収益で割った私の数字です。
原価率が1.3ポイント、販管費率が0.3ポイント下がっています。足すと1.6ポイントで、営業利益率の上がり幅と一致します。増益の大半は、売った品物の原価が下がったことで説明できます。ここまでは損益計算書の数字です。
4ページ目で会社は、その理由を「生産体制の内製化による原価低減や、値下げの抑制等」と書いています。内製化という言葉が小売から出てくるのは珍しいので、貸借対照表に跡がないか探しました。ありました。仕掛品の欄が、1億2,900万円から4億2,100万円に増えています。売るだけの店なら、この欄はふつう要りません。
経常利益の伸びには、為替の差益が混じっています
経常利益は42.5%増で、営業利益の36.0%増より伸びが大きい。差の出どころは営業外収益の為替差益31億9,700万円です。前年の同じ時期は為替差損8億200万円でしたから、差損が差益に変わった分を足し合わせると、振れ幅はおよそ40億円になります。
経常利益の増えた分は245億7,000万円です。823億9,600万円から578億2,600万円を引きました。40億円はその6分の1ほどで、本業の利益ではありません。ただ残りの6分の5は、営業利益が増えた分そのものです。
一度きりの収入が二つ、一度きりの損失が一つ
特別損益にも、来期には続かないものが並んでいます。
| 科目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 投資有価証券売却益 | ― | 23億6,700万円 |
| 受取補償金 | 3億3,100万円 | 17億1,500万円 |
| 固定資産除却損 | 3億100万円 | 30億7,000万円 |
売却益のほうは、貸借対照表が事情を教えてくれます。投資有価証券の欄が、28億4,100万円から横棒になっています。持っていた株を全部手放した、ということです。4ページ目に「政策保有株式の売却」とあります。
補償金17億1,500万円に引っかかりました。4ページ目には「ランサムウェアによる第三者からの不正アクセスによるシステム障害に係る補償金等」とあります。
国内事業の説明には「EC売上については、システム障害からの復旧後、第3四半期に入り徐々に回復傾向」とも書いてあります。つまりこの9か月のどこかで、無印良品のネット通販が止まっていた時期があったわけです。
固定資産除却損は、前年の10倍です。同じ4ページ目に、海外で30店舗を閉め、「特に、中国大陸事業において、店舗のスクラップアンドビルドを推進しました」とあります。短信はこの二つを結びつけてはいません。閉めた店の内装を捨てた分だろう、と私は読みました。
稼ぐ力は、国内より東アジアにあります
セグメントの表は12ページ目です。4つの地域すべてが増収増益でした。ただ、セグメント利益を営業収益で割ると、地域ごとの顔つきがずいぶん違います。
| 地域 | 営業収益 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 国内 | 3,911億1,800万円 | 511億7,900万円 | 約13.1% |
| 東アジア | 2,128億1,200万円 | 454億1,900万円 | 約21.3% |
| 東南アジア・オセアニア | 490億7,400万円 | 69億5,700万円 | 約14.2% |
| 欧米 | 377億8,300万円 | 55億1,900万円 | 約14.6% |
利益率の列は、セグメント利益を営業収益で割った私の数字です。
東アジアは、国内の半分ほどの売上で、国内に迫る利益を出しています。中国大陸で生活雑貨と食品が「全部門で売上が伸長」したそうです。店の数も海外755に対し国内708で、すでに海外が上回りました。国内の雑貨屋のつもりで見ていると、中身が少し前と違ってきています。
欧米だけ、利益の伸びが3.8%と小さい。売上は21.9%伸びているのに、です。理由は、北米で出店を再開し、パリの旗艦店の準備を進めているからです。店を出す前に、費用が先に出ます。今期の心配ではなく、来期以降に出ていく費用として頭に置いておきます。
キャッシュ・フロー計算書は、作られていません
13ページ目に「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。私はいつもここを読みたくて添付資料をめくっているので、少し肩を落としました。
代わりに貸借対照表で追いました。現金及び預金は1,349億2,600万円から1,687億1,600万円へ増えました。増えた額は337億8,900万円です。その間に1年内返済予定の長期借入金100億円が消えました。短期借入金も49億1,400万円から9,800万円まで減っています。借金を150億円近く返して、なお現金が337億円増えた。……これは強い。
ただし、これから出ていくお金も見えています。未払法人税等が34億2,700万円から153億3,700万円へ増えました。9か月分の税金が、まだ払われていません。増えた現金337億円のうち、3分の1ほどはこの未払い分として税務署へ行くと考えておくべきです。
商品在庫は1,697億6,600万円から1,770億1,200万円になりました。4%ほどの増加です。売上の伸びより小さい。8月末と5月末では季節が違うので言い切れませんが、在庫が膨らんでいる気配は読み取れませんでした。
会社はどう説明しているか
増収の理由は、店舗数の増加と海外事業の伸び。増益の理由は、内製化による原価低減と値下げの抑制。国内では「無印良品週間」や年末年始の「良いね祭」、ポイント5倍の「GOOD POINT WEEK」が効いた、と4ページ目にあります。
値下げの抑制とポイント5倍が同じ段落に並んでいるのは、気になります。値札を下げずにポイントで返すのは、客の側からすれば同じ値引きです。それでも原価率が下がっているので、原価の改善のほうがポイントの負担より大きかった、ということになります。国内の売上の伸びが8.9%と4地域で最も小さいのは、頭に残ります。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は7月10日に上方修正され、2ページ目に載っています。営業利益は予想の8割強まで来ています。これは私の割り算です。
| 通期予想 | 9か月実績 | 残り3か月 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 9,070億円 | 6,907億8,800万円 | 2,162億1,200万円 |
| 営業利益 | 980億円 | 808億2,200万円 | 171億7,800万円 |
| 純利益 | 670億円 | 585億5,300万円 | 84億4,700万円 |
残り3か月の列は、通期予想から9か月実績を引いた私の数字です。
残りは6月から8月です。この置き方だと、残り3か月の営業利益を営業収益で割った営業利益率は7.9%になり、9か月の11.7%からだいぶ落ちます。前年も同じ形だったのかを確かめました。2ページ目には前期比32.7%増とあります。980億円を1.327で割ると、前期の営業利益はおよそ738億5,000万円です。そこから前年9か月の594億600万円を引いて、前年の6月から8月はおよそ144億4,000万円になります。
今年の同じ3か月は、それより2割ほど多い程度です。9か月の36.0%増と比べると、上方修正した直後にしては控えめな置き方です。夏はもともと利益の薄い季節だと分かりますが、それにしても、と思います。
私はどう読んだか
増益の主役は原価の改善なのか、為替と売却益の上乗せなのか。私は前者の見方をしています。理由は、営業利益率の上がり幅1.6ポイントが、原価率と販管費率の下がり幅で過不足なく説明できるからです。
心配性なので、気にしているところも書いておきます。欧米の出店費用がこれから膨らむこと、国内の伸びが4地域でいちばん小さいこと、残り3か月の置き方が控えめなこと。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
今回わからなかったこと:新しく連結に加わった合同会社 MUJI ENERGY が何をする会社なのかと、補償金17億1,500万円を誰から受け取ったのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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