ジェリービーンズは婦人靴のブランドです。本革ではない素材で作った、駅ビルや通販で手の届く値段の靴で、この会社の祖業でもあります。ただ、9月10日に出た中間決算の短信を読むと、靴の話はごく一部でした。子会社でアイスクリームを売り、スポーツブランドの靴を卸し、系統蓄電所向けの蓄電池を納め、生ごみ処理、廃油から重油を作る製油所、芸能事務所、メタバースまで並んでいます。
婦人靴が売れなくなり、別の商売を次々に始めた結果が、いまの姿です。何をしている会社かを一言で言えないこと自体が、この決算の性格を表しています。私が引っかかったのは、損失の大きさより、この半年で現金がどこへ出ていったかでした。
売上は2.6倍、損失は3.7倍
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 22億6,100万円 | 8億6,300万円 | +162.0% |
| 営業利益 | △6億2,700万円 | △1億6,900万円 | — |
| 経常利益 | △6億6,600万円 | △1億7,400万円 | — |
| 純利益 | △6億4,800万円 | △2億4,100万円 | — |
売上が2.6倍になって、損失も膨らみました。前年同期はアイスクリームの子会社を期の途中で連結したばかりなので、売上の伸びには連結の効果が入っています。増えた売上のほとんどはライフスタイル事業で、そこだけで3億4,900万円の損失です。売れば売るほど赤字が増えた半年でした。
現金が半年で3分の1に
貸借対照表の現金及び預金は、期首の10億2,200万円から3億4,600万円へ減っています。減った6億7,500万円の中身を、キャッシュ・フロー計算書で分けると次のとおりです。
| 区分 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 営業活動 | △3億6,100万円 | △7億7,300万円 |
| 投資活動 | △9億8,700万円 | △4億9,200万円 |
| 財務活動 | +6億7,300万円 | +15億2,100万円 |
営業活動の支出は前年より小さく見えます。これは本業が良くなったからではありません。売掛金が期首の12億4,400万円から4億700万円へ減ったからです。その集金で8億3,700万円が入りました。税引前の損失7億7,300万円をこの集金で埋めて、なお3億6,100万円が足りなかった、という読み方になります。
それより大きいのが投資活動の9億8,700万円です。継続企業の前提に重要な疑義がある、と6ページ目に自分で書いている会社が、営業の赤字より多い金額を投資に出しています。この半年で現金を減らした主因は本業ではなく、こちらのほうでした。
投資に出た9億円の出資金
投資活動の内訳を見ると、出資金の払込で9億525万円が出て、出資金の回収で7億円が入っています。差し引き2億525万円が残ります。貸借対照表の出資金は、5億412万円から7億937万円へ増えました。この計算は私が引いたものですが、残高の増加とぴたりと合います。
払い込んだ先がどこで、回収した7億円がどの出資なのかは、決算短信には書かれていません。同じ半年で投資有価証券を3億円買っています。長期貸付金も703万円から1億9,260万円へ増えています。そのうち3,116万円は、貸倒引当金の繰入として早くも営業外費用に立ちました。
出資と株式と貸付を合わせて、半年で13億円近くが外へ出ています。それを埋めたのが、短期借入金の3億5,000万円の増加と、新株予約権の行使で入った3億5,100万円です。期中平均の株式数は3,377万株から8,174万株へ、1年で2.4倍になりました。ここまでは短信の数字です。株主から集めた金で、行き先の書かれていない出資を続けている、と私は受け取りました。
税金が損失を小さく見せている
損益計算書の下のほうにも、引っかかる行がありました。税引前の損失は7億7,300万円ですが、純損失は6億4,800万円です。間にある法人税等がマイナス1億2,456万円、つまり税金が損失を減らす向きに働いています。貸借対照表の繰延税金資産は7,322万円から2億104万円へ増えました。
繰延税金資産は、将来の利益で取り戻せる見込みがあるときにだけ資産にできるものです。10期連続で純損失を出している会社が、その見込みを積み増している。……いや、これは変だ。監査法人のレビュー対象外の中間決算なので、期末にどう扱われるかは分かりません。
もう一つ、税金の行で読めなかったことがあります。赤字の半年に、法人税等を2億1,243万円納めています。未払法人税等が2億4,869万円から2,647万円へ減っていて、その払い出しに当たります。前期に何か大きな課税所得があったはずですが、その中身は決算短信には書かれていません。
特別損失の科目名
特別損失に、送金詐欺損失という科目が4,500万円で立っています。減損損失も6,111万円あり、ライフスタイル事業の資産です。送金詐欺がどういう経緯だったのかは、決算短信には書かれていません。本業の外で、この半年に金が漏れた場所が二つあった、というところまでが短信で言えることです。
会社はどう説明しているか
4ページ目で会社は、損失の理由を三つ挙げています。アイスクリームのリコールで生産の見直しが要り、売上の回復が想定より遅れたこと。スポーツブランドの卸売と新しい靴ブランドの立ち上げに準備の時間がかかり、売上の計上が後ろ倒しになったこと。再生重油の製油所に追加の是正工事が必要になり、稼働が10月に延びたことです。
そのうえで6ページ目には、既に受注している蓄電池案件を下期に完工して売上に計上する、とあります。新ブランドの展開と合わせて下期に回復を図ることが可能と判断した、とも書かれています。ただ、蓄電池案件の受注金額は決算短信には載っていません。私は、後ろ倒しの説明は事実として受け取り、回復が可能という判断のほうには留保を付けています。理由は、その判断を支える数字が決算短信には一つも書かれていないからです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
会社は3月に出した通期予想を変えていません。上期が終わった時点で、売上は通期の4割弱、利益はまだ赤字です。
| 項目 | 上期実績 | 通期予想 | 残り6ヶ月に必要 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 22億6,100万円 | 57億4,000万円 | 約34億7,900万円 |
| 営業利益 | △6億2,700万円 | 3億400万円 | 約9億3,100万円 |
| 純利益 | △6億4,800万円 | 1億6,400万円 | 約8億1,200万円 |
約の付いた数字は、通期予想から上期の実績を引いた私の数字です。
売上のほうは、前年と比べる材料があります。表紙の予想増減率は+59.9%です。通期予想の57億4,000万円を1.599で割り戻すと、前期の売上は約35億9,000万円になります。そこから前年上期の8億6,300万円を引くと、前年の下期は約27億2,700万円になります。残り6ヶ月に必要な34億7,900万円は、それより3割近く多い水準です。蓄電池案件が丸ごと乗れば届く数字かもしれません。
営業利益は比べようがありません。前期は8期連続の営業損失の年で、下期だけでいくら稼いだかは短信に無いからです。少なくとも、前期の下期は9億円の黒字ではなかったことになります。半年で9億3,100万円の営業利益は、この会社が過去10年で出したことのない規模です。
私はどう読んだか
通期予想を据え置いた理由は、蓄電池案件の完工と新ブランドの立ち上げにある、と会社は書いています。私は、その二つが乗ったとしても現金の減り方のほうが先に問題になる、という見方をしています。理由は、この半年で減った現金の主因が本業ではなく、行き先が決算短信に書かれていない出資だったからです。
売上の遅れは、準備が整えば取り戻せます。出資金の払込は、戻ってこなければそれきりです。9月10日には、管理業務の子会社の設立と、衣料雑貨の会社を1円で買う決議も出ました。1円で買えるということは、借金も一緒に引き受けるということです。上がるかは知りません。ただ、この会社に足りないのは売上ではなく、出ていく金の説明だと考えています。
出典:決算短信(会社発表)
出資金9億525万円の払込先と、赤字の期に2億1,243万円を納めた法人税の中身は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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