アキレス(5142)2027年3月期 第1四半期決算分析――先行き不安が運んだ増収と読みました

アキレス(5142)2027年3月期 第1四半期決算分析――先行き不安が運んだ増収と読みました 決算を読む

はじめに

アキレスは、子どもの運動靴「瞬足」を作っている会社です。ただ、短信を開くと靴は事業のなかでいちばん小さいところにいて、大きいのは目に見えないほうの製品です。

車や航空機の座席に張る内装用の資材。電子部品や医療の現場で使うフイルム。半導体の材料を運ぶときに静電気を防ぐ部材。家や畜舎の壁に入れる断熱のパネル。それに防災用の資材やウレタンの素材。どれも自動車メーカーや住宅会社、電機や医療のメーカーが仕入れて、自分の製品や建物の中に組み込むものです。

店の棚で目に入るのは靴だけで、稼いでいるのはその奥にある材料の側です。今回の短信は、その材料の側がこの四半期にどう動いたかの話になります。

この決算で何が起きたか

8月7日に出た第1四半期の決算短信です。売上が2割近く伸びて、営業利益は前年同期の2倍半になりました。

今回前年同期増減率
売上高213億6,100万円183億7,800万円+16.2%
営業利益11億7,500万円4億4,500万円+164.0%
経常利益15億2,800万円3億7,600万円+306.4%
純利益10億2,200万円2億4,600万円+314.5%

営業利益率は前年同期の2.4%から5.5%へ上がっています。表だけなら、文句のつけようがない四半期です。

「供給の先行き不安」という言葉が、三度出てきます

引っかかったのは数字ではなく、短信の4ページ目から5ページ目にかけての説明文です。増収の理由として「中東情勢緊迫化に伴う供給の先行き不安による需要増」という言い回しが、フイルム、断熱資材、防災対策商品の三か所に出てきます。書き方はほぼ同じです。

意味を言い直すと、材料が手に入らなくなることを心配した客が、先に買った、ということです。これに原材料価格の上昇を踏まえた価格改定が重なっています。事業ごとの数字は次のとおりです。

売上高(今回)前年同期増減率セグメント利益(今回)前年同期
第一事業部132億3,900万円109億1,200万円+21.3%9億7,400万円5億8,600万円
第二事業部65億6,500万円54億8,500万円+19.7%8億7,600万円5億1,400万円
シューズBU15億5,600万円19億8,000万円△21.4%△7,400万円△1億500万円

材料の二つの事業がそろって2割伸び、利益はどちらも6割から7割増えています。靴は2割減収ですが、販売費を削って損失を縮めました。同じ価格改定が、材料を仕入れるメーカーには増収の理由になり、店で靴を選ぶ親には「販売数量の減少」として出ています。

……いや、客が不安で買った分は、不安が消えたときに減る分だ。会社の説明文をそのまま受け取るなら、そういうことになります。

客だけでなく、自分も先に積んでいます

先に買ったのは客だけではありません。短信の7ページ目、貸借対照表では、原材料及び貯蔵品が3か月で31億9,700万円から38億7,800万円へ増えています。会社側は「サプライヤーと連携した安定調達」と書いていて、材料を手に入るうちに買っておいた、という動きです。

この四半期は、キャッシュ・フロー計算書が作られていません。11ページ目の注記にそうあります。なので現金の出入りは、貸借対照表の前期末との差で追うしかありません。

3か月の増減金額
電子記録債権+13億100万円
棚卸資産+10億8,500万円
支払手形及び買掛金+21億7,900万円
現金及び預金+2億1,600万円

売った分はまだ現金になっておらず、仕入れた分もまだ払っていません。債権と在庫の増加を足すと約23億8,600万円で、買掛金の21億7,900万円がそれを支えている形です。現金がほとんど動いていないのは、この差し引きの結果です。

中東情勢が落ち着いて客の買い方が戻ったとき、積んだ材料と増えた買掛金がどう片付くか。それは中間の短信でキャッシュ・フロー計算書が出てからでないと分かりません。

経常利益の増え方の中身

経常利益は前年同期の4倍になっていますが、その中には本業でない部分があります。9ページ目の損益計算書に、為替差益2億100万円が載っています。前年の同じ時期は為替差損1億7,700万円でした。前年の差損と今年の差益を足すと約3億7,800万円で、経常利益の増加額11億5,200万円の3分の1ほどが、為替の向きが変わっただけで出ています。

もう一つ、借りた額が同じなのに利息だけ増えたことが、この四半期の数字に出ています。短期借入金69億円と長期借入金102億5,000万円は前期末と変わっていません。それでも支払利息は2,900万円から8,100万円へ増えました。ここまでは損益計算書の数字です。借り換えの条件が変わった、と私は読みました。

会社はどう説明しているか

営業利益が増えた理由を、会社は二つ書いています。エレクトロニクスと医療向けのフイルム、半導体ウエハー搬送用の部材が増収になったことによる売上総利益の増加。それに、製造現場を集約して原材料費とエネルギーコストを減らしたことです。

説明会資料のほうには、その内訳があります。売上増による粗利の増加が6億5,100万円です。粗利率の改善が1億3,100万円で、販管費の増加が5,200万円の押し下げでした。売上が16%伸びたのに販管費はほぼ横ばいで、増えた売上がほとんど利益に落ちた四半期でした。

ただ、増収のうち数量が増えた分と価格改定で単価が上がった分は、短信にも説明会資料にも分けて書かれていません。粗利率の改善が値上げによるものか、集約生産によるものかも、この二つの資料からは読み分けられません。説明そのものは受け取りますが、増収の中身がどれだけ「先に買われた分」を含むかには、留保をつけておきます。

残り9か月に、会社が置いた数字

売上、営業利益、経常利益の通期予想は5月に出した数字のまま据え置きです。理由は「引き続き中東情勢による影響を注視する必要があるため」と書かれています。純利益だけ13億円から22億円へ引き上げました。期末配当も30円から50円へ増やしています。

純利益の上振れは、政策保有株式を減らす方針のもとで投資有価証券を売ることによる特別利益の見込みです。本業の予想は動いていません。

通期予想第1四半期進捗率残り9か月に必要な額
売上高825億円213億6,100万円約26%約611億3,900万円
営業利益22億円11億7,500万円約53%約10億2,500万円
経常利益20億円15億2,800万円約76%約4億7,200万円
純利益22億円10億2,200万円約46%約11億7,800万円

約の付いた数字は、通期予想から第1四半期を引き、割って私が出したものです。

経常利益の置き方がいちばん目立ちます。3か月で15億2,800万円を稼いだあと、残りの9か月で4億7,200万円です。説明会資料に載っている前期の経常利益は39億1,900万円です。そこから前年第1四半期の3億7,600万円を引くと、前年の同じ9か月は約35億4,300万円でした。今年の同じ9か月は、その1割強です。

営業利益も同じ向きです。前期の営業利益は29億7,200万円でした。そこから前年第1四半期の4億4,500万円を引くと、前年の残り9か月は約25億2,700万円です。今年の残り9か月10億2,500万円は、そこから6割減る計算です。

私はどう読んだか

読み方は二つあると思います。会社が慎重すぎて、あとで上方修正が来るのか。それとも第1四半期に、あとで来るはずだった需要が前倒しで入ったのか。

私は後者だと考えています。理由は、「供給の先行き不安による需要増」を会社自身が増収の説明に三度書いていて、自分の倉庫にも原材料を先に積んでいるからです。客も会社側も、同じ心配で同じ動きをしています。据え置いた予想は、その心配が続く前提で置かれた数字だと受け取りました。

上がるかは知りません。ただ、増えた配当の20円分は本業ではなく、持っている株を売った分から出ることは、頭に置いておきます。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260805510486.pdf

今回の増収のうち、価格改定で単価が上がった分と数量が増えた分の内訳は、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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