大和証券グループ本社(8601)2027年3月期 第1四半期決算分析――買収の理由に引っかかった

大和証券グループ本社(8601)2027年3月期 第1四半期決算分析――買収の理由に引っかかった 決算を読む

大和証券グループ本社は、証券会社を真ん中に置いた持株会社です。個人が株や投資信託を買う窓口になり、企業が株や社債を出すときは引き受けて投資家に売ります。投資信託を作って運用もします。ネット専業の銀行も持っていて、預金を受け入れています。

証券会社の稼ぎは、お客が売り買いするたびに入る手数料と、自分の勘定で売り買いするトレーディングの損益です。どちらも市場が活発なときに増え、静かなときに減ります。会社自身がそれをいちばんよく知っていて、通期の業績予想を出しません。予想の代わりに何を手がかりに読むか。今回はそこから始めます。

この決算で何が起きたか

8月3日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。証券会社の短信では、営業収益の下に純営業収益という行があります。営業収益から金融費用などを差し引いたもので、普通の会社の売上高に近いのはこちらです。

項目今回前年同期増減率
営業収益4,343億6,400万円3,264億円+33.1%
純営業収益2,203億9,900万円1,552億5,200万円+42.0%
営業利益775億1,200万円361億7,700万円+114.3%
経常利益880億8,900万円437億1,600万円+101.5%
親会社株主に帰属する四半期純利益564億1,400万円312億3,700万円+80.6%

営業利益は倍以上、3つの部門がすべて増収増益です。19ページの四半期推移では、純営業収益は5四半期続けて増えています。ここまでは決算サイトの見出しにも載る話です。

営業収益の3割増の中に、両建てで膨らんだ分があります

損益計算書(10ページ)を見ると、その他の営業収益が412億7,700万円から780億3,100万円へ増えています。同じ表で、その他の営業費用も303億2,600万円から629億500万円へ増えています。収益の増えた幅から費用の増えた幅を引くと、差し引きでは41億7,500万円しか動いていません。

営業収益の増えた幅は1,079億円ほどですから、その3分の1は、収益と費用が同じ形で膨らんだ分です。これは私の引き算です。

だから純営業収益のほうを本当の売上として扱います。増えた651億4,700万円の中身を、10ページの数字から引き算して並べました。

純営業収益が増えた分金額
受入手数料約430億2,500万円
トレーディング損益約109億300万円
金融収益から金融費用を引いた分約47億3,400万円
その他の営業収益から同費用を引いた分約41億7,500万円
営業投資有価証券関連損益約23億1,000万円

約の付いた数字は、10ページの当期と前年同期の差を私が引いたものです。増えた分の3分の2が受入手数料で、中では委託手数料と引受手数料の伸びが大きい。稼ぎの本体で増えています。

両建てで膨らんだ分の出どころは、15ページのセグメント注記にあります。アセットマネジメント部門の外部顧客向け「その他の営業収益」が、196億1,900万円から471億1,300万円へ増えています。2.4倍です。何を売ったのかは決算短信には書かれていません。

純利益の伸びが経常利益に届かない理由は、税金でした

経常利益が倍になったのに、純利益は8割増にとどまっています。差は11ページの下のほうにありました。

前年同期今回
税金等調整前四半期純利益447億9,400万円883億1,700万円
法人税等合計107億5,400万円269億9,800万円
税金の割合約24%約31%

割合は私が上の2行で割ったものです。前年は法人税、住民税及び事業税が38億5,300万円と軽く、調整額が69億100万円を占めていました。今回は262億3,200万円を現に払う税として計上しています。前年がなぜ軽かったのかは決算短信には書かれていません。伸びの差は、本業ではなく税金の話です。

この短信に、キャッシュ・フロー計算書はありません

16ページに「作成しておりません」と書いてあります。第1四半期はそれで構わないことになっていて、減価償却費とのれんの償却額だけが載っています。私は困ります。代わりに、6ページの財政状態の説明文から、貸借対照表の動きを拾いました。

3か月での増減金額
現金・預金1兆865億円増
預り金7,278億円増
短期借入金5,776億円増
有価証券担保貸付金8,049億円減

現金・預金は1兆円以上増えていますが、お客からの預り金と借入金もそれに近い幅で増えています。証券会社の現金はお客のお金と借りたお金で膨らむので、本体がいくら現金を稼いだのかは、この短信からは分かりません。……証券会社の営業キャッシュ・フローは、あっても読みにくい。それでも無いと落ち着かない。

3,700億円で銀行を買う理由に、会社は自分の弱みを書いています

いちばん引っかかったのは、17ページの後発事象です。完全子会社の大和ネクスト銀行が、オリックス銀行の全株式を3,700億円の現金で取得しました。契約は4月27日、完了は8月3日で、この短信と同じ日です。

理由の説明の中に、こういう一文があります。日銀当座預金の残高が2兆円規模に達していて、預金を効率的に運用できていない、と。5ページには、大和ネクスト銀行の預金残高が5兆3,085億円と載っています。5兆円のうち2兆円ほどが、貸す先も運用する先もなく、日銀に置いたままだったことになります。……なるほど、それで銀行を買うのか。

融資と信託の機能を持つ銀行と一つになれば、眠っていた預金を貸し出しに回せる。ここまでは短信に書いてある筋です。

そして18ページ。取得関連費用、のれんの金額、受け入れた資産と負債、この3つが「現時点では確定しておりません」と並んでいます。3,700億円は自己資本1兆7,967億円の2割ほどです。これは私の割り算です。買収は終わったのに、のれんがいくらになるのかは、この短信の段階では誰にも分かりません。

会社はどう説明しているか

4ページに、株式取引の増加で委託手数料が65.3%増、大型の引受案件で引受手数料が91.8%増、と書いてあります。トレーディング損益も、エクイティ収益の増加で48.9%増です。費用は、業績に連動する賞与で人件費が23.1%増です。どれも市場が活発だったから、という説明です。

この説明はそのまま受け取ります。理由は、増えた利益が営業外でも特別利益でもなく、手数料とトレーディングという本体から出ているからです。ただし、その本体が市場次第だということも、会社は1ページ目に書いています。有価証券関連業の業績予想は困難である、と。

通期予想は、出していません

進捗率は出せません。会社が通期の予想を示していないからです。配当も同じで、1ページ目の予想欄にある44円は予想ではなく、2027年3月期まで設定している年間配当の下限です。前期は64円でした。方針は、半期ごとに配当性向50%以上で払うというもので、実際の金額は未定と明記されています。

私はどう読んだか

この四半期の利益は良いものだと考えています。理由は、純営業収益の伸びの3分の2が受入手数料で、両建ての分を除いても本体で稼いだ数字だからです。ここまでは損益計算書の数字です。

それでも頭に残っているのは、3か月の稼ぎではなく、8月3日から始まった話のほうです。2兆円を眠らせていた、と会社自身が短信に書き、3,700億円でその答えを買いました。のれんも費用も受け入れる資産も、まだ確定していません。心配性なので、次の短信でその3つの「確定しておりません」がどう埋まるかを見に来ます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260803/140120260731505624.pdf

アセットマネジメント部門で2.4倍になった外部顧客向けの「その他の営業収益」が、何を売って得た収益なのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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