三井金属(5706)2027年3月期 第1四半期決算分析――倍増より会社の慎重さを信じました

三井金属(5706)第1四半期決算分析――営業利益が8割増えた四半期に、現金が減ってコマーシャル・ペーパーが110億円出ていた 決算を読む

はじめに

三井金属は、亜鉛や鉛、銅を鉱石から取り出して金属にする製錬の会社として始まり、いまはその金属を薄く延ばしたり粉にしたりして電子部品の材料を売る事業のほうが、利益の柱になっています。

柱のひとつが銅箔です。銅を紙より薄く延ばしたもので、プリント配線板や、半導体を載せる基板の配線になります。スマートフォンやサーバーの中身を開ければ、どこかに入っている部品です。買うのは基板や半導体パッケージを作る会社で、私たちが直接手にすることはありません。

もうひとつ、バイクの排ガスを浄化する触媒も作っています。買い手はバイクメーカーで、短信にはインド向けの需要が堅調だったとあります。鉱石を溶かす会社と、電子部品の材料を作る会社が、ひとつの短信に同居している。それが三井金属です。

営業利益がほぼ倍になった四半期

2026年8月7日に出た第1四半期の決算です。表紙の4行は、どれも大きく増えています。

今回前年同期増減率
売上高2,015億9,700万円1,690億4,000万円+19.3%
営業利益210億2,700万円114億2,400万円+84.1%
経常利益234億7,400万円100億1,900万円+134.3%
純利益168億2,400万円△59億7,000万円

売上が2割近く増えて、営業利益は8割あまり増えました。前年同期の純利益が赤字なのは、自動車部品の子会社を売ることに伴う引当金を197億円積んだからです。黒字転換は、その反動によるところが大きいです。同じ日に、10月1日付で1株を10株にする分割と、分割前の換算で年245円から280円への増配予想も出しています。

経常利益の増え幅134億円のうち、本業は96億円

経常利益は前年同期から134億円増えました。営業利益の増え幅が96億円ですから、残りの38億円は営業外です。中身は損益計算書にありました。

営業外の項目前年同期今回
持分法による投資利益7億7,800万円28億3,400万円
為替差損22億6,100万円3億7,900万円

持分法の利益が20億円増え、為替差損が18億円縮みました。この2行で38億円ですから、営業外の増え幅はほぼ説明がつきます。どちらも自分の工場で稼いだ数字ではありません。ここまでは損益計算書の数字です。

3か月で200億円増えた原材料

引っかかったのは貸借対照表でした。原材料及び貯蔵品が、3月末の808億6,900万円から6月末には1,009億6,400万円になっています。3か月で200億円あまりの増加です。会社側も財政状態の説明で、棚卸資産が263億円増えたと書いています。

一方で現金及び預金は46億円減り、3月末には無かったコマーシャル・ペーパーが110億円立ちました。この四半期はキャッシュ・フロー計算書を作成していないと注記にあるので、現金がどこへ流れたかは追えません。利益が168億円出た四半期に、手元の現金は減っているわけです。

原材料が増えた理由は、短信の中には書かれていません。手がかりは2つあります。亜鉛や銅の平均価格が前年同期より上がったこと、そして金属セグメントの説明にある「亜鉛製錬の大規模定期修繕工事」です。製錬所を止めれば、買った鉱石は溶かされずに倉庫に残ります。値上がりした原料が、修繕の間に積み上がった、と私は読みました。

上方修正の70億円は、二つの主力事業からではありません

通期の経常利益予想は930億円から1,000億円へ引き上げられました。どの事業が引き上げたのかをセグメント別の表で確かめると、少し意外な形をしています。

経常利益(通期予想)前回予想今回予想増減
機能材料670億円780億円+110億円
金属375億円265億円△110億円
その他の事業8億円23億円+15億円
消去又は全社△123億円△68億円+55億円
合計930億円1,000億円+70億円

銅箔を含む機能材料を110億円上げ、金属を同じ110億円下げています。2つの主力を足すと動きはゼロで、上方修正の70億円はその他の事業と全社費用の側から出ています。金属の見込みが3割近く削られたことは、合計だけを眺めていると分かりません。

同じページに、業績予想の前提とした金属価格と為替の表があります。亜鉛と銅の価格、そして円安の前提は前回より有利な方向へ動いています。それなのに、パラジウムは1オンス1,600ドルから1,328ドルへ、ロジウムは10,000ドルから8,321ドルへ下げました。第1四半期の説明文にも、この2つの金属は期に入ってから価格が下を向いたとあります。

会社はどう説明しているか

営業利益が増えた理由として、会社は3つを挙げています。銅箔の販売量が増えたこと、円安が進んだこと、金属の価格が動いたことで在庫の評価が好転したこと。機能材料については、販売価格の改定で利幅が改善したことも書かれています。

このうち私が素直に受け取ったのは、銅箔の量と価格改定です。半導体市場が堅調で数が出て、値段も上げられた。これは工場の商売そのものです。円安と在庫の評価は、為替と金属価格が動けばそのまま戻る種類の利益で、こちらには留保を付けます。

通期予想を引き上げながら営業利益で3割近い減益と置く理由は、「第1四半期の実績と第2四半期以降の事業環境の変動要因を勘案して見直した」という一文があるだけで、それ以上の説明は決算短信には書かれていません。表紙に補足説明資料の作成「有」とあるので、そちらに何かあるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

売上高は通期予想8,500億円に対して、第1四半期は2,015億円でした。営業利益は940億円に対して210億円です。進み具合はどちらも4分の1に少し足りません。営業利益では210億円を940億円で割りました。22.4%です。これは私の割り算です。

目安に届かないのは、残りの四半期を第1四半期より高く見込んでいるからです。上期の営業利益予想は450億円で、そこから第1四半期の210億円を引きます。7月から9月は240億円という置き方になります。下期は、通期940億円から上期450億円を引いた残りです。490億円で、四半期あたり245億円になります。残りの3つの四半期はどれも、この第1四半期より高い数字です。

それでも通期では3割近い減益です。前期がどれほど高かったのか、表紙の増減率から割り戻してみました。

営業利益第1四半期7月〜3月通期
前期 実績114億2,400万円約1,195億円約1,309億円
今期 会社予想210億2,700万円729億7,300万円940億円

約の付いた数字は、通期予想の増減率△28.2%から私が割り戻したものです。前期を1とすると今期は28.2%減った0.718なので、940億円÷0.718で前期に戻しました。7月〜3月の729億7,300万円は私の引き算です。940億円から210億2,700万円を引きました。

前期は第1四半期の114億円が谷で、そこから9か月で約1,195億円を積んだ年でした。今期は第1四半期が210億円と高く、残り9か月の予想は730億円です。前期の同じ9か月より4割近く低い水準です。前期の後半に何があったのかは、この会社の短信を読むのが今回初めてなので分かりません。分かるのは、会社側がその水準へ戻ることを前提にしていない、ということだけです。

私はどう読んだか

倍増した第1四半期をそのまま伸ばして考えるか、慎重な通期予想を信じるか。私は後者です。理由は、増益の中身に金属価格と為替の分が混ざっていて、会社自身がパラジウムとロジウムの前提を下げ、金属の見込みを110億円削っているからです。

銅箔のほうは疑っていません。量が増えて、値段を上げて、機能材料の利益は7割あまり増えました。こちらは3か月で消える種類の利益ではありません。……いや、それを言うなら、200億円増えた原材料の評価も、金属の価格が下を向けば同じ速さで戻る。心配性なので、貸借対照表のほうが頭に残っています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260805509237.pdf

前期の7月から3月に営業利益が約1,195億円まで積み上がった中身は、今回の短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました