マキタ(6586)2027年3月期 第1四半期決算分析――増益の中身は、還付と為替と読みました

マキタ(6586)第1四半期決算分析――増益の理由は「米国関税の還付」、その金額は短信に無い 決算を読む

はじめに

マキタは電動工具を作っている会社です。大工が木材をとめるインパクトドライバー、設備工事の人がコンクリートの壁に穴を開けるハンマードリル、現場で板を切る丸のこ。趣味の日曜大工ではなく、プロが毎日、道具として使い倒すものが中心です。

いまはバッテリーを共通にした充電式に力を入れていて、同じ電池で芝刈り機やチェンソー、ブロワーも動きます。造園業や農家がまとめて揃える、という売り方です。

もうひとつの特徴は、作るのも売るのも、ほとんどが海外だという点です。生産の大半が海外工場で、売上の大半も海外の市場です。だから円の値段が動くと、この会社の数字は本業と関係なく大きく動きます。今回はその見分けの話になりました。

この決算で何が起きたか

7月29日に出た第1四半期決算です。この会社はIFRSなので、経常利益の代わりに税引前利益を置いています。

項目今回前年同期増減率
売上収益2,065億5,000万円1,866億1,400万円+10.7%
営業利益305億6,500万円260億6,900万円+17.2%
税引前利益326億4,500万円268億6,500万円+21.5%
純利益228億6,600万円192億8,100万円+18.6%

売上が1割増え、利益が2割近く増えています。営業利益率は14.0%から14.8%へ上がりました。1ページ目だけなら、文句のない決算です。

増収は円安で、現地通貨では横ばい

引っかかったのは4ページ目の説明文です。「現地通貨ベースでは前年並みでしたが、円安現地通貨高の影響により」売上が1割増えた、と会社自身が書いています。増収の理由が、最初から為替だと明かされているわけです。

どのくらいが為替なのかは短信に書いてありません。説明会資料の数字ですが、全通貨の加重平均で14.0%の円安、売上への影響が214億円とあります。今回の売上2,065億5,000万円から、前年同期の1,866億1,400万円を引きます。増えた分は199億3,600万円です。為替の214億円のほうが大きいので、現地通貨では少し減ったことになります。

同じ説明会資料に、販売台数が前年から2.4%減ったとあります。数は減り、値段は現地通貨で横ばい。ここまでが売上の中身です。

増益は、北米と調整額で作られている

利益のほうは、11ページ目のセグメント表を開いて印象が変わりました。出荷元で区切った営業利益です。

セグメント今回前年同期
日本67億1,000万円91億1,200万円
欧州80億2,600万円101億7,100万円
北米45億9,600万円3億2,700万円
アジア68億3,300万円60億1,200万円
その他9億1,800万円18億6,400万円
調整額34億8,200万円△14億1,700万円
連結305億6,500万円260億6,900万円

日本と欧州は減益です。増えたのは北米で、3億2,700万円が45億9,600万円になっています。会社が言う米国関税の還付は、米国で払った関税が戻ったものなので、北米の欄に落ちている、と私は読みました。

もう一つ、この表で目が止まった場所があります。調整額です。前年は14億円のマイナスだったものが、今回は35億円のプラスになっています。……ここだけで49億円動いている。日本から調整額の前までを足すと、前年が274億8,600万円、今回が270億8,300万円で、足し算のうえでは減益です。連結が45億円増えた分は、ほぼ調整額の動きで説明がつきます。

調整額が何でできているのかは、短信には書かれていません。セグメント間の売買を消す欄なので、円安で内部取引の評価が変わった分が入っているのかもしれません。ここまでが私に分かる範囲です。

現金は倍以上入り、在庫は換算で膨らんだ

10ページ目のキャッシュ・フロー計算書は、素直に良い数字でした。営業活動による現金は前年の142億200万円から317億7,200万円へ増えました。2倍以上です。営業債権が75億3,700万円減っていて、売った分の回収が進んだことが効いています。

一方で棚卸資産は、3か月で3,758億2,900万円から3,859億8,200万円へ増えました。差は101億円ほどです。ところがキャッシュ・フロー計算書での在庫の増加は10億8,600万円しかありません。差の90億円は、現金を使って積んだのではなく、海外にある在庫を円に直したら膨らんだ分です。

台数で見ると、説明会資料に在庫台数が5.0%増、月数は9.8か月とあります。売上の9か月分を在庫で持っている状態は、この会社では前からそうなので驚きません。ただ、販売台数が減る中で在庫の台数が増えているのは、頭の片隅に置いておきます。

会社はどう説明しているか

短信の4ページ目で、会社は増収を円安、増益を「米国関税の還付により原価率が改善したこと」と説明しています。売上原価を売上収益で割ると、前年の63.0%が今回60.7%です。これは私の割り算ですが、2ポイント強の改善で、説明と数字は合っています。

地域の話も具体的です。北米は大手ホームセンターとの北中米ワールドカップの販促が当たりました。欧州は高金利に加えて記録的な熱波、中近東・アフリカはホルムズ海峡の封鎖の影響で1割減。園芸機器と40Vmaxの電池シリーズが国内を下支えした、ともあります。

留保をつけるのは一点だけです。還付の金額は、短信にも説明会資料にも書かれていません。原価率の改善のうち、どこまでが一度きりの戻りで、どこまでが自力なのか。それが分からないと、この増益の重さが測れません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は据え置きです。今回の305億6,500万円を、通期の営業利益1,100億円で割ります。27.8%です。3か月で4分の1をやや超えています。

営業利益第1四半期残り9か月通期
前年 実績260億6,900万円約786億3,600万円1,047億500万円
今年 会社予想305億6,500万円約794億3,500万円1,100億円

約の付いた数字は、通期から第1四半期を引いた私の引き算です。残りの9か月は、前年と比べてほぼ横ばいの置き方になります。純利益も同じ引き方をすると、前年の約601億円に対して今年は約581億円です。残りは3%ほど減る前提です。第1四半期で2割増えた会社が、後半は減る、と自分で置いているわけです。

理由の手がかりは為替の想定にあります。12ページ目の通期想定と、第1四半期の実績を並べます。

通貨通期想定第1四半期 実績
米ドル155円159.57円
ユーロ180円185.41円
人民元22.5円23.45円

いずれも短信の12ページ目にある数字です。つまり後半は円高に戻る前提です。説明会資料の数字ですが、人民元が1円の円安になると営業利益が90億円弱減る、とあります。中国で作って世界に売る会社なので、人民元高は原価に効きます。

私はどう読んだか

増収は為替、増益は還付と調整額。本業は現地通貨で横ばい。私はこの見方をしています。理由は、日本と欧州のセグメント利益が減り、販売台数も減っているからです。良い決算に見えるのは1ページ目までで、4ページ目と11ページ目は別のことを言っています。

ただし現金は本当に入っていて、財務も固いままです。悪い決算だとは思いません。強いて言えば、動いていない決算です。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260729/140120260728501219.pdf

米国関税の還付がいくらだったのか、そして調整額の35億円が何でできているのかは、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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