はじめに
湖北工業は、二つのまったく違う部品を作っている会社です。
一つはアルミ電解コンデンサのリード端子です。コンデンサは電気をいったん蓄えて吐き出す部品で、自動車の電装品にも、AIサーバーの電源基板にも入っています。そのコンデンサから外へ出ている二本の足、あれがリード端子です。部品の中の、さらに小さな部品を作っています。
もう一つは海底ケーブル向けの光部品です。大陸と大陸をつなぐ光ファイバーケーブルは、海の底で何十キロかごとに信号を増幅する中継器を通ります。その中継器の中で、光が逆戻りしないように止める光アイソレータなどを作っています。海底ケーブルを敷く会社が買い、私たちが海外のサイトを開くたびに、その光を通しています。
8月6日に出た中間決算です。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 100億2,300万円 | 78億7,500万円 | +27.3% |
| 営業利益 | 29億4,900万円 | 18億1,200万円 | +62.7% |
| 経常利益 | 31億5,100万円 | 12億9,700万円 | +142.9% |
| 純利益 | 21億2,300万円 | 6億400万円 | +251.0% |
売上が3割近く増えて、営業利益が6割増えました。ここまでは1ページ目の話です。その下の経常利益と純利益は、増え方が急に大きくなります。この差がどこから来たのかを、損益計算書まで下りて確かめました。
経常と純利益の勢いは、前年に沈んだ分の裏返しです
損益計算書の営業利益の下に、答えが二つ並んでいます。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 為替差損益 | 5億6,000万円の差損 | 1億7,700万円の差益 |
| 減損損失 | 3億1,000万円 | 無し |
前年の上期は、為替で5億6,000万円を失い、光部品の子会社で3億1,000万円の減損を出していました。今年はどちらも無く、為替はむしろ1億7,700万円の益になっています。差損から差益へ動いた分だけで7億3,700万円。これは私の引き算ですが、経常利益の増えた分18億5,400万円のうち4割がここです。
減損の3億1,000万円は、前年だけに載った特別損失です。今年は無いので、純利益はその分そのまま持ち上がります。純利益3.5倍という数字は、今年が強かったのと同じくらい、前年の底が低かったからです。
だから、この決算をどれだけ評価するかは営業利益の6割増で決めるべきだと考えています。それでも6割増は大きい。営業利益率は前年の23.0%から29.4%へ上がっています。
利益の8割を、光部品が稼いでいる
セグメントの表に行くと、二つの事業の姿がまるで違います。
| 売上高 | セグメント利益 | 利益率 | |
|---|---|---|---|
| リード端子事業 | 53億6,000万円 | 5億4,900万円 | 約10% |
| 光部品・デバイス事業 | 46億6,200万円 | 24億円 | 約51% |
約の付いた利益率は、私がセグメント利益を売上高で割ったものです。
売上はリード端子のほうが大きいのに、利益は光部品が24億円。営業利益29億4,900万円の8割にあたります。海底ケーブルの中継器に入る部品は、値段の付き方が別物です。利益の中身は、ほぼ光部品専業の会社と同じだと私は受け取りました。
リード端子は、アルミと銅の価格が上がりました。3か月ごとに販売価格へ自動で転嫁する仕組みなので影響は無い、ただ2026年前半の急な上昇は一時的に受けた、と5ページ目にあります。利益率1割の事業は、この転嫁の遅れをそのまま食らいます。
光部品の売り先が、イギリスからアメリカと日本へ動いている
セグメント表には地域別の売上も載っています。ここに5ページ目の説明文と重なるものがありました。
| 光部品・デバイス事業 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| イギリス | 16億500万円 | 13億7,100万円 |
| アメリカ | 12億3,100万円 | 18億1,400万円 |
| 日本 | 4億7,900万円 | 10億4,300万円 |
イギリス向けだけが減っています。5ページ目には「一部顧客において、前半は新製品への切り替えに伴う一時的な在庫調整が発生した」とあります。その顧客がどこの国かは、決算短信には書かれていません。私はこのイギリスの減りと、その在庫調整を重ねて読みました。この読みが当たっていれば、後半は回復傾向とも書いてあるので、下期には戻ってくる数字です。
電子記録債権が、ほぼ消えている
貸借対照表で一つ引っかかりました。電子記録債権が、前期末の11億7,900万円から3,200万円になっています。……11億が、3,200万円になっている。
売上が3割近く増えた半年で、債権が減る。売掛金は4,100万円ほど増えているだけなので、減ったのはほとんど電子記録債権です。キャッシュ・フロー計算書を開くと、営業キャッシュ・フロー40億8,300万円のうち、売上債権の減少が12億6,100万円を占めています。前年の同じ半年は、逆に債権が4億6,700万円増えていました。この一行の振れ幅だけで、前年からの営業キャッシュ・フローの増え方の半分近くが説明できます。
なぜ減ったのかは、決算短信には書かれていません。回収の方法を変えたのか、たまたま期日が6月末までに集中したのか。もし後者なら、次の四半期には債権が戻り、営業キャッシュ・フローはその分だけ元に戻ります。現金及び預金が110億500万円まで積み上がった中身の一部は、その戻りを待っているお金です。
会社はどう説明しているか
7ページ目に、両事業とも期初の想定を上回ったとあり、通期予想を上方修正しています。下期については、リード端子はAIサーバー向けコンデンサが好調に推移する、とあります。光部品は長距離海底ケーブル向けの受注増加と、多芯化に伴う新製品で、期初の想定を上回るとも書かれています。
一つ留保を付けます。下期の前提為替は1米ドル160円です。上期の期中平均は158.29円でした。今年の為替差益1億7,700万円は、円安が進んだから出た数字で、前年はその逆で5億6,000万円の差損になりました。営業外の行は、会社の仕事ではなく為替の方向で決まります。ここは信じるものではなく、眺めるものだと考えています。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 通期予想 | 進み具合 | 残り6か月に必要 | 前年下期比 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222億3,800万円 | 45.1% | 122億1,500万円 | +27.5% |
| 営業利益 | 67億5,400万円 | 43.7% | 38億500万円 | +35.4% |
| 純利益 | 46億1,800万円 | 46.0% | 24億9,500万円 | +4.5% |
進み具合と残りの額は、通期予想から今回の実績を引いた私の計算です。
売上と営業利益は半分弱まで来ていて、残り6か月に前年の下期より3割半ほど多い営業利益を求める置き方です。上方修正した直後に、下期をさらに強く見込んでいます。
一方で純利益の残り6か月は、前年の下期とほぼ横ばいです。営業が3割半増なのに純利益が横ばいなのは変に見えますが、これは上に書いた裏返しの続きです。前年の下期は為替差損も減損も無かったので、すでに高い水準でした。前期の純利益は29億9,200万円です。そこから上期の6億400万円を引いた23億8,800万円が、前年の下期の純利益です。今年の下期はその上に、営業外を当てにせず本業だけを積む予想になっています。
私はどう読んだか
この決算の見方は二つあります。純利益3.5倍を額面どおり受け取るか、営業利益6割増で受け取るか。私は後者の見方をしています。理由は、営業外と特別損失を除いたあとに残るのが、売上原価が売上より遅れて増えた分、つまり本業の改善だけだからです。
売上総利益は45億1,600万円で、売上高で割ると45.1%。前年の売上総利益は32億5,300万円です。売上高78億7,500万円で割ると41.3%でした。この差は私の割り算ですが、粗利の改善は損益計算書の数字で、3か月で消える種類のものではありません。
心配は二つ残ります。利益の8割が光部品一本に乗っていること。海底ケーブルは案件ごとに動くので、次の案件までの間が空けば、この利益率はそのまま落ちます。そして電子記録債権の減りが、営業キャッシュ・フローをどれだけ一時的に持ち上げたのか、次の四半期まで分からないことです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260806/140120260805510640.pdf
電子記録債権が11億7,900万円から3,200万円へ減った理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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