ARCHION(543A)決算分析――営業利益2,623億円のうち、2,332億円は現金が1円も入らない利益でした

8月12日に決算を発表したARCHION(543A)――営業利益2,623億円のうち、2,332億円は現金が1円も入らない利益でした 決算を読む

はじめに

ARCHIONは、今年の4月にできたばかりの会社です。トヨタ系の日野自動車と、ダイムラー系の三菱ふそう。長く別々にトラックとバスを作ってきた2社が、この会社の下に入りました。

トラックというのは、買う人の顔が乗用車とまったく違います。運送会社や建設会社が、荷物を運んで稼ぐために買う道具です。だから景気と物流の量にそのまま連動しますし、売ったあとの整備や補給部品も商売の柱になります。国内だけでなく、東南アジアで走っているトラックにもこの2社の名前は多い。

その統合会社の、いちばん最初の四半期決算が出ました。1ページ目の営業利益は、目を疑う数字になっています。ただ、この決算に限っては、1ページ目を信じてはいけません。会社自身がそう書いています。

この決算で何が起きたか

前年同期の列には注意が要ります。会計上はこの会社の「前期」は三菱ふそう単独の変則3ヶ月決算で、比較になりません。短信が参考として載せている、2社が最初から一緒だったと仮定した結合財務情報(監査法人のレビューは受けていない数字です)を置きます。増減率も短信では記載が省略されています。

項目(百万円)今回前年同期(結合・参考)増減率
売上収益597,869523,083
営業利益262,26021,960
経常利益
純利益251,45518,223

経常利益の行が空欄なのは、IFRSにはこの段の利益が無いからです。ゼロではありません。

会社の説明文では、売上は前年同期に比べ748億円、14%の増収です。ここまでは普通の良い決算に見えます。問題は営業利益の段です。

最初の表では分からなかったこと

2,332億円は「買い物がお得だった」という利益

営業利益2,623億円のうち、2,332億円(233,246百万円)は負ののれん発生益です。統合で受け入れた会社の純資産の値打ちが、支払った対価を上回っていたので、その差額を利益として計上した。会計のルールどおりですが、現金は1円も動いていません。

それを差し引いた「負ののれん発生益計上前営業利益」は290億円。結合ベースの前年同期220億円から71億円、3割強の増益です。こちらが本業の数字で、こちらは素直に良い。

しかも注記にはこうあります。取得原価の配分が完了しておらず、この2,332億円は暫定的な算定で、最長1年の測定期間内に遡及修正されうる。つまり1ページ目のあの利益は、金額そのものがまだ動く可能性があります。

キャッシュ・フロー計算書では、丸ごと消える

キャッシュ・フロー計算書を見ると、税引前利益2,623億円から負ののれん2,332億円がそっくり引き戻されています。そして営業活動によるキャッシュ・フローは△4,436百万円のマイナスでした。営業債務の減少698億円が効いています。

2,515億円の純利益を計上した四半期に、本業の現金は出ていっている。……この落差は、損益計算書だけ見ていたら気づかない。

現金残高は3,331億円まで増えていますが、投資CFの内訳を見ると「子会社の支配獲得による収入」が276,231百万円。統合した相手が持っていた現金が連結に入ってきただけで、稼いだお金ではありません。

トヨタが持分を半分に減らした

追加情報の節に、7月に実施した株式の売出しの記載があります。トヨタ自動車の議決権所有割合は37.46%から19.90%へ下がる見込み。「その他の関係会社及び主要株主」から「主要株主」へ、立場も変わります。業績への影響はないと会社は書いていますが、親元が持分を半分近くまで減らした事実は、この会社がどういう立ち位置で走り出すのかを示す情報だと思います。

台数は素直に伸びている

補足情報の売上実績を見ると、国内の新車販売は19,801台で、結合ベースの前年から4,393台増えています。3割近い増加です。海外もインドネシアの政府受注で東南アジアが伸び、世界全体で59,714台。補給部品&サービスも増収でした。ここに引っかかるものはありませんでした。良い方の意味で。

会社はどう説明しているか

会社は増収の理由を、製品供給能力の改善による国内の回復と、インドネシアにおける政府受注と説明しています。原材料価格や物流費の増加はあったが、増収で吸収したと。この説明は台数の実績と整合していて、そのまま受け取ってよいと思います。

一方で負ののれんについては、会社自身が「暫定的に算定」と繰り返し断っています。監査法人もレビュー報告書の強調事項でこの点に触れました。会社も監査人も「まだ固まっていない数字だ」と言っているのだから、読む側もそう扱うべきです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目(百万円)通期予想Q1実績進捗率
売上収益2,425,000597,86924.7%
営業利益343,246262,26076.4%
純利益303,246251,45582.9%

売上はちょうど4分の1で、教科書どおりの進み方です。利益の進捗率は8割前後まで来ていますが、これは分子にも分母にも負ののれんが入っているせいで、実態を表していません。会社は負ののれん前の通期営業利益を1,100億円と別建てで示しており、Q1の290億円はその4分の1あたり――これは私が並べて眺めた話で、会社が印字した進捗率ではありません。残り9ヶ月に必要な営業利益は809億円です。

配当は年8円の予想で、予想配当性向は7.3%。純利益の大半が非現金の利得なので、この低さはむしろ整合的です。

私はどう読んだか

私は「本業は悪くないが、1ページ目の利益と進捗率は判断材料にしない」側に寄せて読んでいます。理由は、営業利益の9割近くが現金の入らない、しかも暫定の利得で、営業CFがマイナスだからです。逆に言えば、負ののれんを外した290億円と台数の伸びだけを見れば、統合初四半期としてまともな滑り出しです。悪い決算だとは思っていません。読み違いかもしれませんが、この会社の実力が数字で見えるのは、負ののれんが消える次の四半期からだと思います。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260807515484.pdf

営業債務が698億円減った理由――支払条件の統一なのか、期ズレなのか――は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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