マイポックス(5381)第1四半期決算分析――決算賞与の処理を変えた、と説明会資料にだけ書いてある

マイポックス(5381)第1四半期決算分析――決算賞与の処理を変えた、と説明会資料にだけ書いてある 決算を読む

はじめに

マイポックスは研磨材の会社です。研磨材といっても、ホームセンターに並ぶ紙やすりの延長ではなく、主力は精密研磨フィルム。光ファイバーの先端を磨いたり、ハードディスクの表面を仕上げたり、半導体ウェーハを削ったりするための消耗材です。データセンターの中で光を通す部品には、端面をナノメートル単位で平らにする工程があって、そこで使われる。つまり、生成AIやデータセンターへの投資が増えると、その裏側で静かに減っていく類いの製品を作っています。

創業は1925年で、もとはドイツ資本の顔料と色箔の輸入業者でした。箔を「塗る・切る」技術が研磨フィルムに転じて、今の姿になっています。買収で一般向けの研磨材も広げていて、自動車や鉄鋼向けも持っている。派手な会社ではありませんが、工程の奥のほうに座っている会社です。

2026年8月7日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。

この決算で何が起きたか

数字だけ見ると、跳ねた四半期です。

項目今回前年同期増減率
売上高3,2472,693+20.5%
営業利益37384+343.4%
経常利益40819
純利益246△36

(百万円)

売上が2割伸びて、営業利益は4倍を超えました。前年同期は最終赤字だったのが、今回は246百万円の黒字。同じ日に、通期の営業利益予想を900百万円から1,200百万円へ引き上げる上方修正も出しています。

最初の表では分からなかったこと

経常の跳ねには、為替の振れが乗っている

経常利益が19百万円から408百万円へ、という並びがいちばん目を引きますが、営業外の内訳を見ると、前年同期は為替差損が80,688千円あり、今期は逆に為替差益が34,420千円入っています。差し引きで100百万円を超える振れが、営業の外側で起きている。経常の回復幅をそのまま実力と読むと、その分だけ多く見積もることになります。

ただし、営業利益373百万円のほうには為替差損益は入っていません。売上総利益は1,040百万円から1,436百万円へ増えています。営業利益率でいえば、3.1%から11.5%へ。こちらは本業の変化です。

稼いだのは製品事業だけで、受託事業はまだ赤字

セグメントの表を見ると、製品事業の売上は3,073百万円で、前年同期比23.6%増。セグメント利益は426百万円です。一方、受託事業は売上173百万円で16.1%減。セグメント損失は52百万円です。前年同期も76百万円の損失だったので、赤字は縮んだが消えてはいない。会社全体の営業利益373百万円は、製品事業が稼いで受託事業が食っている構図のままです。

利益ほど現金は増えていない

貸借対照表では、現金及び預金が387百万円減っています。代わりに売掛金が247百万円、棚卸資産が242百万円増えている。増収局面ではよくある形ですが、利益246百万円がそのまま現金になったわけではない、というのは見ておきたいところです。なお、四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していない、と短信に明記されています。

決算賞与の処理を変えた、と説明会資料には書いてある

ここで引っかかったことが一つ。会社が別に出した決算説明会資料の12ページに、前期まで期末に一括で費用処理していた決算賞与を、今期の第1四半期から引当処理にした、という記載があります。短信の貸借対照表を見ると、賞与引当金は274,662千円から329,671千円へ、たしかに55百万円増えている。

処理を平準化する方向の変更なので、変更自体は真っ当だと思います。ただ、前年の第1四半期には期末一括処理だった賞与費用が乗っておらず、今期は乗っている、ということになるので、前年同期との利益の比べ方が厳密には揃っていません。そしてこの説明は短信には書かれていません。短信2ページの注記では、会計方針の変更は「無」となっています。見積りの変更として整理したのかもしれませんが、そこは短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。

8月1日に子会社が一つ増えた

後発事象の注記に、三光化学工業という岐阜の会社の議決権64.01%を、224,050千円で8月1日付で取得したとあります。植毛フィルムという、光ファイバー向け製品の製造工程で使う材料の会社で、原料調達から製造までの一貫体制を作るための買収だと説明されています。今回の数字にはまだ入っていません。次の四半期から連結に乗ってくるはずです。

会社はどう説明しているか

会社は、AI・データセンター投資を背景にデータネットワーク分野が好調で、光ファイバー関連の需要が旺盛、HDDと半導体も回復基調、と説明しています。上方修正の理由も同じで、ハイテク関連製品は相対的に利益率が高く、そこに為替の影響も寄与した、と。

この説明は、セグメントの数字と矛盾しません。売上の増え方より利益の増え方が大きいのは、利益率の高い製品の比率が上がったという説明で筋が通ります。ただ、会社自身が為替の寄与を修正理由に挙げている以上、上方修正の300百万円がすべて需要の話ではない、という留保は付けておきます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目通期予想Q1実績進捗率
売上高13,0003,24725.0%
営業利益1,20037331.1%
経常利益1,20040834.0%
純利益90024627.3%

(百万円)

売上はちょうど4分の1。利益は上方修正後の予想に対しても3割を超えていて、目安より先を歩いています。残り9ヶ月で必要な営業利益は827百万円で、これは前年の同じ9ヶ月より67%多い水準です。ハードルが低いわけではありませんが、この第1四半期の利益率が続くなら届く置き方だとは読めます。配当は10円予想で据え置きです。

私はどう読んだか

私は、この決算は良いほうに寄せて読んでいます。理由は、跳ねた利益の中心が営業利益にあって、そこには為替差損益が入っていないからです。営業利益率が3.1%から11.5%へ動いたのは、製品構成が変わったという会社の説明と数字が合っています。

そのうえで、留保を二つ。経常と純利益の回復幅には為替の振れが乗っていること。そして、決算賞与の引当処理への変更で、前年同期との比較の土台が厳密には揃っていないこと。後者は金額でいえば55百万円の話で、373百万円という営業利益の伸びを覆すものではありませんが、この件を短信ではなく説明会資料でしか説明していないのは、少し不親切だと思いました。私の読み違いかもしれませんが、変更の影響額がどれだけ前年比較を歪めているのかは、開示からは確かめられません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514773.pdf

四半期の営業キャッシュ・フローが実際にいくらだったかは、キャッシュ・フロー計算書が作成されておらず読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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