はじめに
JR西日本です。山陽新幹線と、北陸から近畿、中国、九州北部までの在来線を動かしています。朝の通勤電車も、出張で乗る新幹線も、連休の旅行も、この会社の線路の上で起きています。
鉄道だけの会社ではありません。駅の中の売店や飲食店、駅ビルのショッピングセンター、ホテル、沿線の不動産。駅に人が集まることを前提にして、その周りで商売を広げてきた会社です。
だから、人が動かなくなると全部が同時に止まります。コロナのときにそれを見ました。逆に人が戻れば、運賃と駅と商業施設が一緒に戻ってきます。その戻りがどこまで来たのかを見る半年だと思って、短信を開きました。
売上だけが前年を超えた半年
11月5日に出た中間決算です。上半期の数字はこうなっています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,792億5,900万円 | 8,718億2,900万円 | +0.9% |
| 営業利益 | 1,154億6,300万円 | 1,229億2,900万円 | -6.1% |
| 経常利益 | 1,064億7,600万円 | 1,151億4,500万円 | -7.5% |
| 純利益 | 737億3,100万円 | 867億1,600万円 | -15.0% |
売上は1%ほど増え、利益は3段すべて前年を下回りました。営業収益が74億円増えています。これに対して、運輸業等営業費及び売上原価が125億円増え、販売費及び一般管理費も23億円増えました。増えた売上を費用の増加が食べた形です。営業利益率は14.1%から13.1%へ下がりました。
経常利益のほうが深く落ちている
引っかかったのは、落ち方が下に行くほど大きくなっていることです。営業利益は6%減、経常利益は7.5%減。この差は損益計算書の営業外にありました。
| 項目 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 営業外収益合計 | 46億100万円 | 32億8,400万円 |
| うち受取利息 | 7億8,700万円 | 7,500万円 |
| 営業外費用合計 | 135億8,800万円 | 110億6,900万円 |
| うち支払利息 | 130億5,200万円 | 104億5,600万円 |
支払利息が26億円増えています。借りている額そのものが増えているからです。貸借対照表を見ると、社債は前期末の8,099億9,800万円から8,895億9,800万円へ増えています。長期借入金は5,941億7,100万円から6,400億4,800万円へ。半年で合計1,250億円ほど増えました。
受取利息は7,500万円から7億8,700万円へ増えました。10倍です。これも同じ話の裏側で、手元に資金を置いているぶん、利息が入ってきています。
稼いだ資金は3分の2に、手元の残高は2倍に
キャッシュ・フロー計算書まで行くと、数字の向きが揃っていません。
| 項目 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 929億900万円 | 1,373億7,200万円 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,325億4,900万円 | △881億4,100万円 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 657億円 | △538億7,100万円 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,619億8,000万円 | 1,219億1,500万円 |
本業で入ってきた資金は3分の2に減り、設備などに出した資金は4割以上増えました。稼いだぶんでは足りないので、社債を896億円発行し、長期の借入も630億円入れています。それでも手元の残高は前年の2倍以上に積み上がりました。
営業キャッシュ・フローが落ちた内訳も書かれています。棚卸資産が490億8,900万円ぶん増え、仕入債務が749億5,900万円ぶん減っています。棚卸資産そのものは、前期末の2,055億4,900万円から2,610億1,400万円へ。半年で554億円増えました。土地も151億円増えています。
鉄道の切符に在庫はありません。この会社の棚卸資産は、分譲用の不動産などだと考えるのが自然です。ただ、何が増えたのかは短信には書かれていませんでした。
10月1日に出ていった900億円
手元に資金を積んだ理由は、短信のいちばん後ろの注記にありました。後発事象です。
10月1日に、りそなホールディングスから関西みらい銀行の株式2,000万株を取得し、持分法適用関連会社にしています。取得価額は900億円。「自己資金による現金での支払い」と書いてあります。
9月末の現金及び預金は2,623億2,600万円。前期末に541億円あった有価証券はゼロになっています。短期で運用していたものを現金に戻し、社債と借入を増やして、9月末時点で2,600億円を用意していました。その翌日に900億円が出ていったわけです。順番としては合っています。
鉄道会社が銀行の株を5分の1持つ。移動と暮らしと金融をつなげる新しい商売に挑むためだ、と取得目的に書かれています。これが利益として返ってくるのは下半期からです。利息の増加は、もう上半期の数字に入っています。
会社自身の説明は、この短信には載っていない
経営成績の説明を探しに行くと、5ページ目にあったのは1文だけでした。概況については同日に開示する補足資料に記載のとおりだ、と書いています。短信本体に、会社の言葉での説明文は1行もありません。
一方で表紙には「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:有」と書かれています。通期予想を直したということですが、どちらへ動かしたのか、なぜ動かしたのかは、この短信には書かれていません。補足資料を作ったことも、11月5日に説明会を開く予定も表紙に書いてありますが、私はそちらを読んでいません。言えるのは「短信には理由が無い」までです。
配当のほうは修正無しで、年間97.50円の予想が据え置かれています。予想1株利益261.47円で割ると、配当性向は37%ほど。これは私の割り算です。
下半期は、純利益だけ増える前提になっている
上半期が通期予想のどこまで来たのかを並べます。
| 項目 | 上半期の実績 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,792億5,900万円 | 1兆8,670億円 | 約47% |
| 営業利益 | 1,154億6,300万円 | 1,850億円 | 約62% |
| 経常利益 | 1,064億7,600万円 | 1,660億円 | 約64% |
| 純利益 | 737億3,100万円 | 1,190億円 | 約62% |
約を付けた進捗率は、上半期の実績を通期予想で割った私の計算です。
売上は半分に届いていないのに、利益は6割を超えています。夏に旅客が集まる会社なので、上半期に利益が寄るのは不思議ではありません。ではこの予想は、残りの半年に何を見込んでいるのか。通期予想から上半期の実績を引きます。
| 残りの半年 | 必要な額 | 前年の下半期と比べて |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,877億4,100万円 | 約1%増 |
| 営業利益 | 695億3,700万円 | 約7%減 |
| 経常利益 | 595億2,400万円 | 1割以上減 |
| 純利益 | 452億6,900万円 | 1割ほど増 |
必要な額は通期予想から上半期の実績を引いたもので、前年の下半期との比較も私の割り算です。
営業利益と経常利益は前年の下半期より減る見込みなのに、純利益だけ1割増える見込みになっています。……いや、これは順番が逆だ。経常利益から純利益までの間にあるのは特別損益と税金です。前年の下半期に特別損失か重い税負担があったのか、今年の下半期に特別利益を見込んでいるのか。短信の数字からは、どちらなのかは分かりませんでした。
私はこう読みました
この半年の主役は、6%減った営業利益ではなく、10月1日に出ていった900億円だと考えています。理由は、借入と社債を増やし、短期の運用を現金に戻し、手元に2,600億円を積んだからです。この動きが、全部その支払いに向かって揃っています。上半期の損益計算書には、その支払いのための利息だけが先に出ていて、成果はまだ1円も入っていません。
心配性なので、借りた側から先に見ます。半年で1,250億円ほど増えた借入は、これから毎期の支払利息として戻ってきます。すでに上半期で26億円増えました。鉄道の設備投資に加えて、銀行の持分と不動産の在庫が積み上がります。それを支えるのが有利子負債です。自己資本比率は30.3%から31.1%へ上がっているので、今すぐ苦しい形ではありません。
上がるかどうかは知りません。ただ、営業利益の進捗率が6割を超えていることだけを見て「順調」と受け取る決算ではない、とは言えます。本業で入ってきた資金は前年の3分の2です。
出典:決算短信(会社発表)

下半期だけ純利益が前年より増える前提になっている理由は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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