はじめに
社員のスキル、人事評価、適性検査の結果、従業員アンケート。会社の中には人にまつわるデータが散らばっていて、たいてい別々のファイルに入ったまま眠っています。それを一つの画面に集めて、誰をどこに配置するか、誰を採用するかをデータで考えられるようにする。プラスアルファ・コンサルティングの主力「タレントパレット」は、そういうソフトです。大手企業の人事部が主な買い手で、月々の利用料で稼ぐSaaS型。ほかに、コールセンターに届く顧客の声やSNSの口コミを分析する「見える化エンジン」、EC事業者向けのマーケティングツール「カスタマーリングス」、学校向けの「ヨリソル」を持っています。人事側とマーケティング側、2本柱の会社です。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 14,010 | 12,481 | +12.3% |
| 営業利益 | 5,368 | 4,430 | +21.2% |
| 経常利益 | 5,358 | 4,373 | +22.5% |
| 純利益 | 3,667 | 2,960 | +23.9% |
(単位:百万円)
売上が1割強増えて、利益は2割増。営業利益率は前年同期の35.5%から38.3%に上がっています。1ページ目だけ見れば、文句のない決算です。
最初の表では分からなかったこと
利益の伸びの一部は、費用の側から来ている
売上の伸びより利益の伸びが大きいとき、私はその差の出どころを探しに行きます。今回、損益計算書で引っかかったのは販管費でした。販売費及び一般管理費が4,605,708千円から4,469,059千円へ、売上が伸びているのに減っています。会社は「マーケティング施策を見直したことで費用が圧縮された」と自分で書いています。
もう一つ、注記のページにありました。のれんの償却額が163,962千円から53,393千円へ、3分の1になっています。減価償却費も178,000千円から142,133千円へ減っています。買収した会社ののれんを償却し終えた分、費用が軽くなった。これは事業が強くなったのとは別の話です。
一方で売上原価は3,444,917千円から4,172,812千円へ増えています。ここから先は私が割り算した数字ですが、売上総利益の率は前年同期の72%台から70%程度に下がっています。原価側はむしろ重くなっていて、利益率の改善は販管費と償却の側で起きている。……この構図は、来期も同じ追い風が吹くとは限らない。
2本柱の片方は、減収減益
セグメント表を見ると、伸びているのはHRソリューションだけです。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| HRソリューション | 11,287,360千円 | +17.7% | 5,441,350千円 | +31.9% |
| マーケティングソリューション | 2,725,345千円 | −5.7% | 1,038,854千円 | −17.6% |
マーケティング側について、会社は「ライトユーザーを中心に解約率がやや高い水準で推移しており、顧客数が減少傾向」と、見える化エンジンの弱さを自分の言葉で認めています。カスタマーリングスも顧客単価は上がっているが顧客数減で売上は微減、と書いています。規模はHR側の4分の1ほどなので全体は隠れますが、片方の柱が細っていること自体は事実です。
キャッシュ・フロー計算書が無い
私は短信を開いたらキャッシュ・フロー計算書まで行く習慣なのですが、この短信には「当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」と印字されていました。第3四半期短信では作成しない会社は珍しくないので、それ自体は責める話ではありません。
代わりに貸借対照表を見ると、現金及び預金は1,993,451千円増えています(会社の説明文に印字されている数字です)。売掛金は微減、契約負債は増加。利益が現金にならないタイプの心配は、この並びからは見えませんでした。
後発事象に、会社の形が変わる話が並んでいる
この短信、業績と同じくらい後ろのページが厚い。同じ8月12日前後に決まったことが並んでいます。
- ラクスとの資本業務提携の覚書。ラクスが筆頭株主から株式を追加取得し、この会社をラクスの持分法適用関連会社にするという内容です。OEM製品「楽楽人事労務」の協業を一歩深める形だと会社は説明しています。
- 従業員のウェルビーイング支援サービスを提供するCradle社の株式85%を1,075,250千円で取得。
- 自己株式の取得(上限570,000株・1,000,000千円)。
- 本社移転(2027年6月予定)。
業績への影響は軽微、と会社は書いています。ただ、大株主の構成が変わり、他社の関連会社になるというのは、業績の数字より会社の形そのものに関わる話です。1ページ目には一文字も出てきません。
会社はどう説明しているか
利益の伸びについて会社は「エンタープライズ企業の獲得に注力する方針のもと、マーケティング施策を見直したことで費用が圧縮された」と説明しています。広く浅く広告を打つのをやめて、大手に絞った。大手中心なら1社あたりの単価も高く、既存顧客への値上げやアップセルも進んでいると書いています。
説明としては筋が通っています。ただ、費用を絞って利益が出るのは絞った期だけの話で、この利益率が新しい実力なのか、一度きりの引き算なのかは、この短信からは判定できません。そこは次の期を見るしかない、と受け取っています。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 19,500 | 71.8% |
| 営業利益 | 7,500 | 71.6% |
| 純利益 | 5,200 | 70.5% |
(単位:百万円。予想は2025年11月14日公表から変更なし)
この時期の目安である75%に、どれも少し届いていません。ここから先は機械に計算してもらった数字ですが、残り3ヶ月で売上5,490百万円、前年の同じ3ヶ月に対して+19.0%が必要です。累計の伸びが+12.3%の会社に、最後の四半期だけ+19%を求める置き方になっている。SaaSは積み上げ型なので四半期を追うごとに伸びやすい構造ではありますが、軽い数字ではありません。
なお通期の純利益予想は前期比+59.6%と、売上や営業利益の伸びと明らかに桁が違います。前期の純利益を大きく削った何かがあったはずですが、この短信の中にその説明はありません。
私はどう読んだか
私は「事業は強いが、利益の伸び幅の一部は費用側の追い風」に寄せて読んでいます。理由は、販管費の圧縮とのれん償却の減少という、売上と関係なく効く要因が今回まとめて乗っているからです。HRソリューションの+17.7%という売上の伸び自体は本物だと思います。読み違いかもしれませんが、営業利益率38.3%を来期の前提に置くのは、まだ早い気がします。
上がるかは知りません。ただ、片方の柱が細り、会社の形が変わる決定が後ろのページに並んでいたことは、1ページ目からは分かりませんでした。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260812/140120260810517037.pdf
通期の純利益予想が前期比6割増になる理由――前期に何があったのか――は、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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