車のエアコンから、ぶつからないためのセンサーまで
デンソーは、自動車の部品を作っている会社です。エンジンや駆動まわりの部品、車内を冷やしたり暖めたりする空調の機器も作っています。電気で走る車に要る部品もあります。前の車や人に近づきすぎたときに知らせて止めるための安全の部品まであり、扱う範囲はとても広い会社です。
この会社の部品を買うのは自動車メーカーです。私たちが店で手に取ることはありません。それでも、通勤の車でエアコンを入れたときや、駐車場で警告音が鳴ったときに、その裏で動いているのはこの会社の部品かもしれません。
私も自動車部品の会社で働いていますが、規模がまるで違います。同じ業界の端から、決算短信を印刷して赤ペンを持ちました。
売上は増え、営業利益は2割減りました
2026年10月29日に出た中間決算で、4月から9月までの半年の数字です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆8,435億5,000万円 | 3兆5,904億6,700万円 | +7.0% |
| 営業利益 | 1,701億4,700万円 | 2,114億1,700万円 | △19.5% |
| 経常利益 | 記載なし | 記載なし | — |
| 純利益 | 1,197億9,400万円 | 1,313億5,700万円 | △8.8% |
経常利益の欄が無いのは、国際会計基準で作られた短信だからです。純利益は、親会社の所有者に帰属する中間利益を入れています。
売上は7%増えたのに、営業利益は2割減りました。純利益の減り方が1割に満たないのは、法人所得税費用が前年の932億8,400万円から699億7,200万円へ減ったからです。
日本の増益と北米の減益が、ほぼ同じ額で打ち消し合う
地域ごとの営業利益を前年と並べると、減った分がどこから来たのかが分かります。
| 地域 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 日本 | 315億6,200万円 | 490億2,900万円 |
| 北米 | 569億3,500万円 | 394億5,600万円 |
| 欧州 | 86億4,400万円 | △14億3,500万円 |
| アジア | 958億9,700万円 | 690億8,200万円 |
| その他 | 116億1,500万円 | 131億1,400万円 |
| 消去又は全社 | 67億6,400万円 | 9億100万円 |
| 連結 | 2,114億1,700万円 | 1,701億4,700万円 |
出典:決算短信のセグメント情報
日本は175億円増え、北米は175億円減りました。ほぼ同じ額で、互いを打ち消しています。全社の減益413億円の大半は、アジアと欧州の分です。
アジアの減益の理由として、短信4ページ目は車両販売の減少と操業度差損を挙げています。工場の稼働が落ちて、固定費を吸収しきれなかったという意味です。欧州は部材費の高騰と品質費用で、黒字から赤字に転じています。この品質費用の金額は、決算短信には書かれていません。
営業キャッシュ・フローの増加は、売掛金の回収と税金の差から
利益は減ったのに、営業キャッシュ・フローは7割以上増えています。中身を分けると、増えた理由が見えてきます。
| 営業キャッシュ・フローの主な項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 税引前中間利益 | 2,444億4,200万円 | 2,014億7,700万円 |
| 売上債権の増減 | 175億7,800万円 | 1,069億5,600万円 |
| 棚卸資産の増減 | △416億600万円 | △945億2,900万円 |
| 仕入債務の増減 | △809億9,700万円 | △93億5,100万円 |
| 法人所得税の支払額 | △1,562億4,100万円 | △1,131億6,600万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,932億4,300万円 | 3,358億5,700万円 |
出典:決算短信のキャッシュ・フロー計算書(△は現金が出ていった側)
売掛金の回収で入った現金が多く、買掛金の支払いで出ていった分は前年より小さくなりました。税金の支払いも少なく、この3つで利益の減少を上回っています。前年も売上債権は同じ向きに動いているので、3月末に膨らんだ売掛金が回収される季節の動きが含まれていると考えています。
一方で、在庫は積み上がっています。棚卸資産は3月末の1兆3,368億4,400万円から、9月末には1兆4,217億5,800万円になりました。
借りたお金で、自己株式を取得している
現金の使い道を追うと、この決算でいちばん大きな動きが出てきます。私が引っかかったのはここです。
営業キャッシュ・フローは3,358億5,700万円で、投資活動に2,176億5,400万円を使っています。差し引きで手元に残るのは1,182億300万円です。それに対して、この半年で自己株式の取得に3,135億8,600万円を使いました。配当も942億2,200万円払い、子会社の他の株主への配当も492億7,800万円あります。
残った現金では、まったく足りません。差を埋めたのは借入と社債です。
| 社債及び借入金 | 2026年3月末 | 2026年9月末 |
|---|---|---|
| 流動負債の側 | 2,374億200万円 | 1,340億5,700万円 |
| 非流動負債の側 | 5,738億8,000万円 | 1兆659億2,500万円 |
| 合計 | 約8,112億8,200万円 | 約1兆1,999億8,200万円 |
約の付いた合計は、短信の2つの数字を私が足したものです。
半年で、社債と借入金は約3,887億円増えました。自己株式の取得額とほぼ同じ規模です。……つまり、借りて自己株式を取得している。現金及び現金同等物は1兆1,891億2,600万円から1兆2,570億2,900万円へ、むしろ増えています。
財務の仕事をしていると、手元の現金を減らさずに借りて株主に返す判断があるのは分かります。ただ、費用はかかっています。支払利息は前年の79億9,600万円から138億6,700万円に増えました。親会社所有者帰属持分比率も、62.9%から59.3%に下がっています。
株数は減っています。純利益が1割近く減ったのに、1株当たり利益は47円70銭から46円36銭で、減り方は小さく収まりました。理由は、期中の平均株式数が27億5,394万株から25億8,416万株に減ったからです。短信の最後の注記には、10月29日の取締役会でさらに自己株式の取得と消却を決めたとあります。規模は別のお知らせに書かれていて、私はまだ開いていません。
会社の説明は、損益計算書と同じ向きです
短信4ページ目によると、増収の理由は車両販売の増加と、電動化・安全製品の装着拡大です。減益の理由には、部材費等の高騰、将来に向けた開発投入の強化、前年度の一過性要因を挙げています。操業度差益、円安の進行、合理化努力がプラスに働いたものの、それでは埋まらなかったという説明です。
損益計算書の数字は、この説明と合っています。売上は増えたのに、売上総利益は5,209億2,400万円から5,091億1,900万円に減りました。販売費及び一般管理費は3,070億600万円から3,342億2,000万円に増えています。
ただ、確かめられなかったことが1つあります。日本の増益の理由として、会社は円安の進行を最初に挙げています。製品が広がったことによる増益と、為替による増益がそれぞれいくらなのかは、決算短信には書かれていません。表紙には補足説明資料を作ったとありますが、そちらは読んでいません。
下期に上期の倍近い利益が要るが、前年も同じ形でした
| 通期予想 | 中間実績 | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7兆7,500億円 | 3兆8,435億5,000万円 | 約49.6% |
| 営業利益 | 5,000億円 | 1,701億4,700万円 | 約34.0% |
| 純利益 | 3,820億円 | 1,197億9,400万円 | 約31.4% |
約の付いた進捗率は、中間実績を通期予想で私が割ったものです。
売上は半分まで来ていますが、営業利益は3分の1ほどです。通期予想の5,000億円から、中間実績の1,701億4,700万円を引きます。下期に要る営業利益は3,298億5,300万円になります。上期の倍近い額です。
前年と並べると、これが特別な数字ではないことが分かります。表紙では、通期予想の営業利益は前期より9.5%少ないとされています。つまり5,000億円は前期の0.905倍です。これを0.905で割ると、前期の営業利益はおよそ5,525億円になります。そこから前年上期の2,114億円を引くと、前年の下期はおよそ3,411億円でした。今期の下期は、それより3%ほど少ない額で足りることになります。
会社は予想を据え置き、下期の為替の前提を1ドル153円、1ユーロ180円としています。部材費の高騰や操業度差損は、円安と合理化で相殺できる見込みだと書いています。
私はどう読んだか
私は、この半年の稼ぐ力は前年より弱い、という見方をしています。理由は、売上が増えた中で売上総利益が減り、その差を埋めた要素の筆頭に円安があると、会社自身が書いているからです。営業キャッシュ・フローの厚さも、売掛金の回収と税金の支払いの差によるところが大きいと考えます。
そのうえで、自己株式の取得は借入で賄った、と読みました。下期の予想そのものは、前年の形を見る限り無理な数字ではありません。心配性なので、増えた在庫と、10月に決めた次の取得の規模は頭に置いておきます。株の値段がどう動くかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
欧州で発生した品質費用がいくらで、来期以降も続く種類のものなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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