はじめに
インテグループは、中小企業の売り買いを取り持つ仲介会社です。後継ぎのいない会社のオーナーが「誰かに引き継いでほしい」と考えたとき、買い手を探し、条件をすり合わせ、契約までつなぎます。
扱うのは小ぶりな案件が中心です。手数料は、話がまとまったときにだけ受け取ります。途中で破談になれば、それまでの手間は一円にもなりません。
つまり、この会社の売上は「その期間に何組まとまったか」でほぼ決まります。製品を作って売る会社とは、決算の揺れ方がまったく違います。私が短信を読むときも、まず件数を探しました。
赤字だった3か月が、黒字になった
2026年9月30日に出た、第1四半期(6月から8月)の決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4億3,900万円 | 1億6,800万円 | +160.8% |
| 営業利益 | 7,500万円 | △1億100万円 | — |
| 経常利益 | 7,900万円 | △9,900万円 | — |
| 純利益 | 5,500万円 | △6,800万円 | — |
売上は2.6倍になり、前年の赤字がそのまま黒字に入れ替わりました。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
いつもの順番で、キャッシュ・フロー計算書を探しにいきました。短信の7ページ目の注記に「作成しておりません」とあります。第1四半期では作らない会社は珍しくないので、責める話ではありません。
ただ、確かめたかったことが確かめられません。そこで貸借対照表で代わりを探しました。
引っかかったのは現金です。8月末の現金及び預金は19億181万円で、5月末から1億2,057万円減っています。5,529万円の利益を出した3か月で、手元のお金は減っていました。……順番が逆に見える。
現金が減った理由は、賞与と配当で説明が付く
会社は短信の4ページ目で、現金が減った主な理由を「決算賞与及び配当金の支払い等」と書いています。これを貸借対照表の行で追いました。
| 科目 | 5月末 | 8月末 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 20億2,238万円 | 19億181万円 |
| 売掛金 | 1,100万円 | なし |
| 未払金 | 2億7,575万円 | 2,702万円 |
| 賞与引当金 | なし | 8,486万円 |
| 利益剰余金 | 15億6,302万円 | 15億7,463万円 |
未払金は2億4,872万円減っていて、会社はこれを決算賞与の支払いと説明しています。前の期の賞与を、この3か月で払ったわけです。
配当は利益剰余金から逆算できます。純利益5,529万円に対し、利益剰余金は5月末から8月末までの差で見ると1,161万円しか増えていません。純利益からこの増加分を引くと、4,368万円になります。これが配当で出ていった分だと私は計算しました。前期末の配当20円に株数を掛けた額とも合います。
売掛金が8月末にゼロになっている点も見ておきました。この3か月の売上は、四半期が終わるまでにお金として入っていたことになります。成功報酬の商売らしい形です。
一方で、賞与引当金8,486万円と未払法人税等4,003万円は、まだ払っていないお金です。今期の利益からも、いずれ同じように賞与が出ていきます。現金の減り方は、この会社の1年の支払いの流れに沿ったもので、利益の質を疑う材料は見つかりませんでした。
増えた売上の多くが、そのまま利益に残った
損益計算書に戻ると、黒字化の中身が見えます。
| 科目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 売上原価 | 1億3,038万円 | 2億1,102万円 |
| 売上総利益 | 3,811万円 | 2億2,849万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 1億3,983万円 | 1億5,282万円 |
売上原価は増えていますが、売上の伸びほどではありません。販管費の増え方は1割に届いていません。事務所や本社の費用がほぼ横ばいのまま、成約の分だけ粗利が積み上がった形です。ここまでは損益計算書の数字です。
売上原価の中身は、短信には書かれていません。仲介会社の原価は人の費用が大半で、成約に応じた報酬が含まれているのだろう、と私は読みました。そうだとすれば、売上が落ちたときに費用も一緒に下がる作りです。
営業外では、受取利息が342万円ありました。20億円近い現金を持っていれば出てくる額です。借入金の行は貸借対照表にありません。
会社はどう説明しているか
短信の4ページ目で、会社は成約組数を書いています。前年同期の6組から、今回は11組。M&Aコンサルタントは44名から50名に増えました。
売上が伸びた理由は、この組数の増加で説明が付きます。1組あたりの手数料は短信に書かれていないので、案件が大きくなったのかどうかは分かりません。
気になったのは、同じ段落の手前です。売りに出る案件が増えた結果、買い手が慎重に選ぶようになった、と説明があります。そのため「成約率が低下している」と、会社は自分で書いています。そのうえで、買い手の情報を集めるチームや、部門ごとの評価制度などの手を打っていると続けています。
業績が伸びた四半期に、あえて逆風のほうを書いている。私はこの書き方を、そのまま受け取ります。成約率の数字そのものは短信に載っていないので、どれだけ下がったのかは分かりません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
業績予想は5月に出したまま、変えていません。
| 通期予想 | 今回まで | 残り9か月に必要な額 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 20億9,300万円 | 4億3,900万円 | 16億5,400万円 |
| 営業利益 | 3億600万円 | 7,500万円 | 2億3,100万円 |
| 純利益 | 2億1,800万円 | 5,500万円 | 1億6,300万円 |
売上は通期の2割ほどで、4分の1には少し届いていません。利益のほうはほぼ4分の1です。残り9か月で必要な売上は、前年の同じ9か月より2割近く多い額を見込んでいることになります。これは私の引き算です。
配当は前期の20円から、今期は50円の予想です。
私はどう読んだか
売上の進み方の遅れと、成約率の低下。心配のタネは2つ並んでいます。それでも私は、今回の四半期は「費用が売上と一緒に動く会社が、件数を積んだ3か月」だと考えています。理由は、販管費がほとんど増えず、借入も無く、売上がそのまま手元のお金に変わっているからです。
裏を返せば、この会社の通期は件数でしか決まりません。11組が次の四半期も続くのかは、成約率が下がっていると書いた会社自身にも読み切れていないはずです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
成約率がどこからどこまで下がったのかと、1組あたりの手数料の大きさは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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