住宅ローンの手続きを、銀行の外で引き受けている会社
ミトラグループは、家の売り買いや住宅ローンの裏側にある事務を引き受けている会社です。今年、エスクロー・エージェント・ジャパンから社名を変えました。
住宅ローンを組むと、銀行の中では書類の確認や登記の段取りといった手続きがたくさん発生します。その一部を銀行から預かり、自社のクラウドの仕組みで進み具合を管理するのが、いちばん大きな事業です。相続の手続きや信託も、この事業に入っています。
ほかにも、売り手と買い手が会わずに代金をやり取りできる決済の仕組みがあります。建築会社向けには敷地の調査や図面づくりを請け負い、司法書士向けには登記申請のソフトを売っています。家を買う人がこの名前を目にすることはまずありません。銀行、不動産会社、司法書士が使う道具の側にいる会社です。
売上は1割増えて、利益は前年並み
10月7日に出た中間決算で、3月から8月までの半年分です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 26億500万円 | 23億6,800万円 | +10.0% |
| 営業利益 | 1億5,900万円 | 1億5,900万円 | +0.4% |
| 経常利益 | 1億5,500万円 | 1億5,800万円 | △2.0% |
| 純利益 | 1億2,000万円 | 1億2,600万円 | △4.6% |
表だけを見ると、増収で利益が少し足踏みした半期です。
営業利益の中に、引当金の戻し1億12万円が入っています
短信の4ページ目に、会社の説明があります。前の期末に一部の取引先向けに積んだ貸倒引当金を、相手の経営と財務の状況を踏まえて見直し、1億12万円を戻した。戻した額は販売費及び一般管理費に入れた、という内容です。
貸倒引当金は、回収できないかもしれない分を先に費用にしておくものです。回収できそうだと分かれば、その費用を取り消します。取り消しで利益は増えますが、現金が入ってくるわけではありません。
引っかかったのは、11ページ目の販管費の内訳でした。「貸倒引当金繰入額」の行が、今回だけでなく前年の中間期もマイナスになっています。……前年も、か。
取り消しの分を両方の年から外すと、前年の6割ほどです
その行を、両方の年の営業利益から外してみました。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 営業利益 | 1億5,904万円 | 1億5,959万円 |
| 販管費の貸倒引当金繰入額 | △6,526万円 | △9,974万円 |
| この行を除いた営業利益 | 約9,377万円 | 約5,985万円 |
約の付いた数字は私の引き算です。繰入額のマイナスは、その分だけ費用を減らして利益を押し上げているので、営業利益からその分を差し引きました。
並べると、横ばいに見えた営業利益は、取り消しを除けば前年の6割ほどに細っています。会社が説明文で書いた戻しは1億12万円で、内訳の行は9,974万円と少し違います。新しく積んだ分と相殺した結果だと思いますが、その内訳は短信にありません。
粗利は増えて、同じだけ費用も増えました
本業の利益がなぜ細ったのかを、損益計算書とセグメントの表で確かめました。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 9億7,034万円 | 10億6,012万円 |
| 販管費 | 8億1,130万円 | 9億52万円 |
| うち給料及び手当 | 2億1,161万円 | 2億8,571万円 |
| どの事業にも配っていない本社の費用 | 3億2,300万円 | 3億8,797万円 |
粗利は9,000万円近く増えました。ところが販管費も、取り消しで減ったあとの額でさえ、同じくらい増えています。目立つのは給料と手当で、3割以上の増加です。本社の費用も6,500万円ほど膨らみました。
給料がこれだけ増えた理由は、短信には書かれていません。今期から子会社が1社、新しく連結に入っているので、その人員が加わったのかもしれません。
もう一つ、戻しがどの事業に入ったかで見え方が変わります。会社は、戻しを金融の事業に計上したと書いています。その金融の事業の利益は、4億1,857万円から4億5,991万円へ増えました。増えた額は4,134万円です。戻した1億12万円より小さい増え方なので、戻しを除けば、この事業の利益は前年より減っていた計算です。
現金は営業で戻り、配当がそれを上回りました
10ページ目のキャッシュ・フロー計算書は、損益より明るい内容でした。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 4,005万円 | 1億9,807万円 |
| 配当金の支払額 | △2億6,179万円 | △2億6,116万円 |
| 現金及び現金同等物の増減 | △5億2,058万円 | △2億1,145万円 |
引当金の取り消しは現金を伴わないので、ここでは足し戻されず、逆に差し引かれています。つまり営業の現金の戻りは、取り消しで膨らんだものではありません。減価償却費の1億3,821万円が大きく、法人税の支払いが前年より4,000万円ほど少なかったことも効いています。
配当の支払いが営業の現金を上回り、手元の現金は半年で減りました。自己資本比率は72.4%あり、この減り方で困る会社ではありません。
注記に、桁の違う保証の数字があります
11ページ目の偶発債務の注記に、不動産取引の保証の上限額が6,791億3,287万円とあります。保険で埋まらない部分は1,698億3,999万円です。
これは決済の仕組みを使った過去3年の取引総額から出した上限で、実際に払う見込みの額ではありません。会社は、事故が起きた案件は過去に無いと書いています。引っかかったのは桁の大きさで、中身に心配な記述はありませんでした。
増収の理由は具体的、費用の理由は短信に無い
会社の説明は、増収の理由については具体的です。金融機関の住宅ローンの取扱いが好調で、各種サービスの利用件数が増えた。信託は契約件数が伸びた。不動産オークションは成約件数が前年を上回り、建築では敷地調査と設計サポートが伸びた。ただし建築は、測量機材などの原価が増えて減益になった、とあります。
この部分はそのまま受け取ります。事業ごとの売上の増減と説明が噛み合っているからです。
一方で、営業利益が前年並みにとどまった理由として挙がっているのは、建築の原価と引当金の戻しだけです。給料と本社の費用の増え方には、決算短信の中では触れていません。ここは保留にしておきます。
下期に、前年の3倍近い営業利益を見込んだまま
通期予想は4月3日に出したものから変えていません。
| 通期予想 | 中間期までの実績 | 残り半年に必要な額 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 62億1,100万円 | 26億500万円 | 36億600万円 |
| 営業利益 | 6億2,400万円 | 1億5,900万円 | 4億6,500万円 |
| 純利益 | 4億2,500万円 | 1億2,000万円 | 3億500万円 |
営業利益は、半年が過ぎて4分の1ほどの進み方です。残りの4億6,500万円は、前年の同じ半年の3倍近く、というのが私の割り算です。売上も、下期は前年より3割以上増やす計算になります。
なぜ下期にここまで伸びる前提なのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、補足資料に説明があるのかもしれませんが、私はまだ開いていません。予想を作った4月には期末の引当金はもう積んであったので、今回の戻しを予想に入れていたのかどうかも分かりません。
私はどう読んだか
受け取り方は2つあります。本業の稼ぐ力が細った半期と見るか、人を増やして下期に備えた半期と見るか。
私は前者だと考えています。理由は、費用が増えた説明が短信に無く、取り消しを除いた営業利益が前年の6割ほどにとどまっているからです。下期の伸びを支える材料も、短信の中には見つけられませんでした。
現金の流れは前年より良く、財務も厚い会社です。心配性なので、下期の決算では販管費の中の給料と、引当金の行を最初に確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

給料及び手当が3割以上増えた理由と、通期予想に引当金の戻しが含まれているかどうかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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