シチズン時計(7762)決算分析――営業利益は2倍になったのに、純利益は減っていた

8月14日に決算を発表したシチズン時計(7762)――営業利益は2倍になったのに、純利益は減っていた 決算を読む

はじめに

シチズン時計は、名前のとおり腕時計の会社です。電池交換のいらないソーラーや、時刻を電波で合わせる時計に強く、最近は機械式にも力を入れています。ただ、この会社の柱は時計だけではありません。金属を削って部品を作る工作機械を作っていて、これが半導体や医療機器の部品を作る工場で使われています。もうひとつ、自動車の部品や小型モーター、証明写真機などで見かけるフォトプリンターといった小物も作っています。腕時計を買ったことがない人でも、この会社の機械が削った部品には、どこかで触れているはずです。

腕時計の会社が工作機械を持っているのは、もともと時計の部品を自分で削るために機械を作っていた名残です。時計と機械、両方が同じ日の決算に並びます。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高98,12975,282+30.3%
営業利益9,9134,699+110.9%
経常利益11,7676,166+90.8%
純利益8,9219,186-2.9%

(単位:百万円)

売上が3割増えて、営業利益は2倍になりました。それなのに、いちばん下の純利益だけが減っています。この形を見たとき、引っかかりました。上3行と最終行が逆を向いている決算です。

最初の表では分からなかったこと

純利益が減った理由は、前年のほうにあった

9ページ目の損益計算書に答えがありました。前年の第1四半期には、投資有価証券売却益が5,680百万円入っていました。今期はゼロです。前年の純利益9,186百万円のかなりの部分が、持っていた株を売った利益だったことになります。今期は代わりに子会社清算益872百万円がありますが、桁がひとつ違います。

つまり本業は2倍になったのに、前年の一時的な利益が大きすぎて、最終行では追い越せなかった。減益の原因は今期ではなく前年のほうにありました。1ページ目の「純利益 -2.9%」だけを見ると、まったく逆の印象になります。

米国の関税で、まだ請求が来ている

損益計算書の特別損失に「過年度関税等 358百万円」という行があります。12ページ目の注記を読むと、米国の子会社が腕時計の輸入で、米国当局から関税の計算方法の相違を指摘され、2018年から2021年の期間について請求を受けている、とあります。会社は反論しましたが認められず、今回はその2021年の残り期間の分です。請求分はすでに全額納めていて、提訴するかどうかは検討中。そして会社自身がこう書いています——2022年以降の期間については現時点で指摘は受けていないが、今後追加の関税等が発生し、損失が生じる可能性がある。

金額として358百万円は今期の利益に対して大きくありません。ただ、終わった話ではない、と会社が自分で書いている点は覚えておきます。

仕掛品が増えている。ただし現金の出方は今回確かめられない

7ページ目の貸借対照表で、仕掛品が28,559から33,534へ、3ヶ月で約50億円増えています。売上が3割伸びている局面なので、作りかけの在庫が増えるのは自然な側面もあります。工作機械は受注から出荷まで時間のかかる商売です。

……ただ、確かめる手段が今回はない。第1四半期はキャッシュ・フロー計算書を作成していないと注記にあります。四半期短信ではよくあることですが、私が普段見に行く10ページ目が、この短信には無いということです。売上とともに現金も入ってきているのかは、次の中間決算まで持ち越しです。

3本の柱が全部増益だった

11ページ目のセグメント情報です。表に入れるのは会社が印字した数字だけです。

セグメント売上高セグメント利益
時計事業54,8477,138
工作機械事業25,6503,214
デバイス事業17,6311,348

(当第1四半期・外部顧客への売上高・単位:百万円)

前年はそれぞれ利益が4,404、1,512、401でした。どれか一本が引っ張ったのではなく、3本とも増えています。工作機械は中国の半導体関連が大きく伸びたと会社が書いており、デバイスはフォトプリンターやセラミックスが伸びています。

会社はどう説明しているか

時計は北米が好調で、百貨店に加えてトラベル流通、つまり空港などでの販売と、自社ECが伸びたと書いています。工作機械は半導体関連の旺盛な需要。そのうえで会社は同じ日に、通期予想を売上362,000から395,000へ、営業利益34,500から40,500へ引き上げ、配当予想も47円から53円へ増やしました。想定為替も1USD150円から155円へ変えています。

好調の説明としては筋が通っていると受け取ります。ただし上方修正の一部は為替の置き直しによるものだと会社自身が書いているので、全部が販売の力ではありません。そこは分けて読みます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

項目通期予想進捗率
売上高395,00024.8%
営業利益40,50024.5%
純利益32,00027.9%

(単位:百万円)

引き上げた後の予想に対して、ちょうど4分の1のところにいます。目安どおりです。ただこれは修正後の数字に対する進捗なので、きれいに4分の1になるのはある意味当然で、むしろ「上振れた分だけ通期も上げた」という素直な修正だと読めます。残り9ヶ月の営業利益は2割ほどの増益が続く置き方で、第1四半期の勢いより控えめです。

私はどう読んだか

私は良いほうに寄せて読んでいます。理由は、純利益の減益が前年の売却益5,680百万円の反動であって、本業の数字は3事業とも上を向いているからです。上方修正も第1四半期の実績を通期に反映しただけの、無理のない形に見えます。

留保は2つ。キャッシュ・フロー計算書が無いので、仕掛品の増加が健全な増産なのかは中間決算まで判定できないこと。そして米国の関税は、会社が「追加の可能性がある」と自分で書いている以上、金額が読めないことです。私の読み違いかもしれませんが、この2つを見ないで良い決算とだけ言うのは早いと思います。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.citizen.co.jp/cms/cwc/files/FY26_1Q.pdf

米国関税の追加請求が、あるとすればいくらになりうるのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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