HOYA(7741)2027年3月期 第1四半期決算分析――伸びに混じった還付の額が気になる

HOYA(7741)2027年3月期 第1四半期決算分析――伸びに混じった還付の額が気になる 決算を読む

眼鏡のレンズと、半導体の原版の土台を作る会社

HOYAは、ひとつの会社の中に、性格のまったく違う商売を2つ抱えています。

1つは、人の目と体に使うものです。眼鏡のレンズ、コンタクトレンズ、内視鏡、白内障の手術で目に入れるレンズがここに入ります。買うのは眼鏡店や病院で、使うのは街の普通の人です。子どもの近視が進むのを抑える眼鏡レンズも、この事業の商品です。

もう1つは、私たちが直接手に取ることのないものです。半導体の回路を焼き付けるときに使う原版の、そのまた土台になるガラス板。それから、データセンターのハードディスクに入っているガラスの円盤です。買い手は半導体の工場とディスクのメーカーです。写真をクラウドに預けるたびに、どこかでこの会社の部材が回っている、という距離の商売です。

売上は16%増、営業利益は3割増の四半期

7月31日に出た、4月から6月の決算です。

今回前年同期増減率
売上高2,557億4,200万円2,204億600万円+16.0%
営業利益826億2,600万円635億5,900万円+30.0%
経常利益———
純利益657億9,100万円518億4,000万円+26.9%

国際会計基準の会社なので、経常利益の欄はありません。売上より利益のほうがずっと大きく伸びた、というのが表紙から分かることです。

3割増益の一部は、前の年の減損の裏返しでした

表紙の下のほうに、「通常の営業活動からの利益」という会社独自の物差しが載っています。営業利益から、為替の損益や減損のような一度きりのものを外した数字です。こちらは823億6,700万円で、前年同期から24.4%の増加でした。

3割と2割4分の差の大半は、前年同期の営業費用に入っていた減損損失19億1,000万円です。前の年の利益がそのぶん低く出ていたので、今年の伸びが大きく見えています。

この四半期から、新しい会計基準(IFRS第18号)を前倒しで使い始めたことも添えておきます。営業利益の中身が組み替わったので、前の年の短信の営業利益とは、そのまま並べられません。

利益の3分の2を、売上4割の事業が稼いでいます

セグメントの表まで行くと、儲けの偏りがはっきりします。

事業売上前年比事業の利益前年比
ライフケア1,547億8,800万円+12.8%299億8,400万円+23.6%
情報・通信1,009億5,400万円+22.7%556億1,500万円+27.8%

出典は短信のセグメント情報(添付資料20ページ)。事業の利益は「通常の営業活動からの利益」です。

情報・通信は売上の4割ほどですが、2つの事業の利益の合計855億9,900万円のうち、556億1,500万円を稼いでいます。3分の2近くです。これは私の割り算です。1,009億5,400万円の売上に対して利益が556億1,500万円ですから、売った額の半分以上が利益として残る事業で、それがいちばん速く伸びました。全体の利益の伸びが売上の伸びを大きく超えたのは、この組み合わせのためです。

短信の説明文には「関税」が出てきません

ここで引っかかりました。

会社は決算説明会の書き起こしを公開しています。そこでCFOが、ライフケアにも情報・通信にも「米国関税の還付」という一度きりの上乗せが入っている、と話しています。還付を除いた利益率は、ライフケアで「19%を若干下回る水準」、情報・通信で「54%台」だそうです。説明会の書き起こしにある数字です。

ところが短信を最後まで追っても、「関税」という言葉は一度も出てきません。添付資料2〜3ページの事業ごとの説明は、需要の増加と、値の張る製品の比率で増益を説明しています。還付の金額そのものは、短信にも説明会の書き起こしにも書かれていませんでした。

もう一つ気になったのは、還付がどの欄に入っているかです。会社はさっきの物差しを「非経常的な要因を含まない基礎的な収益力を評価する指標」と説明しています(添付資料18ページ)。一方で、ライフケアの「その他の非経常的損益」は100万円しかありません。還付がこちらに入っていれば、もっと大きな額になるはずです。還付は、一度きりのものを外したはずの物差しの内側に入っている、と私は受け取りました。……外すための物差しなのに、中に入っている。

伸びの中には、為替の分も入っています。説明会の書き起こしでは、為替の影響を除いた売上の伸びは7%でした。短信の中でも、内視鏡は「円安の進行により増収」で「現地通貨ベースでは減収」と書かれています。

現金が減ったのは、株主へ払ったからでした

前年の4〜6月今年の4〜6月
営業活動によるキャッシュ・フロー572億2,700万円700億円
投資活動によるキャッシュ・フロー△117億3,800万円△71億600万円
財務活動によるキャッシュ・フロー△389億5,700万円△882億4,100万円
うち配当金の支払い△393億2,500万円△569億1,200万円
うち自己株式の取得△100万円△280億5,200万円

出典は短信のキャッシュ・フロー計算書(添付資料13〜14ページ)。

法人税の支払いが337億6,800万円に増えても、営業キャッシュ・フローは前年より増えました。利益に現金の裏付けがあります。

配当は569億1,200万円、自社株買いは280億5,200万円でした。2つを足すと、849億6,400万円です。営業で入った700億円より多く払ったことになります。そのため手元の現金は、期首の5,740億9,200万円から5,554億9,400万円に減りました。

後発事象の欄には、上限2,000億円の自社株買いが載っています。期間は8月3日から2027年3月24日までで、買った株は消却する予定です。手元の現金5,554億9,400万円に対して、3分の1ほどの大きさです。

会社は需要と品ぞろえで説明しています

短信の説明文では、マスクブランクスは「EUV向け先端品の開発活動等」で需要が増え、値の張る品の比率も伸びたとしています。ハードディスク用のガラスは、データセンターの記憶装置の需要増です。この説明は、情報・通信の利益が売上より速く伸びた数字と合っていて、私はそのまま受け取ります。留保は、関税の還付に触れていない一点だけです。

会社の心配も短信に書いてあります。情報・通信の製品の多くは中間の部材なので、最後の製品の景気で伸びが左右されます。海外の売上が大きく為替の影響も受けるので、長い期間の予想は難しい、とあります(添付資料5ページ)。利益の3分の2を稼ぐ事業について、会社自身がそう書いています。

説明会では、内視鏡事業の譲渡を含めた検討を始めたことも話されています。短信の後発事象の欄にある項目は、自社株買いの1件です。同じ日に出た適時開示は、この記事では読んでいません。

通期の予想は、第3四半期まで出てきません

この会社は、第1四半期のときに上期の予想だけを出し、通期の予想は第3四半期の発表のときに出します。通期の数字は、短信の予想の欄が空いたままです。

上期の予想から4〜6月を引くと、7〜9月の見込みが分かります。

4〜6月7〜9月上期累計
売上 前年2,204億600万円約2,344億9,300万円4,548億9,900万円
売上 今年2,557億4,200万円約2,652億5,800万円5,210億円(予想)
営業利益 前年635億5,900万円約681億8,500万円1,317億4,400万円
営業利益 今年826億2,600万円約823億7,400万円1,650億円(予想)

約の付いた7〜9月の数字は、上期累計から4〜6月を引いた私の引き算です。

7〜9月の売上は4〜6月より95億円ほど多く見込んでいるのに、営業利益はほぼ同じです。説明会では、上期の予想に還付の反動を織り込んだと話しています。前年の同じ3か月と比べれば、それでも2割増の見込みです。

私はどう読んだか

私は、還付と円安を差し引いても、情報・通信の伸びは本物だという見方をしています。理由は、説明会の話では還付を除いても利益率が1ポイントほどしか下がらず、営業キャッシュ・フローも増えているからです。

心配なのは、利益の3分の2が、半導体とデータセンター向けの部材に乗っていることです。減価償却費は160億800万円で、前年から3割近く増えました。説明会では、本格的に増えるのは来年度以降だと話しています。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260730504068.pdf

関税の還付がいくらだったのかは、短信からも説明会の書き起こしからも読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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