不二越(6474)2026年11月期 第3四半期決算分析――残り3か月の経常利益が腑に落ちない

不二越(6474)2026年11月期 第3四半期決算分析――残り3か月の経常利益が腑に落ちない 決算を読む

はじめに

不二越は、金属を削る工具、回転する軸を支えるベアリング、工場で溶接や組み立てをこなす産業用ロボットを作っている会社です。ショベルカーの腕を動かす油圧機器や工作機械も手がけ、刃物や部品の材料になる特殊鋼まで自社で持っています。

買い手は主に工場です。自動車や建設機械のメーカーがロボットで人手を減らし、工具で部品を削り、油圧機器を重機に組み込みます。完成品として私たちの目に触れることはほとんどありません。それでも、ものづくりの現場のすぐ手前にいつもいる会社です。

こうした設備や部品の注文は、景気の変わり目に早めに増えたり減ったりします。工場が先の仕事を見込んで動くからです。

9か月で、利益が売上よりずっと速く伸びました

2026年10月5日に出た第3四半期決算です。対象は2025年12月から2026年8月までの9か月です。

今回前年同期増減率
売上高1,923億2,600万円1,741億9,400万円+10.4%
営業利益114億5,700万円66億2,800万円+72.8%
経常利益108億7,300万円51億4,100万円+111.5%
純利益66億2,900万円36億4,000万円+82.1%

売上は1割増えました。営業利益は7割増、経常利益は2倍を超えています。通期予想は、7月14日に出した数字のまま変えていません。

利益を押し上げたのは、売上原価の改善でした

損益計算書まで進むと、増益の出どころが分かります。売上総利益は、前年同期の382億6,800万円から466億200万円へ増えました。それぞれを売上高で割ると、100円売って手元に残る粗利が出ます。前年は約22円で、今回は約24円になっています。

販売費及び一般管理費も増えていますが、粗利の伸びのほうが大きく上回りました。営業の段階で利益が増えているので、一時的な収入で作った増益ではありません。

事業ごとに見ても、偏りはありませんでした。

セグメント利益今回前年同期
機械工具38億1,000万円24億9,800万円
部品59億5,000万円37億円
その他(特殊鋼など)16億3,700万円4億300万円

3つの事業がそろって増益です。いちばん大きい部品事業は、ベアリングと油圧機器を抱える柱で、6割増えています。

前年の純利益には、株を売った利益が入っていました

特別利益の欄で引っかかりました。前年同期には投資有価証券売却益が19億3,300万円あり、今回は4,600万円しかありません。前年の純利益は、持っていた株を売った利益に支えられていたことになります。

その下駄が外れたうえで、純利益は8割増えています。表に出た増益率以上に、中身は良くなっていると受け取りました。

特別損失には構造改革費用8億9,600万円があります。注記によると、いちばん大きいのは棚卸資産の評価損4億300万円で、特別退職金等は1億4,500万円です。これとは別に、部品事業で減損損失3億3,100万円を計上しています。

支払いの約束が減り、短い借入れが増えています

貸借対照表では、負債の顔ぶれが入れ替わっていました。

前期末今回
電子記録債務168億9,100万円72億5,800万円
短期借入金57億1,200万円169億5,200万円
コマーシャル・ペーパー100億円150億円
現金及び預金322億400万円390億600万円

電子記録債務は、手形の代わりに電子で記録する仕入先への支払いの約束です。これが96億3,200万円減り、ほぼ同じ時期に短期の借入れと、短期で資金を集めるコマーシャル・ペーパーが増えています。……仕入先への支払いを、借りたお金で済ませたのか。

確かめようとしましたが、この短信にはキャッシュ・フロー計算書がありません。注記に「作成しておりません」とあり、載っているのは減価償却費133億4,500万円だけです。

自己資本比率は52.1%で、前期末から少し上がりました。財務が傷んでいる形ではありません。ただ、本業でどれだけ現金が入ったのかは、この短信からは追えませんでした。

会社はどう説明しているか

会社の説明は短信の4ページ目にあります。売上は、欧米と中国の建設機械向け、アセアンの市販向け、米州の産業機械向けで需要が戻ったとしています。利益については、構造改革による固定費の削減、原材料価格の上昇分を販売価格に転嫁したこと、生産ラインの自動化、調達コストの引き下げを挙げています。

粗利率が上がり、3事業すべてで利益が増えているので、この説明はそのまま受け取ります。ただ、それぞれの要因が何億円ずつ効いたのかは、短信には書かれていません。

会社自身は、中東情勢、米国の通商政策、物価上昇、中国経済の低迷を先行きの不安として挙げています。

残り3か月、経常利益だけが細る置き方です

通期予想から9か月の実績を引くと、最後の3か月の姿が見えます。

9か月の実績通期予想残り3か月前年の同じ3か月比
売上高1,923億2,600万円2,550億円626億7,400万円+1.6%
営業利益114億5,700万円153億円38億4,300万円+22.4%
経常利益108億7,300万円133億円24億2,700万円−24.8%
純利益66億2,900万円75億円8億7,100万円−46.0%

残り3か月と前年比の列は、通期予想から実績を引いて私が出した数字です。

営業利益は前年より2割増やす予想なのに、経常利益は4分の1減ります。営業利益から経常利益を引いてみます。9か月では、114億5,700万円から108億7,300万円を引きます。差は5億8,400万円です。残り3か月では、38億4,300万円から24億2,700万円を引きます。差は14億1,600万円になります。3か月で、9か月分の2倍を超える営業外の負担を見込んでいることになります。

直前の3か月とも比べてみました。7月14日に出た中間決算の累計は、営業利益67億6,900万円、経常利益61億3,000万円でした。今回の累計から引くと、6月から8月の3か月は営業利益46億8,800万円、経常利益47億4,300万円です。経常利益のほうが営業利益より大きかった3か月のすぐあとに、14億円の差が開く予想になっています。……ここは変だ。

なぜそうなるのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに理由があるのかもしれませんが、私はまだ開いていません。

私はどう読んだか

残り3か月の予想は、7月の数字を据え置いただけのものだと私は考えています。理由は、9か月の増益が売上原価の改善から生まれていて、固定費の削減や価格転嫁は3か月で消える種類のものではないからです。前年の株の売却益が抜けても純利益が8割伸びたことも、その裏付けになります。

それでも、会社は経常利益だけを細らせる予想を残しました。為替や金利の何かを見込んでいるのか、別の費用があるのか。心配性なので、借入れの入れ替わりと合わせて頭の片隅に置いておきます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/dcms_media/other/20261005_jp1.pdf

最後の3か月に、営業外で14億円の差を見込んだ理由は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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