はじめに
Ubicomホールディングスは、二つの顔を持つ会社です。ひとつは、フィリピンに開発拠点を置いてシステム開発を請け負う顔。もうひとつは、病院やクリニックに向けた医療ソフトの顔です。
医療のほうの主力は「Mighty」というシリーズで、レセプト――医療機関が保険者に出す診療報酬の請求書――の点検を助けるソフトです。請求のミスは病院の収入に直結するので、経営が苦しい医療機関ほど、こういう道具にお金を払います。派手なソフトではありませんが、一度入れたらやめにくい種類のものです。
開発のほうは今、会社が自分で「人月モデルからの脱却」と言っています。エンジニアを何人、何ヶ月貼り付けたかで請求する昔ながらのやり方を、AIを使った開発に置き換えようとしている。今回のQ1は、その言葉が数字になって出てきたかを見る決算でした。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,744 | 1,484 | +17.5% |
| 営業利益 | 410 | 313 | +30.9% |
| 経常利益 | 395 | 316 | +25.0% |
| 純利益 | 263 | 271 | -2.9% |
(単位:百万円)
売上は2割近く増えて、営業利益は3割増。ここまでは文句のない形です。ただ、純利益だけがわずかに減っています。上の3行と最後の1行が逆を向いている。ここが最初に引っかかりました。
最初の表では分からなかったこと
純利益のマイナスは、税金の話だった
損益計算書を見ると、税金等調整前の四半期純利益は前年同期の316百万円に対して今期409百万円と、ちゃんと増えています。減ったのはその下です。法人税等が前年同期の44百万円から145百万円に増えていました。
12ページの注記によれば、この会社の四半期の税金費用は、年間の見積実効税率を四半期の利益に掛けて計算しています。会社も説明文の中で「税効果の一時的な影響」であり「事業活動における収益性の低下や損失の発生によるものではない」と、わざわざ書いています。前年同期の税負担が軽すぎたようにも見えますが、その理由までは短信からは読み取れません。いずれにせよ、本業の段階では減っていない。1ページ目の「純利益-2.9%」だけを見て閉じると、ここを取り違えます。
人を80名減らして、利益は6割近く増えた
セグメントの表が、この決算のいちばん面白いところでした。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| テクノロジーコンサルティング | 1,090百万円 | +5.2% | 183百万円 | +57.0% |
| メディカル | 653百万円 | +45.8% | 319百万円 | +7.2% |
(13ページのセグメント情報から。外部顧客への売上高)
開発事業は、売上がほとんど伸びていないのに、利益が6割近く増えています。会社の説明文には「前期比でエンジニア数を約80名削減しながらも、収益性の向上を実現」とあります。人月で稼ぐ会社は、人を減らせば売上も減るのが普通です。売上を保ったまま人を減らして利益が増えたなら、それは請け方が変わり始めているということになります。……いや、1四半期でここまで動くのか。ちょっと疑って見たくなる数字ではあります。
買った売上には、まだ利益が付いてきていない
一方のメディカルは逆向きです。売上は5割近く増えたのに、利益は1割も増えていません。
理由は14ページの注記にありました。この4月に、ラジエンスウエアという会社を649百万円で全株取得しています。クリニックや小規模病院にレセコンや電子カルテを入れて保守する会社です。この会社がQ1に持ち込んだのは、売上160百万円と四半期純利益13百万円。売上のかさは増えましたが、利益率は薄い。会社自身も「代理店ビジネスの特性上、当社メディカル事業と比較して利益率が低水準」と認めたうえで、足元の利益率低下を書いています。
のれんは297百万円で、取得原価の配分が終わっていない暫定の数字です。取得関連費用も75百万円かかっています。買収は「2030年までに累計8〜10社」と言っているので、この利益率の薄まりは今回で終わりではなく、これから何度も見ることになります。
キャッシュ・フロー計算書が、無い
私はいつもキャッシュ・フロー計算書まで読みに行くのですが、この短信には作成されていません。13ページの注記に「作成しておりません」と明記されています。四半期の短信では省略できるので、違反でも何でもありません。ただ、貸借対照表を見ると、現金及び預金は5,166百万円から4,675百万円へ減り、長期借入金256百万円と社債10百万円が新たに立っています。配当の支払484百万円と買収の対価649百万円が出ていったのだから当然の動きですが、営業活動でいくら現金が入ったのかは、この短信では確かめようがありませんでした。
もうひとつ。1ページ目の配当の欄は、今期の予想がすべて空欄です。前期は期末40円でした。修正の有無は「無」となっているので方針を変えたわけではなさそうですが、欄としては埋まっていません。
会社はどう説明しているか
会社の説明は一貫しています。両セグメントとも第1四半期として過去最高、純利益の減少は税効果の一時的な影響、メディカルの利益率低下は買収した会社の事業特性によるもので、PMIは今期中に完了し、シナジーで改善していく――という筋です。
税金の説明は、損益計算書の数字と合っているので、そのまま受け取っていいと思います。メディカルのほうは、説明としては筋が通っていますが、「シナジーで利益率を上げる」はまだ言葉の段階で、数字はこれからです。ここは留保をつけて持っておきます。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は5月に出したものから変更なしです。
| 項目 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,383百万円 | 23.6% |
| 営業利益 | 1,511百万円 | 27.1% |
| 経常利益 | 1,520百万円 | 26.0% |
| 純利益 | 1,056百万円 | 24.9% |
Q1終了時点の目安は4分の1なので、利益はどれも目安並みか少し上、売上だけ少し足りません。ただ売上の通期予想は前期比+23.2%と強気の置き方で、残り9ヶ月は前年より25.1%増のペースが要ります。買収した会社の売上が通年で乗ることを考えれば無理筋ではありませんが、既存事業だけで届く数字でもなさそうです。
私はどう読んだか
私は、この決算を良いほうに寄せて読んでいます。理由は、開発事業の利益の増え方が、人を減らしたうえで出てきたものだからです。人月商売の会社が「AIで変わります」と言うのは簡単ですが、エンジニア80名減と利益6割近い増加が同じ四半期に並ぶのは、言葉だけでは作れません。
ただし、メディカルの買収路線は別勘定で見ています。売上を買うのは早いが、利益が付いてくるかはPMI次第で、それはまだ数字になっていない。あと8社買うと言っている以上、次の四半期からは「買った分の利益率」を毎回見に行くことになります。開発事業の+57.0%も、1四半期だけの数字です。次のQ2で続いていなかったら、私の読み違いかもしれません。
出典:決算短信(会社発表)
キャッシュ・フロー計算書が作成されておらず、営業活動でいくら現金が入ったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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