岡山に本社を置く建設会社です。柱は建築と土木の2本です。建築は工場や倉庫といった民間の建物を、土木は道路や河川、防災の工事といった官公庁の仕事を主に請け負っています。地方に根を張ったまま、全国の現場に出ている中堅です。
建設業の決算は読みにくい種類のものです。工事は年をまたぎ、売上は進み具合に応じて立ちます。だから四半期の数字は、その3か月に何を売ったかより、前の期までに何を受注していたかで決まります。今回の短信も、3か月の業績より、いちばん後ろの受注の欄に引っかかりました。
この決算で何が起きたか
2026年8月5日に出た第1四半期の短信です。連結ではなく、単体の決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 254億1,600万円 | 166億4,300万円 | +52.7% |
| 営業利益 | 13億400万円 | 2億4,900万円 | +423.1% |
| 経常利益 | 14億8,200万円 | 4億600万円 | +264.9% |
| 純利益 | 9億8,200万円 | 2億5,800万円 | +279.7% |
増収率より増益率がはるかに大きく、この表だけでは何が起きたのか分かりません。
売上が88億円増えて、販管費は3,200万円しか増えていない
損益計算書(短信の6ページ目)を上から追うと、理由は単純でした。
| 項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 完成工事高 | 166億4,300万円 | 254億1,600万円 |
| 完成工事原価 | 148億3,500万円 | 225億2,000万円 |
| 完成工事総利益 | 18億800万円 | 28億9,600万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 15億5,900万円 | 15億9,100万円 |
| 営業利益 | 2億4,900万円 | 13億400万円 |
粗利は10億8,800万円増え、販管費は3,200万円しか増えていません。粗利の増分が、ほぼ丸ごと営業利益に落ちた形です。
粗利率も少し上がっています。完成工事総利益を完成工事高で割った数字です。
| 完成工事総利益 | 完成工事高 | 粗利率 | |
|---|---|---|---|
| 前年同期 | 18億800万円 | 166億4,300万円 | 約10.9% |
| 今回 | 28億9,600万円 | 254億1,600万円 | 約11.4% |
粗利率は損益計算書の数字から私が割ったものです。売った量が増えたうえに、工事1件あたりの儲けも厚くなっています。
稼いだのは土木のほうです
| 前年同期 | 今回 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 建築 売上高 | 79億5,600万円 | 132億4,400万円 | +66.5% |
| 建築 セグメント利益 | 9億7,500万円 | 13億1,200万円 | +34.6% |
| 建築 利益率 | 約12.3% | 約9.9% | |
| 土木 売上高 | 86億8,600万円 | 121億7,200万円 | +40.1% |
| 土木 セグメント利益 | 5億7,800万円 | 12億5,700万円 | +117.4% |
| 土木 利益率 | 約6.7% | 約10.3% |
約の付いた利益率は、セグメント利益をセグメント売上高で私が割ったものです。
建築は売上ほど利益が伸びず、利益率は下がりました。土木は利益が2倍以上になり、利益率も上がっています。
土木の内訳を見ると、官公庁向けの売上が59億900万円から90億7,400万円へ増えています。会社の説明文には「国土強靱化に向けた防災・減災対策やインフラ整備関連事業を中心に公共投資が底堅く推移」とあります。
利益率については「完成工事利益率が高い水準で推移した」と一言だけです。どの工事で、なぜ高かったのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」とあるので、読める書類は今のところこれ1冊です。
3か月で通期受注予想の4割を超えているのに、予想が動いていない
ここがいちばん引っかかった場所です。短信の最後、9ページ目に受注実績の表があります。
| 受注高 | 前年同期 | 今回 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 建築 民間 | 55億9,400万円 | 229億600万円 | +309.4% |
| 建築 官公庁 | 3億9,700万円 | 2億2,900万円 | △42.4% |
| 土木 民間 | 16億9,300万円 | 59億4,300万円 | +251.0% |
| 土木 官公庁 | 75億4,300万円 | 108億3,900万円 | +43.7% |
| 合計 | 152億2,900万円 | 399億1,800万円 | +162.1% |
建築の民間が3か月で229億円ですから、大きな案件がまとまって入ったのだと考えています。
ところが同じページの通期受注予想は950億円です。前の期の実績1,147億3,400万円から17.2%減る置き方です。第1四半期の受注を通期予想で割ると42%になります。399億1,800万円を950億円で割った数字です。第1四半期だけで通期予想の4割を超えています。残り9か月分の受注予想は、950億円から399億1,800万円を引いた額です。550億8,200万円になります。
前年の同じ9か月は、1,147億3,400万円から152億2,900万円を引いた額です。995億500万円でした。今年はその半分と少しです。
……いや、これは変だ。この予想は5月13日に出たものです。第1四半期の受注を全部見たうえでも、会社は動かしていません。第1四半期に大型案件が集中し、残りはその反動で少ない、と見込んでいるのかもしれません。据え置いた理由は、短信の説明文には出てきません。
借入を返して、現金が増えている
第1四半期なので、キャッシュ・フロー計算書は載っていません。代わりに貸借対照表(4ページ目と5ページ目)で現金の動きを追いました。
電子記録債権・完成工事未収入金等が635億8,600万円から567億7,200万円へ減っています。減った額は68億1,400万円です。前の期末に売上として立てた工事の代金が、この3か月で入ってきた形です。その金で短期借入金65億円を全額返しました。それでも現金預金は68億8,800万円から81億9,400万円へ増えました。財務の面で気になるところはありませんでした。
会社はどう説明しているか
建築は「手持工事の施工消化は順調に進んでおり」、土木は「期首手持工事の施工状況等から売上高は前年同期比で増加」です。どちらも、前の期までに受注した工事が予定どおり進んだ、という説明です。これはそのまま受け取っています。理由は、増えた利益が一時的な収入ではなく、完成工事高と完成工事原価の差から出ているからです。
そのまま受け取れないのは土木の利益率です。「高い水準で推移した」は結果の説明であって、続くかどうかの説明ではありません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は5月13日の数字を据え置いています。
| 項目 | 通期予想 | 第1四半期 | 進捗率 | 残り9か月に必要な額 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 980億円 | 254億1,600万円 | 約25.9% | 725億8,400万円 |
| 営業利益 | 42億円 | 13億400万円 | 約31.0% | 28億9,600万円 |
| 経常利益 | 42億円 | 14億8,200万円 | 約35.3% | 27億1,800万円 |
| 純利益 | 27億円 | 9億8,200万円 | 約36.4% | 17億1,800万円 |
進捗率と残りの額は、表紙の通期予想と第1四半期の数字から私が出したものです。
残り9か月に必要な営業利益は28億9,600万円で、前年の同じ9か月より37.1%多い額です。届かない額ではありませんが、第1四半期ほどの利益率が続くことが前提になります。配当は74円の予想で、前の期の50円から増やす置き方です。
私はどう読んだか
この決算そのものは、良い決算だと考えています。理由は、増えた利益が本業の粗利から出ていて、販管費が膨らんでいないからです。
ただ、心配性なので、先に気になるのは受注予想のほうです。第1四半期で通期の4割を取って、それでも通期は2割近い減少のまま動かさない。会社側は残り9か月を弱く見込んでいるはずで、その理由が私には分かりません。土木の利益率がこの先も「高い水準」で続くのかは、短信には書かれていません。上がるかは知りません。頭の片隅に置いておきます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260805/140120260805509303.pdf
受注予想を据え置いた理由と、土木の完成工事利益率の具体的な水準は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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